奪憶異変―――作戦会議―――永遠亭より
私、魔理沙、咲夜、早苗の四人は、何とか未奈斗達四人を見つけることに成功し、一度、永遠亭に戻ることにした。
「………霊夢、その話本当?」
「みたいね。ノレナって奴の話をそのまま言うとそういうことになるわ。」
「つまり、未奈斗達の負の記憶からそいつは生まれたってわけだな。ったく、はた迷惑な奴だぜ。」
「………すいません、私達のせいで………」
「別にあんた達のせいじゃ無いわよ。勝手に生まれたあいつが悪いのよ。」
しょぼくれる早苗に、私は頭をはたきながら言う。それについては同感のようで、魔理沙は早苗の背中をバンバンと叩き、咲夜は呆れて溜息をついている。
「おっと、漸く(ようやく)ついたようだぜ?」
魔理沙が言うと、永遠亭の外観が見えてきた。
「全員、揃ったわね。」
永琳は、ここにいる全員―――私、魔理沙、咲夜、早苗、未奈斗、涼、碧菜、紫幻を始めとし、他にチルノ、レミリア、小町、慧音、妹紅を見回して言った。
「霊夢達が出て行った後、永遠亭に射名丸文による襲撃があったわ。本人は、それを記憶としては覚えているが、自分の意志では行使していない、と言っているわ。一応、身体の自由は奪ってあるし、本人も抵抗はしていない。」
永琳が、淡々と現在の状況を連ねていく。私達全員は、それを一言も話さずに聞く。
「そして、本人に聞いた有力な情報として、元凶の潜伏先を入手したわ。」
「つまりは、奴さんの拠点、ってわけだな?」
「その通りよ、涼。潜伏先は、無縁塚。外の世界のものが時々流れ着く、彼岸へも近い場所よ。」
無縁塚―――私にあいつが話したことが本当ならば、これ程お似合いな場所などあまりないだろう。未奈斗達もそう思っているのか、少し顔がにやけている。
「そして、射名丸文の変貌度合い、涼の暴走、未奈斗や紫幻のコピーを創造………これらから考えられる相手の能力は、『記憶を操る程度の能力』よ。」
「永琳、質問。」
私は疑問に思ったことを永琳に聞いた。
「文の記憶を操って、そのように仕向けたことや涼の暴走は分かるわ。けど、どうやって未奈斗や紫幻のコピーを作ったっていうの?」
「簡単よ。自分の記憶にある、未奈斗や紫幻の姿、能力などを操って具現化させる。すると、コピーの出来上がり、と言うわけ。ただ、量産は出来ないみたいね。」
他に質問はある?と、永琳が聞き、無いことを確認すると、口を開いた。
「今から、ノレナ・ソーリッジの場所に行くけど、各地を襲撃しまわっている奴の事だから、私達が出払っている間に幻想郷の主要地点を配下にいるであろう妖怪達に攻めさせるわ。そこで、何人かに既に守りにつくように指示してあるわ。」
「何人かに?僕達からは出なくていいの?」
「ええ。とびっきり強力な方々に協力してもらえたわ。」
未奈斗の質問に答え、永琳はにやりと笑みを浮かべた。
「紅魔館にはパチュリーさん、美鈴さん。白玉楼は幽々子さん、妖夢ちゃん。永遠亭には姫様とてゐに。そして、人里にはリグルちゃんと風見幽香。この人員で行くわ。」
「か、風見幽香!?」
涼が声をあげて驚く。確かに、私も幽香が協力、しかも一回の蛍の妖怪であるリグルと共に人里を守るとは思えなかったからだ。
「八意。妖怪の山はどうなんだ?」
「あそこは碧菜と早苗ちゃんの戦闘やらでほぼ全員が居なくなってるから問題ないわ。」
紫幻の質問にも、淡々と答えた。
「………さて、皆。そろそろ向かわないと、あっちが痺れを切らして何か仕掛けてくるわ。」
その言葉を聞くと、私はお祓い棒を握り締め、魔理沙は八卦炉を取り出し、咲夜はナイフを指で回し始め、早苗は腰に結び付けた札束を握った。
「僕達も、準備しないとね。」
「おう、レミリア様も堪忍袋の緒が切れそうだしな。」
「私もここまでコケにされるとイラっとするしね。」
「………四季の代わりに断罪しても構わないな?」
未奈斗は服の中から大量の武器を取り出し、涼は剣の腹を撫で、碧菜は電気を身体に纏わせ、紫幻はスキマの中から大鎌を取り出した。
他の皆も、それぞれ何かを決心したような顔つきを見せていた。そこで、永琳が私に目配せした。後は任せた、と言うことね。
「皆………行くわよ!」
私が声を張ると、全員が飛翔し、無縁塚へと向かった。この戦いを終わらせる為に。
これが、最後の戦いになると信じて。
「あはっ♪愉しいなぁ………皆で来てくれるんだ♪」
無縁塚の中心で、鈴蘭の花に囲まれながら寝転びながら笑った。
「いいよいいよ。皆で来るといい。そして、絶望にうちひしがれた顔を見せてよね♪」
愉しそうに、愉しそうに、狂ったような笑顔がそこにはあった。