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ダメ魔術師の優しい魔法  作者: 辻流太
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勘違い

 葉月の部屋にいた少女の名前はアンジュ。本人が言うには吸血鬼らしい。

 瞳の色を見ればそうなのかと思ってはしまうが……アンジュは完全に勘違いしていた。

「ねぇ、ねぇ、キュウケツキのオニイチャンはどうしてニンゲンとおなじところにすんでるの?」

 葉月のことを吸血鬼だと思っているようだ。確実に九法の儀式のときに吸血鬼だって言ったからだろう。

「いや~、俺は吸血鬼じゃないんだが……」

「ん? オニイチャンはジュンケツシュじゃないんだよね。ジュンケツシュじゃないキュウケツキはコンケツシュっていうんでしょ。コンケツシュはコウフンしたときにヒトミがアカくなるんだよね」

へぇ~、知らなかった……

「……アンジュはどうして吸血鬼にこだわるんだ?」

「だって、ママにキュウケツキじゃないとトモダチになったらダメっていわれたの」

 吸血鬼以外と友達になってはいけないって、かなり難易度が高いと思う。実在しないと言われている伝説の存在としか友達になれないなんて可哀そうじゃないのか?

「どうして吸血鬼じゃないとダメなんだ?」

「ん~とね。ママはニンゲンはキュウケツキがコワイからコロスんだって」

「……」

 魔術協会に吸血鬼専門の部隊が存在するくらいだし、人間を嫌うのは当たり前なのかもしれない。

「それにね。キュウケツキのチとかメとかニクとかホネってタカクうれるってママがいってた」

 魔術の素材として、吸血鬼の身体って価値があるんだとアンジュは言う。伝説の存在なのだから当たり前か

「そっか……」

 葉月は自分が人間だと言い出しにくくなってしまった。せっかく楽しそうなにしているアンジュを落ち込ませるのはかわいそうだ。

「ところで、アンジュは何処に住んでたんだ? 近いのか?」

 まさか伝説の存在がご近所に住んでいたとは、世間は狭いなと思い葉月が尋ねると

「えっとね。チキュウのウラくらい?」

「は⁉ 裏って」

「ウルグアイ」

 本当の意味でだいたい裏側だった。

「飛行機でも乗ってきたのか?」

「ヒコウキ? なにそれ? はしってきたにきまってるじゃん」

 決まっているのかと葉月は吸血鬼の常識を知った。

「で、アンジュはどうするんだ?」

「ん~とね。オニイチャンとあそびたいな」

「で、何して遊ぶ?」

「たのしいことがいいな~」

 ニコニコと笑うアンジュに葉月は本当のことを言えなかった。




 天音が一緒に住んでいた時と同じように布団にアンジュを寝かせ、葉月は台所で寝ようと思ったのだがアンジュに一緒に寝るように頼まれた。人間の多い街中で寝るのが怖いらしい。

「えっと、アンジュ?」

 中学の時の葉月のジャージを着て布団の中に入ったアンジュは葉月が入れるように端に寝転がり、どうぞと布団を持ち上げて待っていた。

「はやくねよ。オニイチャン」

 眠いのか瞼を擦るアンジュが可愛いと思ってしまった。

「あぁ」

 相手は子供と言い聞かせ葉月は布団に入り込む。もぞもぞとアンジュが近づいてきた。

「ふふっん、ママとねたのおもいだすな~」

 葉月は嬉しそうに腹部にしがみ付くアンジュ。

「なぁ、アンジュの父親と母親は?」

「ん~とね、フタリともテンにノボッテいったよ。パパはアンがウマレルまえで、ママはヨネンまえ」

 グリグリとアンジュの頭が葉月の腹部にこすりつけられる。

「他に吸血鬼はいなかったのか?」

 アンジュが葉月を訪ねてきた時点で答えはわかっていたのだが、葉月はつい聞いてしまった。

「うん。キュウケツキはトクベツだから」

 いなかったのか……

 葉月はアンジュの頭を優しく撫でる。くすぐったそうにアンジュは目を細め葉月の顔を見上げてくる。

「そっか、じゃあ明日はたくさん遊ぼうな」

「たのしみ~」

 嬉しそうにはしゃいだ後、アンジュは眠りについた。

 葉月はアンジュが寝たのを確認し、眠りについたのだった。

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