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真夏の悲劇 中編

 喫茶マープル。この時代個人が経営するカフェはあまり売れ行きが悪く閉店する店も多いのだがこの店は珍しく繁盛している。レトロな雰囲気に綺麗な観葉植物で癒される空間は心が清らかになるとこの町では有名だ。



 入口から一番離れた右奥の二人席が彼女の特等席。さっそくマープルの扉を開く、居た。彼女だ。俺は彼女の前の空いている席に座る。

 彼女はだれが見ても美人である。しっとりとした長い黒髪が印象的な和が似合いそうな顔立ちが特徴の彼女。

「……なぜあなたがここにいるの? せっかくの雰囲気が台無しになるから消えてもらえるかしら」

 怪訝そうな顔をしながら言う。

 彼女の名前は西連寺雪乃。俺と同じ高校に通う同級生でありこの店の常連客だ。


「いやここ俺の家だから」


 実家が喫茶店というのはなかなか便利なもので、毎日美味しいコーヒーをただで飲めたりするのでお得だ。一階が喫茶店で二階と三階が住居となっている我が家では、父は会社員で母が一人この喫茶をきりもりしている。


「そうだったわねーー。で、どうしたの? そんな暗そうな顔をして私を見て、気分が悪いから早く二階に上がってくれないかしら?」


「まぁそうゆうなよ西連寺、ちょっと聞いてほしいことがあるんだ」


「あまり私の神聖な時間を邪魔しないでほしいのだけど……」


 彼女はそれまで読んでいた小説を机の上におき、そう言い放つ。普段は顔色を一切変えない彼女なのだが、今は口をとがらせて俺を睨んでいる。小説を読むのを邪魔されてお怒りのようだ。


「すまないな、コーヒー無料券一枚やるからよ」


「小鳥遊くん? あなた私をからかっているの? 無料券一枚で釣ろうだなんで、5枚渡しなさい」


 少し顔が変わる。彼女はうちの店が好きだ。毎日のようにここに来ているので無料券をもらえるのは嬉しいのだろう。


「わかったわかった。なら、話をしていいか?」


「いいわよ」


 メガネをかけながら彼女は返答する。普段は裸眼だが集中したいときはメガネをかけるらしい。


「実は….…」


 俺はありのままを話した。部室から衣装が消えたこと、3人はアリバイがあるが俺と唯にはないこと、衣装が見つからないと舞台に出れないことなどを。俺の話を静かに聞いたあと、彼女はゆっくり顔を上げてーー


「犯人はあなたね」


 西連寺はそう言い放った。その顔から冗談は感じ取れない。


「なぜそう思うんだ?」


 俺は犯人ではないのだが西連寺の推理である。聞いてみる価値はある。


「簡単よ、小鳥遊くん。あなた食堂に居たときに自動販売機にコーヒーを買いに行ったのよね? なぜ小鳥遊くんはわざわざ一階の食堂についてから二階の自動販売機に行ったの? 三階の部室から食堂に向かうなら途中で買えばよかったじゃない」


「さすが西連寺、確かに俺の言動はすこしおかしいな。だが、俺は犯人じゃない、それは断言できるぞ」


「そう……、確かにもし小鳥遊くんが犯人なら私に相談なんてしてこないわよね。ごめんなさい、私ったらあなたが嫌いすぎて私情を挟んだわ」


 かなりひどいことだ。この女は俺が嫌いだから犯人にしようとしていたのか。


「さすがの西連寺もお手上げか?」


「そんなこともないわよ、もう8割ほどは謎は解けたわ」


「さすが西連寺、学年一の秀才はだてではないな。なら、本当の犯人を聞かせてもらえないか?」


 西連寺はメガネを外す、本当にもう犯人の目星はついているのだろう。

 

「あなたはわかっているわよね? あなたたちが服を隠してもいいことなんてなにもないの。でも事件は起きた……どういうことかわかるかしら?」


「それだけ服を隠さないといけない大した理由があるんだろ?」


「半分正解かしら、ねぇ小鳥遊くん、ある宝石店を経営している夫婦がいるとする、夫婦が夜寝ているときに強盗が入り、朝夫婦は起床すると店のドアが壊されて宝石が無くなっていることに気がついた。あなたが夫なら警察になんて通報する?」


「そうだな、強盗に入られたので今すぐ来てください、とかありきたりなことを言うと思うぞ」


 夏は暑い。腕時計の長針は4をさしている。まだまだこの暑さは続くだろう。背中の汗はまだひかなさそうだ。


「そう。ならあと一つ、銀行強盗がマスクをかぶって銃を持ち銀行に人質をとっているとするわ。あなたが銀行強盗だとして、もっとも安全に逃げられる方法はなんだと思う?」


「人質がいるんだから警察に車を用意させて逃げればいいんじゃないのか?」


「違うわ、そんなの発信機をつけられていたらすぐ捕まってしまうじゃない。だから小鳥遊くんは馬鹿なのよ」


 西連寺は嘲笑しながらそう言うと飲みかけのコーヒーを飲み干した。


「正解は….…人質になるのよ」


「犯人は人質にはなれないだろ」


「なれるわよ、銀行強盗はマスクをしているのよ? つまり顔は誰にも見られていないの。だったら、人質全員同じ方向を見るように指示して自分は服を着替えてマスクをとればいい。あとは一発発砲する。さすがに発砲音が聞こえたら警察も突入してくるわ、あとは人質のふりをして指紋も残さなかったら無事に逃げられるわ」


 その手があるか。その方法なら確かに逃げられるだろう。


「それはわかった、だがその二つの話は今関係があるのか?」


 そうねーーと彼女はためてから言葉を吐き出す。


「あなたは本当に頭が悪いのね。まどろっこしい話はなしに単純に犯人をトリックを教えてあげるわ、よーく聞きなさい」




 彼女はすべてを話してくれた。真相はあまりにもくだらなすぎて笑ってしまう。

 すべてを話し終わると彼女はまたあとでメールすると言い帰ってしまった。



 次の日、謎は動き出しのだった。














犯人がだれかご想像してもらえましたか?

前編と中編をしっかり読めば犯人はおのずとわかるでしょう。

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