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ダメ魔術師の優しい魔法  作者: 辻流太
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開戦

「それでは、九法主催の儀式に霧島葉月様の参加を許可致します」

 御影が感情のこもっていない声で宣言する。

「君は分かっているのか……君がここまでする理由はなんだ。君も九法が欲しいのか」

 かすかに掠れる声で、草加が訊く。

「そんなの決まってるだろ」

 葉月は、はっきり言う。

「天音に会う為だ」

「……会う為?」

 草加が呟く。

「そんな事の為に君は何をしようとしているのか分かっているのか? 会うだけなら会えばいいでしょ。それぐらいの許可してあげますよ」

「許可はいらない。それに、今会っても仕方ないだろ」

「はぁっ? 意味が分かりませんよ」

「今の俺と会っても天音は本当の事を言わないからな。あいつは優しいから」

「だから、武藤と戦うと?」

「あぁ」

「君、死にますよ」

「ここで引くなら、天音に会う資格はないさ」

「……」

 数秒間、草加は沈黙する。その沈黙が葉月に対する怒りの表れだと表情で分かった。

「もういい。武藤、そいつを殺してしまいなさい」

「やっとかよ。待ちくたびれたぜぇ。そのセリフ」

 武藤は椅子から立ち上がると、ゆっくりと葉月の前に歩み寄る。

 二人の視線が交差する。

 葉月は、武藤を迎え撃つ為に構える。

「始めるぜ。挑戦者。俺を少しは楽しませてくれよなぁ」

 牙を剥きだし笑う武藤の拳が霞む。殺意の込められた拳、葉月を殺すには十分過ぎる一撃。葉月の頭など、一撃で陥没させてしまえるだろう。

「はっ!」

 しかし、葉月は怯まない。突き出された武藤の拳を葉月が左手で流しつつ、がら空きの武藤の脇腹に右拳を叩き込む。周りに設置された椅子を巻き込み、武藤の身体が数メートル先に吹き飛ぶ。

「な……」

 草加は驚きの声を上げる。吹き飛んだ武藤の方は殴られた脇腹に触れながら口を歪ませ笑っている。

「くっくく、やっぱり、ただの雑魚ってわけじゃなさそうだなぁ。少しは楽しめそうだな。いいねぇ。お前、気に入ったぜぇ。レベル上げるからしっかり付いてこいよぉ」

 武藤が床を蹴り、葉月の懐に飛び込んでくる。

 全神経を集中して、葉月はこれを迎え撃つのだった。

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