準備と合流
その夜、グスタフとオルガ他数名のギルド員は、オルガ達が遭遇した化物について情報をまとめていた。
「ふーぬ、ウルフのような姿をした触手の化物ねえ。」
グスタフはため息と共に手に持っていた羊皮紙を投げた。オルガから聞いた魔物の特徴をまとめた物がそこには書かれているのだが、読めば読むほど謎が深まる。
そもそも、何がメインの生き物かがわからないのだ。ウルフの形をしてるらしいが、これまでの知識にもそんな生き物は聞いた事がなく、なにかしら変異した特殊な魔物だとしても、触手とウルフを結びつける物が無い。
「奇襲を行うということはそこそこの知能はあるのだろうが。不可解な部分がいくつかある。なんで3人で逃げて追いつかれた時に3人殺さずにカインだけ殺して戻ったんだ?。」
「わからない、でもそのおかげで俺は戻ってこれたんだ。化物の考えることなんかわかりゃあしねえよ」
思い出すだけでオルガは震え上がり、身を縮こませる。震えながら彼は・・・泣いた。
「みんな・・・みんな死んじまった・・・。あいつらはよお、荷物持ちの俺を認めてくれるような、器のでかい奴らだったんだ。他の奴らは戦えない俺を蔑みもすれば、からかってくる奴もいた。女を前に出して自分だけは後ろで怯えてる玉無しなんてよく言われたもんだ・・・。
なんで俺だけ生き残ってるんだよ・・・。ちくしょう・・・。ちくしょう!。」
「落ち着け、今は感傷に浸っている暇は無いだろ。奴らがなんの為に囮になったか思い出せ。お前はよくここまで戻ってきた。仇は必ずとれる筈さ。」
肩を数度叩き、今は1人でそっとしておこうと、グスタフは席を立つ。周囲のハンターも憐れみの目を向けながら静かにその部屋から退出した。
「・・うっ・・・・・うぅっ・・・。」
静寂が周囲を包む、オルガの嗚咽だけが響く。
「おい!おい!オルガ!」
扉が強く開かれた。先ほど退出したばかりだというのにグスタフが慌てた様子で部屋の中に飛び込んできた。
「オルガ!泣いてる場合じゃねえ!2人が!アベルとミレアが戻ってきたぞ!。」
「えっ?」
驚愕に目を見開き、オルガは唖然と口を空けた。
(助かった?あいつから?どうやって?それより何故2人一緒に?)
そんな疑問が頭をよぎるが、気づけば体が勝手に動き出し、彼は部屋から飛び出した。
「「オルガ!」」
2人がいたのはギルドの入口である。所々服が破け、擦り傷だらけの2人だが、別段目立った負傷を負っているようには見えなかった。
オルガを見るなり喜色を満面に広げ、走り寄ってくる。
「2人とも!無事だったんだな!」
「オルガこそ!よくギルドに報告してくれたな!」
「何いってるの!私はオルガなら絶対やってくれると思ってたよ!」
オルガは1人でなくなった事に安堵した。と同時に疑問が沸き上がる。
「でも、2人ともどうやって助かったんだ?」
「それが聞いてくれよ、あの化物の弱点が分かったんだ。」
「そっ!私の[風]魔法のお陰でね!」
鼻高々にミレアが自慢する。喜びあう3人の間にグスタフが割って入ってきた。
「待った、ここで話すのもなんだ、奥で詳しく聞こうか。」