表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダメ魔術師の優しい魔法  作者: 辻流太
34/47

高揚

 葉月と武藤は何度も交錯する。

 二人がぶつかり合うたびに、葉月の服が裂け、血飛沫が散った。

 明らかに葉月の方が劣性である。

 衝突するたびに傷つくのは葉月の方だけで、人狼化した武藤には届かないのだ。

「おい、おい、おい。どうしたんだぁ。防戦一方だな。攻撃しないと俺には勝てなねぇぜ。勝つんだろ? この俺に!」

「……」

 武藤が挑発してくるが、葉月は答えない。答えている余裕などない。

「どんな魔術使ったっていいんだぜ。勝つんだろ。この俺に! 俺に勝ちてぇなら、勝てるだけの力を持って来いよ! 大口叩いといてこの程度か?」

 武藤が攻撃の手を止め吠える。

「はぁ、はぁ、流石に強いな」

 葉月は構えを解かず話しかける。

「そりゃ、そうだぁ。俺は最強になる男だからな」

 牙を剥きだしに答える武藤。

「そうかぁ……最強かぁ」

「そうだ。最強だ。喜べ。お前は俺が最強になる為の生贄になるんだからな」

 葉月が力なく笑うと、武藤も笑う。

「でも、まだ最強じゃないんなら、俺の勝ち目が無いわけではないだろ」

「まだ吠える元気があるじゃねぇか。いいねぇ。やっぱ、獲物はこうでないとなぁ。張り合いってもんがねぇ」

「あぁ、俺もそう思うよ。続きといこうぜ。最強」

 パン、と祈るように両手を一度合わせ、再び両拳を葉月が握る。葉月はしっかりと腰を落とし、右手に魔力を集中する。

 動く気つもりはない。ただ、カウンターだけを狙った構え。

「カウンター狙いってわけか。いいぜ。その挑発に乗ってやるよ。その上でお前の全てを潰してやるよ」

 牙を剥きだし、武藤の両腕の爪が剣の様に伸びた。

「うをぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」

 武藤の咆哮に建物が振動する。

 魔力を込めている右手以外が武藤の圧力で痺れる。膝が震えそうになるのを、葉月は必死に堪えていた。

 ステンドグラスが振動に耐えれず割れ、七色に輝くガラスが散る。幻想的な光景を前に、武藤が前傾姿勢を取り地面を蹴った。

 武藤が蹴った床が砕け散り、二人の身体が激突した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