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ヘブンズ・ゲート  作者: 西木宗
【闇属性狩り編】
1/68

蒼術の歴史

蒼術。



それは太古から人類が持つ唯一の力。



この世を生きている人間は皆、蒼術という力を体内に宿している。



この世界には、魔法や超能力といった類の力は存在しない。



あるのは蒼術。



蒼術は無限の可能性を秘めている。



火水雷光闇の、五つの属性に分類され、一人一属性。今のところ例外は発見されていない。



例えば、火属性の人間が火の玉を頭の中に思い浮かべながら場所を定めると、実際にメラメラと燃えさかる火の玉が出現し、対象物に向かって飛んでいく。



水属性の人間だと、弾丸のように鋭くて固い雨粒を上空から無数に降り注がせることができる。



ーーという風に、蒼術は術者によってそれぞれ異なった技が出せるのだ。



故に、蒼術には無限の可能性が秘められている。



だが、何でもできるというわけではない。火属性の者が、水を出すことができないのは勿論のこと、もしも雷属性の者が、国を一つ滅ぼすぐらいの強力な電流を放とうと思っても、それはできない。



なぜなら、使用できる技、その威力は全て術者の力量によって決まるからだ。



蒼術とは、簡単に言い表すと、己の体力そのものを具現化させたものと考えられる。走る距離が長ければ長いほど疲れるのと同じで、蒼術を使用すればするほど、技の威力が強ければ強いほど、体力の減少が早くなり、身体にかかる負担も大きくなる。



そしてこの蒼術だが、一番目を光らせるべきポイントは、選ばれた者だけではなく、全ての者に平等にその力が与えられるということ。



修業を行った者とそうでない者の差は大きいが、逆に言えば、きちんと修業をすれば、誰もが自在に力を操ることができるのだ。



そのため、いつしか蒼術は己の欲望の為だけにその力を使う、犯罪道具になってしまった。国は犯罪で溢れかえり、強い者が弱い者を従える、弱肉強食の世界が確立していた。



ーーだが、凡そ数百年にも及ぶ暗黒時代に、終止符を打った人物が現れた。



エント・フェンリルという一人の青年だ。

彼が繰り出す光属性の蒼術は、誰にも真似のしようがないほど美しく、それでいてかなり大胆な物だった。



まず彼は、一般人をできるだけ大勢、一カ所の街に集めて、その街を取り囲むように円柱の側面ともいえるべき、天辺が雲を突き破っているようにも見えるほど、巨大な光の粒子でできた壁を創り出した。



その壁は、普通の者なら何ともなくそのまま通り抜けることができるのだが、心が悪に染まっている者は、壁の中に立ち入ることができない細工が施されていた。



すなわち、この壁は天国への門。

ーー『ヘブンズ・ゲート』と呼ばれるようになったのだ。



そしてエントが放つ鱗粉のような金色の粉は、心に安らぎを与える効果があった。その粉に少しでも触れた者は、頭の中が空っぽになった微酔に似た感覚に襲われ、それから一切悪事を働かなくなったとされている。



まさに神の子と言っても過言ではなかったエントであったが、それでも増えすぎてしまった犯罪者達を全て一人でどうにかするーーということには、少々無理があった。



そこでエントは、ヘブンズ・ゲートの中にある街の中心部に、大きな建物を設立した。



ヘブンズ・クラムという、蒼術を学ぶ為の学園である。

初代学長となったエントと、他に腕が立つ蒼術師を教師として、毎年一五歳になる者を男女問わず募集し、その中から適性試験に合格した百人が、三年間みっちりと蒼術の全てを学ぶことができる。



三年後、人並みに比べて何十倍も蒼術を自在に操れるようになった卒業生達は、国中のできるだけたくさんの、街や村の至る所に配置される。



その期間一年。



それこそが、エントがヘブンズ・クラムを設立した目的である。



都会だろうが、どんだけ貧相な村であろうが、必ず二人以上の卒業生によって、治安の悪い地域を優先的に守らせる。一年経てばその年の卒業生、また一年経てば…………



という感じで、エントは強いものを育てて、犯罪者達を抹殺していくのではなく、国の平和のための守護者を育てるために、このヘブンズ・クラムを開設したのだ。



そしてそれは、少しずつ形となって成果を出し始めた。最初の卒業生を派遣してから数十年後、とうとう年間の殺人数が0になる。



そう、エントの長年の目標だった平和と安全しかない国がとうとう完成したのだ。





そのまま時は流れーー



今年でちょうど百期生目の生徒が、ヘブンズ・クラムに入学してから三ヶ月が過ぎようとしていた頃、妙な噂が立つようになっていたーーーー。









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