騎士
誰にでも守りたいものがある。
そのためにどうすれば良いか。
ない頭で考えて、辿り着いた答え、それが俺の場合は剣だった。
騎士になった理由などたったそれだけだ。
でも、別に不満は無い。
むしろ満足して居るし、俺は今こうして愛する者達の為に剣を振るえることを誇りに思う。
何にも代え難い、愛しき日常だ。
我がクルス国は大陸の南に位置し、緑豊かな富める国だ。
土地も広大で人も多い。
だが、その分どうしても資源が足りないのだ。
緑豊かで広大ななだらかな大地は人々に豊かな作物をもたらす。
だが、険しい山脈がないと鉄や金、銀などの鉱石が取れない。
帝国、とまで称される我が国には、圧倒的に資源が足りないのだ。
資源確保の為の他国との戦などよくあることで、俺も昔はよく戦場に立った。
今は3年前に第5王子が北の小国、エステルから無言の帰国をして以来、我が国王は虎視眈々と北征の機会を伺っている。
3年前、若き女王が即位する前まではいつでも攻め落とせたであろう小国が、今じゃ帝国とまで謳われる我が国ですら迂闊に手を出せない小さき強国となったのだ。
腐敗した国をたった3年でここまでに建て直した若き女王の手腕には舌を捲くものがある。
「が、それもここまでだろうな…」
荷物をまとめながら俺は呟いた。
我が国が誇る紅き至宝、クロエ・アリンソン・クルス王女。
友好国の証しとして、しばらくエステル王国で過ごしてみたいと仰った我が姫君の護衛として同行するように命を受けたのは記憶に新しい。
そして、それと同時にエステル王国の内情を探れと、そう命を下してきたのだ、あの老獪は。
王は、純粋無垢な己の愛しき娘でさえも、侵略の手段に使おうとする食えない男だ。
そして、恐らく俺が己が娘に浅ましくも卑しい恋情を抱いてさえいることも知りつつ、あえて何も言わず、俺ならば命に代えても娘を守ることを理解した上で、命を下してるのだ。
守らなくてはいけない。
何がなんでも。
愛しき人を。
正体の分からぬ敵国の手の者から。
王の張り巡らす、策から。
何からも。
はじめまして、こんにちは。
作者の華子です。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
ここでプロローグ終了となります。
プロローグはメインキャラ4人の視点で書いてみました。
分かりづらかったり、読みにくかったりしないでしょうか?
何かご意見ご感想あれば、お知らせ下さい。
誤字脱字報告も歓迎です。
次話から本編始まります。
そしてやっとヒロインの名前出せます^^;
マイペース更新なので気分に大きく左右されますが、千里の道も一歩からということで地道に更新して行こうと思います。
本編も是非お付き合い頂ければ幸いです。