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奪憶異変―――模倣せし狂気―――紅魔館より



「くっ!どきなさい!聞こえないの!?」


私は見慣れた廊下を走り、妹様の地下室へ向かっている。だが、妖精メイド達が私の行く手を阻む。

しかも、その目は焦点があっておらず、快楽を求めているようにも思えた。


「さ………咲夜さ………ん………」


「ッ!!」


私が妖精メイドの相手をしていると、横から別の妖精メイドの声が聞こえた。その妖精メイドの目は、必死に自我を保とうとしているようにも見えた。


「どうした………のっ!」


「いきなり………ここに強、烈な………狂気が………っああぁぁぁっ!!」


「くっ、ありが、とう!」


自我が保てなくなったのか、この妖精メイドが襲い掛かって来たのを撃墜し、私は更に急いで妹様の地下室へ急いで行った。








少女移動中………








「邪魔よ!!」


私は紅魔館の廊下を疾走しているが、紅魔館の中が狂気で充満しているせいか、構造が変わってしまっており、分からなくなっている。


「それにしても………お嬢様とパチュリー様を永遠亭に置いてきて正解ね………こんな狂気の中にいたらお二方とももう狂気に呑まれているわね。」


私は人間だから何とも無い………いや、多少はきているが、大丈夫な領域だ。


「………!見えた、大図書館の入り口!」


私はその入り口を蹴破り、そこにいるであろう小悪魔を探した。


「小悪魔!いる!?」


そう叫んだように呼ぶと、本棚の間から、小悪魔がフラフラと現れた。


「小悪魔………大丈夫?」


「咲……夜さぁ………ん、たすけ………てくださぁぃ………」


そこには、焦点が完全に外れている小悪魔の姿だった。


「こあ………!」


「からだがぁ………ぞくぞくするんですぅ………」


「ッ!!」


小悪魔はそういって、鋭利になった爪を私に突き出してきた。


「誰かの体を切り裂くのがぁ………きもちいいんですぅっ!!」


「小悪魔ッ!!」


抑制が利かなくなり、小悪魔は私に爪で切り裂いてきた。








「あはぁっ………咲夜さぁん………」


「小悪魔………、正気に戻りなさいっ!」


先程から小悪魔の爪での攻撃………いや、もう斬撃と言ってもいい位の猛攻を受け続けており、その斬撃一つ一つが心臓や肺、内臓を狙っている。


「こんな時に能力が使えないなんて………!」


私の能力も、小悪魔が何かしらの波長を出しているのか、妨害されて使えなくなっている。


「早くぅ………ヤらせて下さいよぉ………!」


「!?スペルカードッ!?」


小悪魔が叫んだのを見ると、右手に小悪魔が持っていないはずのスペルカードを持っており、発動した。


「風符『ブリィズシュトローム』!」


「なぁ………ッ!?」


忘れていた。この子は、あくまで小"悪魔"だ。パチュリー様と同等レベルの力を持っていてもおかしくは無い。


「早くぅ………血を見せてぇ………くださいっ!!」


暴風、いや、暴嵐。強力すぎて、身を切り裂くような嵐が私を取り囲む。


「くっ………時符『プライベートスクウェア』!」


時が止まる。嵐が私の周りで止まり、この間に嵐の中を抜け、小悪魔に向かってナイフを設置させる。


「そして、時は動きだ―――ッ!!」


「咲夜さぁんっ、そんなことしないでくださいよぉ!」


小悪魔が凍りついた時を振りほどき、私を切り裂いてきた。


「くッ………どうしてっ!?」


「あんなの………悪魔の私にとっては解くのは容易いですよ!!」


「流石は………悪魔ってことね!」


この間に、嵐は爆散した。………本気で殺す気ね、小悪魔は。


「ふふっ………雷符『ヘル・ジャッジメント』ォ………ッ!!」


瞬間、私の足元から黒い雷がほとばしり―――


「危ないッ!?」


私が横に跳ねた瞬間、身を焼き尽くすような黒い雷が下から上へと立ち上った。


「まだまだですよぉっ!」


「くっ!?」


上に上った雷が空中で溜まり、そして、雨のように降り注いだ。


「サア………悲鳴ヲキカセテ下サイヨォッ………!!」


「くそっ………!?」


必死に避けている間、私は一つに雷の雨に掠ってしまった。


「あ゛ああぁぁあぁぁぁっ!!!」


