序章 噂
満天の星空を鏡のように映す海面。
神秘的な世界を一人の幼い少女が走っていた。
金色のふんわりとした綺麗な長髪を揺らし、深紅の瞳を楽しそうに細め、ピョンピョンと跳ねながら海上を疾走している。
「んふふっ、どんなヒトかな?」
九法の儀式に現れたという噂。それを聞いた時、少女のテンションは跳ね上がっていた。
母以外の仲間に会えるなんて初めての経験なのだ。一度立ち止まり、足元の水面に映る自身の顔を覗き込む。家を出る前に水浴びをして全身の清めもしたし、服も持っている中で一番綺麗なものを選んだ。変なところはないはずだ。
「うん。モンダイなし!」
声に出して頷き、再び走り出す。自然と鼻歌を歌ってしまうのは仕方ない。
だって、テンションが上がってしまうのだから。
「トモダチになってくれるかな? もしかしたらほかにもナカマがいるかも~」
ワクワクしてしまう気持ちを少しでも抑えるようにスピード上げる。
昔、母に言われたことを思い出す。
『同族以外とは仲間になってはいけない。私たちは人間とは相いれない存在なのだから』
同族なら友達になっても良いよね。っと天に向かって尋ねてみる。
早く会いたいな。霧島葉月に




