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番外その3 ドキッ☆一つ屋根のハプニング

 全国の健全かつ紳士な精神を育んでいる「俺は女子が大好きだ―!」と叫ぶことができる様な男子諸君。

 諸君に、君たちが女性の体で好きな部分とは一体なんだ?

 もしかしたら殊勝な方の中には、脇とか足の裏なんていう特殊な嗜好を持ち合わせている者もいるかもしれない。

 だが、俺は声高々にして言う! 女体の魅力はチチ、シリ、フトモモの三点に有ると!

 最近の女性は痩せていていてもすぐにダイエットだと騒ぐが、俺から見れば女性はガリガリより少しくらいふくよかなほうが好みだ。もちろんただのデブは論外なのだが。

 チチ! ――それは男の夢。

 シリ! ――それは男のロマン。

 フトモモ! ――それは男のエルドラド!

 俺はこの三つの神器を周りがいくら非と言おうが、是と答えるね。こればっかりは絶対に譲れない!

 だがしかし、三つのどれか一つだけが突出してはいけない。要はバランスだ。三つの均衡が取れている身体こそ、俺は真に美しいと思うんだ。

 冒頭開始早々に、俺は何をやっとるんだと。そんなに女体の趣味嗜好について熱く語って、お前はアホかと。そう皆さんもお考えになっているのではないだろうか。

 なぜ俺がこんなことを語り出したのかと言うと、ちょっと段階を踏むことになるけど聞いてくれ。

 まず、俺の名前は山田アクジ。世界征服を企む悪の組織「アトス」の下っ端戦闘員だ。

 それがどういう訳なのか、俺は今度、幼馴染でかつ大幹部の上司である『冽氷』魔女シニードリン(本名の白谷銀子と、俺はプライベートでは専ら呼んでいる)と組んだ二人のみで、俺たちの敵である正義の味方「鎧装戦隊アーマーズ」の五人と戦わないといけなくなった。

 勧善懲悪ものの定番のごとく、俺たちアトスはアーマーズに勝ったためしがない。それなのに二人だけでどうすんだと、そういう訳で出てきたのが特訓だ。

 俺と銀子は親父と母さんがいるとはいえ、一つ屋根の下で共にしばらく暮らすことを提案してきた。理由は息の合ったコンビプレーを育むためらしい。

 で、若い男女共に住めば何かしらのハプニングは起こるわけで……。

 結論から先に言おう。

 目の前に、裸体の銀子がいる。

 風呂掃除が済んでから入れたお湯も十分に張った頃だろうと風呂場に赴くと、脱衣所で風呂上がりだったらしく風呂場から出てきた銀子と遭遇した。

 彼女の白磁の様にシミ一つ無い綺麗な肌は湯上りで血色よいほんのりとした朱が入り、丹念に磨き上げられた身体はからはふき取れていない水気が玉となって滴っている。濡れて身体にはりついたロングヘアーが、体のラインを白い身体に体のラインをはっきりと際立たせている。

 美しいと思うと同時に、思合わず二拍手三礼したくなる。

 惜しむらくは、女性の母性と象徴とも呼べるお【検閲により不適切とされる文面があったため削除されました】が、せっかくきれいな桜色をし【検閲により不適切とされる文面があったため削除されました】だが、もう一つの女性の象徴と呼ぶべき【検閲により不適切とされる文面があったため削除されました 検閲により不適切とされる文面があったため削除されました】。

 そんな部分を銀子は隠そうともせず、悲鳴も上げず……。

「ん!」

「銀子、何だそれは……げっ!」

 いったいどこから取り出したのか、シワ一つ無い捺印がすでについている結婚届を、黙って俺に手渡してきたのだった。

 俺は平土下座をして謝ることで銀子に書類のサインに待ったをかけることができたのだった。まだ十七歳の俺には結婚するのはまだ重すぎる!


 そんなハプニングがあった後。俺は晩飯を親父と母さんそして銀子の四人で卓を囲んで食べていた。

 親父と母さんは何かあったかを訳知り顔で、ニヤニヤと俺と銀子を眺めている。

 今日の晩御飯のメニューは、うな丼、ガーリックステーキ、とろろ汁、酢牡蛎すがき、ウインナーソーセージ。明らかな悪意を感じる。

「アクジ。今晩は銀子ちゃんが手伝って作ってくれた、特別メニューがあなたにはあるのよ」

 何なんだい母さん。そこの手に持ってきた得体の知れない暗黒物質は? どっからどう見ても、有機物的な口に入れれそうな感じすら覚えないですけど!?

