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奪憶異変―――破壊を止める運命

「危ねぇ!」


爆散。


「涼、右よ!」


「わかりました!」


斬撃。


「!?涼、右足に来るわよ!」


「『右足が破壊される』概念を破壊する!」


破壊。この全てが、フラン様のもつ攻撃法。しかも、全てが必殺級。一度当たれば、死を約束するであろう。


「くっそ、あっちはバカスカ撃ってくるのにこっちは迂闊に手を出せないってのはキツイですね!」


「同感よ。全く、下衆な手口ね。」


俺とレミリア様の二人は、互いに愚痴りあいながら、フラン様をどう対処すればいいか考えていた。


だが、フラン様は待ってはくれそうになかった。


「ッ、涼ォッ!」


「くっ!?」


レミリア様が叫んだ次の瞬間、俺の右横を紅い大剣が通り過ぎた。そして、共に接近していたフラン様の蹴りが俺の脇腹を蹴り飛ばした。


「がはぁっ!?」


「涼っ!?」


俺は吹き飛ばされながら、なんとか体勢を整えたが、身体が思い通りに動かなくなった。


「ちっ、レミリア様!回復に少し時間がかかりそうです!」


「分かったわ、すぐに来なさいよ!」


レミリア様はそう言って、紅い大剣を持ち、妖しげな笑みを浮かべるフラン様に紅い大槍を持って突進した。


「はぁぁぁっ!」


左から右へ紅く細い一閃が走り、それに合わせるように紅く太い一閃が降り下ろされる。その二つの一閃は一瞬だけ紅い火花を放ち、その余波でレミリア様とフラン様が吹き飛ばされる。


「まだま、だぁっ!」


次は音速を軽く超える突きをフラン様にくりだし、フラン様はそれを紅い大剣の腹で受け止める。

その瞬間、レミリア様の口がニヤリと笑った。


「食らいなさい………!」


紅い大槍の尖端から、更に紅いオーラが放たれ、フラン様が初めて顔を歪めた。


「これでどう………っ!?」


「嘘だろ………!?」


レミリア様と俺の顔が驚愕に染まる。そこには、全く無傷で、そこにたたずんでいた。


そして、その手に持つ紅い大剣を構え、


「がふ………っ」


レミリア様の身体を一瞬で貫いた。


「レミリア様ぁっ!」


俺は紅い大剣を身体から抜かれ、力なく倒れるレミリア様に俺は近付き、急いで貫かれた部分の処置を行おうとすると、レミリア様がこう言った。


「私は………構わないでいいわ………どうせ、回復するのだから………だから、涼。お願い………」


―――フランを、助けてやって。


「レミリア………様………っ」


そう言葉をこぼし、俺の中でナニカが膨らんでいくのが分かった。


(ああ………そうか、俺は………)


そして、手元にある蒼いフラタニティを握り締めた。


(ブチギレてんだ、こんなことになった元凶にッ!)


そして、俺の周りを、紅色あかいろの霧が覆い始めた。

俺からは見えないが、フラン様がこの霧ごと俺を破壊しようとしているのがところどころ破壊される霧のお陰でわかる。


「フラン様………貴女への最初で最後の反抗です………」


俺の周りを覆っていた紅色あかいろの霧が晴れ始める。それをフラン様は、何を思ったのか、何もせずに見守っている。


「俺は、貴女を………!」


そして、霧が完全に晴れ―――


「こっちに、連れ戻します!覚悟してください!」


レミリア様の片羽、咲夜さんの銀髪、パチュリー様の月のアクセサリー、小悪魔の紅い瞳、美鈴の帽子。そして、フラン様の宝石のような片羽を、いつもの執事服と共に身に付けていた俺が姿を現した。


「まずは………!」


跳躍。美鈴の能力、『気を扱う程度の能力』で気を地面に放出し、一瞬でフラン様の懐に潜り込む。


「美鈴、技借りる!」


美鈴の技、紅寸剄こうすんけいを繰り出す。それは見事にフラン様の鳩尾みぞおちに叩き込まれた。フラン様は苦悶の表情をしながら吹き飛ぶ。


「いきますよ、パチュリー様!」


魔力を練り上げ、剣を持っていない右手をかざす。パチュリー様の魔法、『サマーフレイム』。かざした手から、蛇のように火焔が吐き出され、未だ体勢が崩れたままのフラン様を襲った。

だが、この『サマーフレイム』は目眩ましだ。本来の目的は、準備に時間のかかるこのスペルカードだ。


「咲夜さん、借ります………!」


幻葬『夜霧の幻影殺人鬼』。フラン様が『サマーフレイム』を抜けてこちらに姿を見せた瞬間に解放し、紅いレーザーが何本もフラン様を撃ち抜く。だが、フラン様はまだこちらに向かって飛んできている。


「くそっ、早く落ちてくださいよ!」


向かってくるフラン様を、気を纏わせた蹴りでもう一度遠くへと吹き飛ばし、レミリア様のスペルカードを唱えた。


「神槍『スピア・ザ・グングニル』ッ!」


そして―――もう一枚。


「禁忌『レーヴァテイン』ッ!」


左手に紅い大槍を、右手に紅い大剣を持ち、フラン様が向かってくるのを待つ。

そして、フラン様がフラフラになりながらも、俺の前へと立ち塞がった。


「フラン様………終わりにしましょう。」


その言葉と共に、紅い大槍と紅い大剣を前に構えた。


フラン様が向かってくる。それは、本来なら速いはずのスピードが今の俺にはとても遅く感じられた。


「フラン様ぁぁっ!紅符『ハート・オブ・スカーレット』ォッ!」


俺は、紅い大槍と大剣を同時に振り切り、紅い斬撃を作り出し、その斬撃がフラン様に直撃した時、フラン様の頭が一瞬だけ、光った。


「………疲れた………」


フラン様が地面へと倒れるのと同時に、俺は、全身から力が抜けるのを感じながら意識を失った。

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