朝
朝、目を覚ますとお腹に何かが当たる感触がした。
「あぁ、そうだったな」
布団の隙間から金色の髪が見える。アンジュと寝てたんだったと葉月は思い出す。
ギューっと葉月の服を掴んでいるアンジュの手をそっとはずし、葉月はゆっくり立ち上がる。
「吸血鬼ってなに食うんだろ? 好き嫌いってあるのか?」
携帯電話でネット検索してみたがよくわからない。
冷蔵庫に入っているものを確認する。目玉焼きと焼き鮭、みそ汁に白米にすることにした。
葉月が手早く朝食の準備をしていると、背中に軽い衝撃を受けた。後ろを振り返ると、アンジュが腰にしがみ付いていた。
「アンジュ、おはよう」
「オニイチャン、おはよ~」
腰にしがみついたまま、葉月の顔を見上げニッとアンジュが笑う。
「アンジュは好き嫌いあるか?」
「ん~、キライなものないよ。イチバンはオニクがすき~」
「なら、大丈夫だな。お腹空いたろ?」
「うんん、マリョクたべてるからだいじょうぶ。でも、オニイチャンのゴハンたべる」
吸血鬼は大気中に存在する魔力や龍脈を食事として接種できるらしい。生きていく上で食べ物を食べる必要性が一切ないとのことだ。
「よし、準備するか」
「おてつだいするね」
葉月が部屋の布団を片付けるてテーブルの準備を終えると、アンジュがお盆に乗せた料理を持ってきた。食事の準備が完了し、二人は向かい合って座る。
「よっし食うか」
「いただきます」
葉月の料理が吸血鬼の口に合うのか心配していたが、美味しそうに食べるアンジュを見て少し安心したのだった。
「さって、目立つよな。見た目」
外に遊びに行こうと思ったが、葉月はアンジュの目立つ見た目をどう隠すか考えていた。金髪で赤い瞳も目立つが、フリルたっぷりの高そうな漆黒ドレスが異常に目立つ。しかし、葉月の服を着せて出かけるわけにも……
「オニイチャンあそばないの?」
ドレスに着替えたアンジュが首を傾げている。
「アンジュは他の服持ってないのか?」
「オウチにはあるよ。ママが作ってくれたの」
「ウルグアイの?」
「うん」
取りに行くのは不可能な距離だ。葉月は財布の中身を確認し悩む。
「あ~、まずは服でも買うか」
「オニイチャンの?」
「いや、アンジュのだ」
「アンおかねもってないよ」
「プレゼントしてやるよ」
「いいの!」
アンジュが嬉しそうに葉月の腕にしがみ付いてくる。
「いったんその服の上から俺のパーカーでも着といてくれ」
「わかった」
ぶかぶかのパーカーを着たアンジュを連れて葉月は家を出た。




