いただきますとごちそうさま、だけじゃ足りません!
このエッセイは個人的な意見です。
でもきっと多くの人が思ってることなんじゃないかなぁ。
いただきますとごちそうさま
この言葉を知らない人はいないと思います。
もし知らないという方がいらっしゃったら、本エッセイの伝えたいことの85%位しか伝わらないのでご説明します。
と言ってもホントに簡単な説明です。
では早速。いくぞー。
いただきますとは、ご飯を食べる前に糧となったすべての命に感謝を捧げる祈りの言葉です。
他にもご飯を作ってくれた方に対する感謝の言葉でもあるかもしれません。
そして次に紹介する和歌を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、いただきますの気持ちを表した和歌として知られています。
「たなつもの 百の木草を 天照らす 日の大神の 恵み得てこそ」
(たなつもの もものきぐさを あまてらす ひのおおかみの めぐみえてこそ)
たなつもの、とは穀物を指すそうです。そして木草はそのまま木の実や作物のことでしょう、きっと。
日の大神は言わずと知れた天照大神ですね。
太陽神であらせられる天照大神の恵みによって作物が実り、日々の糧を得られることに感謝の気持ちを捧げる。
良い歌ですね。
次に「ごちそうさま」ですが、馳走という言葉がまさに客人に料理をふるまうために、準備として食材を求めて各所を走り回るという意味を持っているそうです。
おもてなしをしてくださった方を労う言葉ですね。
ちなみにこちらも和歌があります。
「朝夕に もの食ふごとに 豊受の 神の恵みを 思へ世の人」
(あさゆに ものくうごとに とようけの かみのめぐみを おもえ よのひと)
伊勢神宮外宮にも祀られている豊受大神は穀物や食物を司る神様です。
今日もご飯が食べられるのは、ひとえに神様の恵みのお陰という感謝の歌ですね。
さて、私が本エッセイで伝えたかった本題に入ります。
タイトルにも書きましたが、足りません。
何が足りないか、聡明な皆様ならもうお分かりかもしれません。
そうです、作ってくれた人への感謝の気持ちがいただきますとごちそうさまだけでは、まだ足りないのです!
お前は急に何を言ってるんだ? とお思いの方、ご説明します。
私はきっと今まで、漫然といただきます、ごちそうさまを口にしていました。
それは上記の和歌を知った後でもです。
いただきます、には感謝の気持ちが込められている。
ごちそうさま、には感謝と労いの気持ちが込められている。
......本当でしょうか?
確かに意味は通じますが、本当にそこに気持ちは込められているのでしょうか。
ただ条件反射で口に出しているだけではないでしょうか。
料理を作ってくれた人への感謝の気持ちを、いただきますとごちそうさまに込めていなかったのではないか。
または感謝の気持ちが伝わっていないのではないか。
そう思った理由があります。
最近、私は料理を作り家族に振る舞う機会がありました。
正直めんどくさいです。
しかし作るからには美味しいものを食べてもらいたいと思い、レシピを見ながら作ったのです。
自分では美味しく作れたという自信があります。実際に美味しかったです(謎の自信)
その日の晩、私はわくわくしてました。
「おっ、いつもとは違うね!」
「今日のはなかなか美味しいね」
そんな言葉を今か今かと待っていました。
\ゴチソウサマー/
あれっ? 食事が終わったぞ。
ちょっとなんか一言ないの? 聞いてないぞ?
違いのわかる男どこ? ここ?
がっくり来ました。
ごちそうさま、は頂きました。
でもそれは私にとって「ご飯終わったよ」の合図であり、挨拶以上の意味を持っていなかったからです。
挨拶は大事です。しかし私が欲しかったのは「もう一声」です。
まるで足りないのです。
いただきます、ごちそうさま。意味は知っています。
でも本当に欲しい言葉は「美味しいよ」「また作ってね」です。
この言葉が貰えれば、また作ってあげようかなとか、もっと工夫して美味しいものを作ろうかなというモチベーションが上がるのです。
もらえなければ、正直めんどくさいのです。
食えるもん出せばいいや、になります。最悪、カップ麺でも食ってろ、です。
カップ麺にも豊受大神が宿っていらっしゃいますので大丈夫です。問題ない。
翻って自分自身はどうだったかというと--そうだね、ギルティだね。
......作ってもらってばかりだと、作る大変さや本当に欲しい感謝の言葉や労いの言葉と言うものは分かりにくいのだと実感しました。
いただきます、ごちそうさまは大事です。
しかしご飯を作ってくれる人にもう一声、「美味しいよ」と言ってあげてください。私もこれからは言います。
それだけでモチベーションが維持できると思うし、それだけで人は人に幸せを与えることが出来るのです。
最高に我が儘な要求かもしれませんが、いち作り手として思ったことをお話しさせて頂きました。
作り手の一人でも多くの人が幸せになればいいな。
ちなみにこれを執筆した日の晩御飯は、3割引の寿司とお総菜のトンカツでした。
どう見ても手遅れです、本当にありがとうございました。