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突然の告白

この話は時系列的にプロローグの少し前のお話になります。


10/29 読みやすいように加筆修正しました。

 桜はとうの昔に散り、日に日に夏の暑さが近づいてくる6月の中旬、俺は親友の圭と一緒に教室で昼飯を食べていた。


「あーあ、どっかに甲斐甲斐しく俺のこと世話してくれる彼女、いねーのかよ?」


「いねーよ、現実見ろよボケ」


「はー?ボケはないだろボケは!」


 ガラガラガラ


 圭の現実を見ない発言に、いつもの通りツッコミを入れながらご飯を食べていると、1人の生徒の登場によってうるさかった教室から小声しか聞こえなくなる。


「ひびきたんは今日もかわいいなぁ」

「俺は今日ひびき様に挨拶返してもらったんだぜ!」

「えーいいなー。俺なんて頷いてもらうくらいだよ」

「俺、今日、無反応だった…」


 静かな教室から小声でこんな会話がそこらじゅうから聞こえてくる。そう、入ってきたのは白雪響である。そして彼女が入ってくると教室にいる男子が騒ぎ立て、女子達が尊敬と嫉妬の目を向けるのは恒例行事となっている。中には熱っぽい目を向けている女子もいるが…


 だがそんな毎度のことを彼女は華麗にスルーしまっすぐ俺たちの方に向かって歩いてくる。だが、ここで慌てることはない。


 なぜなら彼女の席は俺の隣であるからだ。少し前までなら『ワンチャン話しかけられるんじゃね⁉︎』という淡い希望を持っていたのだが、こちらから話しかけないと反応を示さないとわかった今、すでにそんな希望を持ってはいない。


 だが、なぜだか彼女はいつもと様子が違うようだ。いつもならすぐに自分の席に座るはずの彼女がこちらを見ている気がする。なぜだろう。

 チラッと彼女の方を見ようとするが、ガッツリと目があってしまう。気まずい時間が流れる。目を逸らそうとも思ったが、彼女の視線の前においてそんなことはできなかった。


 いい加減口を開こうとすると、彼女が先に口をひらいた。


「あ、あの!巻島くん!」


「はい?」


「わ、私と、付き合ってください!!!」


「はいぃぃぃぃ???」


 俺の素っ頓狂な叫び声が学校中に響き渡った。



 あのあとしばらく呆然としていた俺だったが「だめ、ですか?」という白雪さんの涙目+上目遣いに一発KOだった俺は即OKした。

 いや、そんなことされなくてももちろんOKだったがそんなとこはどうでもいい。

 その後の教室、いや学校は一言でいうとやばかった。

 白雪さんがとある男子に告白したという情報は瞬く間にSNS上で拡散して大騒ぎ。俺は俺で幸か不幸かそのあとの学校は白雪さんのことしか考えられず、ずっと上の空でその時はその騒ぎや、鳴り止まないスマホに届く殺人予告に気づかなかった。


 そして放課後になり、今までで生きてきた中で一番勇気を出し、白雪さんを「一緒に帰らない?」と誘った。その時の周りの視線は、「あまり調子乗んな」や「俺たちの白雪さんに近づくな」などと殺気のこもった目線だった。まあ、白雪さんはOKしてくれたから問題なかったけど。


 そして今はいつもと同じ帰り道、だが大きな違いが二つ。一つ目は周りの生徒。歩いている生徒も自転車に乗っている生徒もみんな鳩が豆鉄砲食らったような顔をしてる。中にはそんな顔をしながらもスマホで写真を撮ろうとしている輩もいる。

 あ、今前にいるチャリに乗ってる生徒がこけた。


 理由は単純、二つ目の違いでもある俺の隣を歩いている白雪さんだ。普段一人で帰っている白雪さんが他の人と、しかも男と帰っているなんてSNSで彼氏ができたことは知っていても信じられない光景なのだろう。


 そう思い、チラッと白雪さんのほうを見ると物凄い光景が目に飛び込んでくる。なんと彼女の手が俺の手に向かって伸びてくる、がすぐに引っ込んでしまう。そしてまたそろりそろりと手が近づいてくる。それをなんども繰り返していたのだ。

 集中しているのか俺の手をばかり見ていて、俺の視線に気づいていない。


 ここは俺が率先して手を握るべきなのか、と考えながら白雪さんを見ていると、白雪さんと目があってしまう。長い沈黙のうち、彼女の顔がみるみる赤くなっていくのがわかる。そんな白雪さんの普段の凛とした姿からは想像もできない珍しい表情に周りの生徒は今がチャンスとばかりに写真を撮ろうとする。やばいなんとかしなければ、と目に飛び込んでくるのは白雪さんの手。


 どうやらその時の俺は気が動転していたらしい。

 白雪さんの手を取ると、写真を撮ろうとしている生徒や、未だに白雪さんの珍しい表情に驚いて動けない生徒の間を縫って逃げ出した。


 この時の判断は間違ってなかったと思う。

 だけど、まさかあんなことになるなんて…

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