 やだよ! だってあれ、小さな気泡がフツフツ沸いてそこから紫色した変な気体が発生しているんですよ!?

「どうしたのあくじ? 私が丹精込めて作った料理『アレ』を食べられないの」

 ゴメン。料理とは思えない。アレってナニ? もしかして、そんな名前した料理がこの世に存在しているの?

「アクジ、心配しなくてもいいわよ。だって銀子ちゃんは料理に一番必要な物――そう、『ポイゾニックトキシン』をたっぷり込めて作ったんだもの」

 普通そこは、「料理は愛情」とか言うものなんじゃないでしょうか。ポイゾニックトキシンて何!? そのくっ付けたらいけない単語をくっ付けた造語は!? 絶対に料理がおかしくなった原因はそれです。

「食えるか! そんなもん」

「そんな……せっかくあくじのために作ったのに」

 銀子が涙ぐんだ瞳でこちらを見てきてとても心が痛むが、流石の俺も命は惜しい。堪えるんだ、自分。

「おいおい、アクジ。女の子が愛情込めて作ったものを粗末に扱ったらいかんぞ」

 なら、親父は食えるのか? ポイゾニックトキシンとやらの入っている料理を。目の前の親父を小一時間問い詰めたい。

「アクジ。食わず嫌いなんかせずに、全部食べちゃいなさい。口ねじ込むよ」

 と言いつつ、俺の口に暗黒物質ねじ込む母さん。そこに容赦など一切介入しない。

「あれ? 見た目こそ悪いものの、外はカリカリ、中はトロトロしていて素朴な甘さが後々追って口の中に広がっていく。これ割と食え……――ブゥホッ!」

 最初に美味しいと感じたのも束の間。そのあと急に意識が遠くなる感覚を味わって俺は慌てて口の中の物を吐き出した。

(あっぶねー。怖いわ! 今一瞬でスッと逝きかけたよ)

 楽に死ぬってこんなにも怖い感覚だなんて思わなかった。

 それでも俺の口の中には、まだあの恐ろしい毒物が残っていたようで、意識が遠のいて行った。


「……きて……じ」

「むにゃ、ん、なんだぎんこか」

 俺は眠い目をコスって瞼を開いた。

「あくじ。起きてる?」

 目の前に1センチの距離に俺と同衾どうきんしている銀子の顔があった。布団は1つ枕は二つ。

「お八重wふぁpkふぁd、ふぁ!?」

「ダウンしたあくじを快方するなら一緒にいいって、あくじのお義父とうさんとお義母かあさんが許してくれたの」

 自分の知らない間にコトが進んでいたら驚くよな? 俺だってそうだ。親父たち、何しとんですか?

 実際に見たわけでも無いのにイメージの二人は、揃って親指を上へ立てていた。

「さあ、あくじ私をあつーく火照らせて!」

 あんた、もう十分になってるよ。ちっとは落ち着けって。

「さあ、私との激しく燃えるようなヴェーゼを!

