決着
避ける価値のない裏拳を受け、武藤はこれが葉月の限界だと察した。終わりにしよう。こいつはよく戦った。
腕を振り上げた武藤は全身全霊を込め振り下ろす。
一瞬、葉月と目が合った。葉月の瞳には諦めなど、一切映っていなかった。それどころか死への恐れすら一切ない。
真っ直ぐな瞳に、少し殺すのが惜しいと思ってしまった。
一瞬の迷いが、武藤の動きを鈍らせた。
「ショートカットぉぉぉぉぉ」
その声がはっきり武藤の耳に聞こえた。
気づいた時には遅かった。
コインなど何処にも見当たらない。これでは葉月がどこに移動するか分からない。
だが、すでに動きは止まらない。
なら、移動する前に潰すだけだ。
神速の爪は葉月の顔面に向かう。
触れるだけで全てを破壊する魔爪が、葉月の頬に触れた。
しかし触れた時には、その先に誰もいなかった。
代わりに武藤の顔面を葉月の渾身の魔力を込めた右ストレートが完璧に貫き、武藤の身体が吹き飛ばされた。
衝撃破が舞い散るステンドグラスを吹き飛ばした。
「くっそが」
完全に意識の外からの攻撃に武藤は悔しそうに、でもどこか嬉しそうに呟き意識を失った。




