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9月10日。
まだ少しじめっとした気温が続き、
外からはヒグラシの鳴き声が聞こえてくる。
風通しの悪く狭い部屋に集まった人々は
額の汗をハンカチで拭ったり、手で顔を扇ぐ仕草をしてみせたりしているが、誰1人として上着を脱ぐことは無かった。
「お母さん、もう座るのつかれたぁ」
長い時間座らされた1人の子供が呟いた。
「シーっ。もうすぐ終わるから我慢なさい。」
その子の母親であろう女性は小声で言った。
普段関わりのない親戚の失礼な態度をよそに
私は只々、導師の読むお経をきき手を合わせた。
人生で3度目の葬式だった。