夢
眩い光の柱が天を衝く。
ボロボロの葉月の腕の中には心地よさそうに子犬が眠っている。その姿を見て葉月は微笑む。
ビルを覆っていた歪んだ魔力は完全に消え、浄化された魔力が純白の羽の形となり散っている。ヒラヒラと雪のように何百枚もの羽がビル全体に舞い散る。
綺麗だと葉月は心から思う。
この綺麗な羽は、きっとこの地に縛られていた子らを天に連れて逝ったことだろう。
だから、葉月は安心して後ろ向きに崩れ落ち、そしてゆっくりと意識を失った。
夢を見た。
懐かしくて、優しい夢。
目の前には八十歳を超えるお爺さんが座っている。
葉月は読めない魔道書に苦戦しており、お爺さんはそんな葉月を見て笑っていた。
葉月の魔術の師匠である、このお爺さんの名はクロエ・アイルミスト。変わり者と言われるロンドンの魔術師だ。
クロエは何百人もの魔術師の弟子入りを断っていた。そのためアイルミスト家の魔術はクロエの代で途切れるものだと誰もが思っていたのだ。
そんなクロエが日本に仕事で来た時に、葉月はクロエと偶然出会った。
直感で魔法使いだと判断した葉月は出会い頭に土下座し、魔法使いになりたいと頼んでいた。クロエは驚いた顔をしたが、葉月の願いをあっさり断った。
それから日本にいた数日、葉月は毎日クロエの前に行き願い続けた。魔法使いになりたいと……葉月が小学五年生の時の出来事であった。
クロエは葉月が憧れた魔法使いの名前を出した途端、笑い出し
「分かった。いいよ。君はあきれるくらい面白いね。私の弟子にしてあげよう。でも、その前にお父さんとお母さんに相談してきなさい」
と、言ってくれた。
クロエは葉月の憧れた人が手品師だと分かった上で受け入れてくれたのだ。
それから親の了承を得た葉月はクロエとロンドンに行き、魔術の訓練を始めた。すぐに魔術の才能のない事が分かった葉月に沢山の事を教えてくれた。
「才能? そんなのはどうだっていいんだよ。才能なんかで人生決めてたら面白くないだろ。君が、葉月君がどこに向かいたいのかそれだけだよ。なんせ、この世界に答えなんてないんだから。君が好きなように進めばいいんだよ」
クロエはどんな時も優しく、魔術や学問、遊びも教えてくれた。
本当に沢山の事を学んだ。
二年前、師匠が老衰で亡くなるまで




