人間との邂逅3
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只今鬼ごっこの真っ只中。
ポチがアーチャーの首を胴体からシュートした後、次はタンク役を追い始めた。
どうやら俺のお願いを聞いて、2人は見逃したようなのだが、いや、ちょっと本当にこれは大失敗。
ポーターは戦力外でキャスターは魔法を見たいから置いといただけで、情報を持ち帰られるのは非常に困る。
訂正しようにも、興奮してるのか、なかなか指示が通り難い。
(まぁ、いざとなったら逃げれば良いか。)
気をとりなおして、タンクの方に意識を向ける。
今後の為にも、是非とも人間との戦闘経験が欲しいところなので、追い詰めて猫を噛む鼠になって貰わねばならない。
途中、寄生済みの鼠を誘導し、仕留めた2人の頭に向かわせておく。
転んでもただで済ますつもりはさらさらない。
先程の力量差から、奴らにポチを倒すどころか傷さえ付けるのは難しいと判断して、最後の1人は殺さないように、前もってお願いしておく。
追い込みは順調に行っているようで、このまま行けば行き止まりとなっている筈だ。
鼠を使ってある程度の周辺は把握済みである。
袋小路に追い込むのに、時間はそうかからなかった。
恐慌状態だからか、判断能力が鈍っているのであろう。
だが
追い詰められたというのに、タンクの顔は絶望に塗れてなどいなかった。決死の覚悟という奴か。
「€@jgdm?」
奴は1人言か、はたまたポチに話し掛けているのか、短い単語をポツリと零した。
(ここの言語覚えないとなぁ。)
情報を得る手段はあるのだが、これでは宝の持ち腐れだと、暢気に考えてしまう。
「☆2々jgdm!」
剣を突くような形で水平に構えると、タンクは吶喊を仕掛けて来た。
戦うのはポチだ、事前に手加減を伝えているし。俺はサポートと観察に集中する。
タンクは勢いそのまま突きを放つが、ポチは危なげなく敵の右横に避ける。
見た感じ彼は右利きだ、ポチもそう思って避けたに違いない。しかし、それはブラフだった。薄く彼が笑うのが見える。突き入れ前、半歩分、左足を前に踏み出すと、左手から強烈な切り払いをしてきた。
予想外だったが、ポチはその程度では慌てない。
素早く地面に伏せ、剣尖の芯からずれつつ、触手でいなす。
思い切り振った渾身の一撃だったのか、彼は体を半回転させ、ステップを踏んでポチから距離を取ろうとしたが。ポチは好機とみて、横腹の隠し触手で、脚を打った。きちんと手加減はしたみたいだが、脛は痛いだろう。
それでも彼は、歯を食い縛り顔をしかめながらも、距離を取ることに成功した。
(ここら辺の弱点も向こうと同じだな)
まぁほぼ変わりが無い姿形をしてる時点で、構造がそう変わるとも思えないが。
そして、そこからの戦いは、やはりというかポチの優勢で進んだ。彼の攻撃を1つ避ける度に、関節部に1発触手を打ち据える。
彼が体力と気力を無くし、膝をついたのは、戦闘開始から20分後の事だった。
大健闘だと思う。自分だったら、2分保たない自信がある。