ファーストフード
二人は昼ご飯を食べる為に、大手ハンバーガーチェーン店にいた。
天音が注文したのはクーポンを使用できる月見チーズバーガーとポテト、オレンジジュースのセットだった。
「ん~」
天音は行儀よく両手で月見チーズバーガーを掴んで、幸せそうにかぶりついている。
葉月がぼんやり眺めてると
「どうしました? 私の顔に何かついていますか?」
葉月の視線に気づいた天音が首を傾げる。
「あぁ、いや。ハンバーガーの食べ方知ってるんだな~と思ってな」
「……馬鹿にしてますか? してますよね?」
ムッと眉をひそめる天音。
「いや、馬鹿にしてるというか、お約束みたいなことになるかと思ってたんだが……」
「あ~、お嬢様キャラがハンバーガーの食べ方が分からず、どうやって食べるの? 的なイベントですよね?」
ホットドックを食べながら葉月が頬を掻く。
「そうそれ、他にはナイフとフォークはどこにあるの? とかな」
「そういうのもありますね。って、私ってお嬢様に見えていたのですか?」
「それなりにはお嬢様だと思ってたが」
「否定は出来ないですけど……さすがに食べ方ぐらい知ってますよ。テレビで何度も見てますし」
「テレビでってことは実際に食べたことは?」
「な、ないですけど……」
天音が口を尖らせる。
「ホントになかったのか……」
半分冗談のつもりで言っていた葉月は少し驚いた。
「だって、食べる機会がなかったんですから仕方ないじゃないですか」
ムッと頬を膨らませる天音。
「では、初めてのお味はお気に召しましたか? お嬢様」
「うむ。悪くないです。褒美に私のポテトを進呈しましょう」
天音がポテト一本を葉月の口元に向け、あ~んとしてくる。
「……」
葉月は突然の事に固まってしまった。
「どうしたんですか?」
葉月はポテトに噛みつくか悩み……
「ありがとな」
と、手で受け取った。
「意気地がないですね」
「あぁ、ねぇよ」
葉月はポテトを咥える。
「これなら先生との約束も問題なく守られそうですね」
「うるせぇ」
ニコニコと笑う天音を見て葉月も笑った。




