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第二章:コーラによる築城

 イズミ村との戦争から三カ月が過ぎた頃だ。見回りをさせていたヴァイキングから、謎の兵団がロイホ村へと迫っているとの知らせが届いた。


 赤石が敗北したことを知った蛇島が送ってきた兵団でまず間違いないだろう。三カ月もの月日を要した理由は、ヴァイキングたちが馬に乗れないため、どうしても行軍速度が遅くなることと、俺を殺すのはあくまで個人的恨みでしかなく、急いでまで兵団を送ろうというモチベーションがなかったからだろう。


「三カ月の月日を俺に与えたのは失策だったな」


 不敵に笑う俺は蛇島の兵団が到着するのを待つ。そして数時間後、とうとう彼らは到着した。


「なんだこれはっ!」


 蛇島の軍団は誰も彼もが唖然とした表情を浮かべながら叫んだ。だがそれも無理はない。彼らの行く手を阻むように、コーラで作られた堀が現れたのだから。


 ロイホ村は山と海に囲まれた天然の要害だったが、接収したイズミ村は牧草地帯の多い、守りの薄い地域だ。そんな守りの薄さを克服するため、俺は村を覆うようにコーラで堀を作ったのだ。人の足では到底進めないような深さの堀も、俺の能力を使えば、触れるだけで作ることができるし、本来なら堀は作った後に水を引かなければならないが、コーラがあるからその手間も必要なし。


「キモオタもとんでもないことを思い付くわね」


 物見台から共に蛇島の軍団を眺めていた可憐が呟く。呆れたような表情で、堀のコーラを見つめていた。


「奴らは堀を渡る手段を持っていないからな。このまま立ち尽くすか、一旦撤退するかを選択しないといけない」


 こちらとしてはこのまま外で待機し、兵糧攻めをされたとしても問題はなかった。まだまだロイホ村には食料がたくさんあるし、奴らは知らないだろうが、ポテチを生み出し続ければ、食料が枯れることはないからだ。


「それにしても、キモオタ以上に食べモノを粗末に扱う奴を見たことないわ。アフリカの恵まれない子供たちに謝りなさいよね」

「うぐっ」


 ぐぅの音も出ない。


「それよりも可憐、さっさと働け」

「はいはい。クズなキモオタ様のために働きますよっと」


 可憐は手元の石を何個か摘み上げると、それを数台のラジコン飛行機に変える。


「作るのは私がやるけど、使うのはキモオタがやりなさいよね」

「どうしてだ?」

「私のような穢れのない美少女に人殺しの汚名を着せる気なの? どうせあんたの両手は血で濡れて真っ赤なんだから、気にならないでしょ」

「可憐の中で俺のイメージがどうなっているのか良く分かる一言だな」


 ただ元々俺が考えた作戦なのだから可憐の言う事も一理あると、ラジコンのコントローラを受け取る。一つのコントローラで、複数のラジコン飛行機を操れるように、目標物を選択すると、自動でそこまで移動するような作りになっていた。


「目標地点を敵兵団に設定してと……ほら、飛んでけ」


 ラジコン飛行機が一斉に飛び立つ。その速度はあまりに速い。それも当然で、可憐に作らせたラジコンは安物のおもちゃではなく、一台、百万円近くするジェットエンジンが搭載されたラジコンだった。


 時速三〇〇キロ近いラジコン飛行機が蛇島の兵団に突っ込んでいく。人の乗っていない神風アタックが、彼らを襲う。命中すれば痛いではすまない突撃に、悲鳴を漏らしながら、彼らはただ耐えた。


「命中精度はあまり良くないな」


 直撃したのは数十人程度だった。しかしそれで充分と云えた。不運な数十人は全員が即死し、バラバラになった肉体を周囲に散らした。その光景はあまりに無残で、恐怖を与えるに十分だった。


 そう、ラジコン飛行機の突撃による最大の効果は恐怖である。独特のジェット音が鳴り響いた直後に、眼にもとまらぬ速度で突撃してきた物体が、仲間を無残な姿へと変える。矢のように無音で殺すのではなく、ジェット音という殺しの足音が鳴り響いた後に殺すことこそ、最大の利点だと云えた。


「見なさい、キモオタ。敵が逃げていくわよ。や~い、この腰抜けどもぉ」


 可憐が蛇島の軍団を指さしながら、ゲラゲラと笑う。ヴァイキング相手に良くそんな煽り文句が言えるもんだ。ただ俺も喜びで顔が緩んでいただけに、可憐のことをどうこう言う権利はない。


「ラジコン飛行機の神風アタックと、コーラによる野戦築城が思った以上に使えると知れたのはでかいな」


 きっと今後の戦争でも大いに役立ってくれるだろう。手持ちの武器が増えた喜びを噛みしめるように、手をぎゅっと握った。


「これで心配ごとはなくなった。次は商業都市レリックに向かうぞ」


 デンマークの王へと成り上がる準備は着々と整いつつあることを感じつつ、俺はロイホ村を後にすることに決めたのだった。



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