「ちょっ、こっちくんな」

 女に迫られる。男としては嬉しいシチュエーションなのだが、食い物当たって弱っている状況で来られても、ちっとも嬉しくない。

 ニジリニジリと迫る銀子を両腕で押しのけようとするのだが、ああ悲しきかな、そこはただの下っ端戦闘員と悪の大幹部、力の差は歴然だった。

「もう、逃さないからねウフフフ」

 ドがつく程のイイS顔俺に見せて微笑む銀子。俺がいくら説得をしても、銀子に反応を返すことはなかった。カンペキにトランス状態に入っている。

「い〜〜〜や〜〜〜〜」

 なすすべもなく、ただ銀子に襲われるだけなのを待つ俺には、悲鳴を上げるしかなかった。

 もはや祈ることしか俺にできることはなかったが、意外なことに神様は半分だけ願いを叶えてくれたのだった。

 ――パリン、ピシュゥ。

 突然窓から矢が入ってきて、その屋が俺の頬をかすってそのまま布団とその下の床に突き刺さる。

「さては、あくじをつけ狙う不逞の輩ね! 出て来い!」

 そういって銀子は部屋を出て行った。

「ふいー。たすかったー。――って、おっとっと」

 一難去ったことに緊張が抜けたが、よくよく考えると、俺目掛けて矢が飛んできていた事を思い出し再び気を張る俺。

「……こない?」 

 十分くらい警戒していたのだが、俺を襲ってくる気配は無かった。暫くして俺は布団に刺さった矢に付いているものに気が付いた。

「矢文か、これは」

 見れば矢には文面を記した紙が括り付けられていた。


「……っで、俺を呼んだのはお前らか?」

 矢文の内容は俺への挑戦状だった。後日、悪の組織アトスの屋上に呼び出された俺を待っていたのは、数日前に分かれた俺の元同僚たちだった。

「けっけっけ。来たようだな、山田アクジ」

 如何にも意地悪そうに笑うのが元同僚A。

「ふっふっふ。ビビッてもう来ないものかと思いましたよ」

 不敵に笑うのは元同僚B。

「くうぇっうぇっ。元気なお前が見れるのは今日で最後だぜ」

 発音の難しい奇妙な笑い声を出しているのが元同僚D。

 え、元同僚Cは……だって? 知らねっ!

「お前たち! 何が一体目的なんだよ」

 まあ、理由については大体察しがついているんだけど。

「けっけっけ、何を今更」「ふっふっふ、そんなの、あなたは既に分かっているでしょう?」「くうぇっうぇっ、オレたちはリア充がにくいのさ!」

 いえいえ、ここいらの毎日の生活は「リア充」なんかじゃなくて、「痢唖終」なんて字面に誤変換するぐらいにろくでもないものだぞ。

「うっせぇ、俺は昨晩、別にしようとは思ってなかったのに、お前のあまりのアレっぷりに思わず狙撃したんだからな!」

 昨日の俺を狙った矢はお前のものか。

「「我ら三人、ABD包囲網がアクジ! 貴様を討つ」」

 声が一つ足りてない。

「おいっ、DのやつがいないぞB!」

「あ〜、Dなら急に冷静になって『今度出撃する野郎をボコったら責任問題になるんじゃね?』と言って帰りましたよ。それじゃ、私もってことで後はよろしく頼みましたよA」

「待ってくれよ。一人かよ……しかたない。こういうのは程々に痛めつけときゃあいいんだよ!」

 一人だけになった元同僚Aが襲いかかってくる。

「かーくごしやがれぇい!」

「ゴメン、無理だ。そしてAよ」

「ん? なんだ?」

「――にげろ」

「はい? ――ごぇべぶっ!」

 Aの真横から凄い速さで氷塊がやってきたかと思えば、そのままAに命中。Aは氷塊が当たった勢いでそのまま屋上か落下していった。アーメン。

「Aぇー!」

 だが俺には、安心している暇などない。

「あ〜く〜じ〜」

 声のする方を見れば、悪の女幹部シニードリンのとして姿の銀子がそこにはいた。

「男同士……誰もいない屋上……手紙……破廉恥なこと」

 ブツブツ呟くワードを聞き取るに、何やらとんでもない勘違いをしていらっしゃるようだ。

「銀子お前はとんでもない勘違いをしている」

「勘違ぃ? 何処が勘違いって言うのよ。どうせ、男っきりの屋上で【検閲により不適切とされる文面があったため削除されました】とか、【検閲により不適切とされる文面があったため削除されました】とか、【検閲により不適切とされる文面があったため削除されました】な事までやるつもりだったんでしょ」

 お前どんだけ酷い勘違いを起こしていたんだよ! アレな話と勘違いしていると百歩譲って間違えていたことを許していたとしても、俺の予想の二百歩先を行く妄想っぷりだった。

「さあ、あくじっ! 私に捧げなさい!」

「ひいっ!」

 その日、俺はお尻を押さえながら一日中銀子から逃げ回っていたのだった。


 ――あくる日のこと。

 また俺のもとに矢文が届いた。文面は短くこう書かれていた、

『あんなコトで、俺らの鬱憤が晴れたと思うなよ! ――A〜Oより』

 俺は盛大に疲れた溜息を吐いたのだった。

 なんか時系列がバラバラですみません。一二三 五六です。四が抜けているので空白が大事です。「しがない」さんとでも呼んでもらっても私は一向に構いません。

 せっかく書いたのだからと、本編では描いていなかった同居話を番外編のこの場で出させていただきました。

「しょっぱなからあんな飛ばし方してたけど、大丈夫だよね? レギュレーションとかつけてないけど、これくらいならセーフのはず」と自分に言い聞かせつつ、内心ちょっとビクビクしております。

 これはヒドイ挑戦回だったと思う今作でした。

 本編の応援もお願いしつつ、それではまた会いましょう。

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