「アハハハハハ!!ヤット聞カセテクレマシタネェッ!!」


「ぐっ、そぉっ………」


私は、とてつもない痛みに耐えながら、他に策が無いか模索する。


「くそっ………」


「アハハハハ………」


小悪魔は、恍惚とした表情を浮かべている。私は、そこにしか隙がないと踏み、一気に接近した。


「銀符『シルバームーンレイ』!」


私の突き出したナイフから何本もレーザーが放たれ、小悪魔の体を貫き、意識を刈り取った。








「はぁっ、はぁっ………」


私は、切れ切れになっている息を整え、気絶している小悪魔を机の上に寝かせた。


「強かった………こんなので、大丈夫かしら………?」


そう呟くと、今さっき机に寝かせたばかりの小悪魔が目を覚ました。


「あ………咲夜さん………」


「小悪魔、大丈夫?軽く本気で撃ったから………」


「だ、大丈夫です。それより………すいません。」


小悪魔は寝転んだ状態で、羽をペたりと地面に着けながら謝罪した。


「私………抑えられなくて。今は冷静なので大丈夫ですけど………」


「そのことはもういいわ。今は、この状況を何とかしないと………」


そう私が言うと、小悪魔は目の色を変えて話しはじめた。


「さ、咲夜さん!この狂気なんですが………涼さんなんです。」


「………なんですって?」


私は思わず聞き返した。これを、涼が?


「涼さんが紅魔館の地下を見に行った後、いきなりこの図書館に誰かが現れて………私は必死に止めましたが、突破されて、何とかしようと後を追うと………涼さんの頭に手を突き刺して、引き抜いた後、その侵入者は消えて………」


そこまで言うと、小悪魔は震え出した。


「涼さんが、いきなり強力な狂気を発して………それで、正気を失ってたんです。」


小悪魔は、そこまで言うと、脱力して机に身を任せた。


「今、涼さんは暴れています。咲夜さん、涼さんを止めてください………!」


「分かったわ。小悪魔、動けるなら、今すぐ門にいる美鈴をつれて永遠亭に行きなさい。お嬢様とパチュリー様がいるはずよ!」


「分かり、ました!」


小悪魔はフラフラと立ち上がると、直ぐに門へと飛んで行った。


「さあ、私ももう一仕事ね………!」


私は、大図書館の奥にある、地下への扉を探した。








「ここね………」


私の目の前には元、妹様の地下室へと続く扉がある。そこからは、私でも感じることの出来る狂気があふれ出していた。


「覚悟決めて………行くしかないわね。」


私は、その扉を蹴り飛ばし、地下室への階段を早く下りていった。








「なんでこんなところにも妖精メイドが紛れ込んでるのよ………!」


私が地下室への階段を下りていると、どこから紛れ込んだのか、妖精メイドの中でも強力な子達が階段に漂っていた。


「邪魔よ、どきなさい!銀符『スベカラズナイフ』!」


一瞬、時を止め、大量のナイフをバラバラに設置、発射して群がっていた妖精メイドを薙ぎ払った。


「まだいるの………!?時符『リバースクロック』!」


私の回りから長針、短針、秒針を思わせるナイフが全方向に時計回りに発射され、殆どの妖精メイド達を撃墜した。そして、私の目の前に今は意味を成していない封印陣が描かれている扉が現れた。


「ここね!」


私はその扉をまた蹴り飛ばし、中を確認すると―――


「グ………ア゛ァアァ゛ァッ!!」


狂気に呑み込まれた涼の姿が、そこにいた。


「涼ッ!聞こえてるの!?」


「ア゛ァ………咲、夜ザ……ン………ウ゛ァアァ゛アッ!!」


「涼ォッ!!」


涼の叫び声が、戦いの火蓋を切るトリガーとなり、死合が始まった。








「ウ゛ァァア゛ァッ!」


「くっ………隙が、無いっ!」


涼は狂ったように………実際、狂っているのだが、剣型の弾幕をあちらこちらに放出している。それが、考えていないようで、避ける事に意識を集中しなければ被弾し、そのまま切り裂かれるであろう弾幕になっている。


「グッ………!彩倣『セネギネラ5』ッ!」


「美鈴のスペルカード………っ!」


涼が放ったのは、美鈴のスペルカードの模倣。練度は低いが、殆ど再現されたその完成度に少し尊敬する。が………


「悪いけど………感嘆してる暇は無いのよ!」


弾幕が涼に向かって一瞬だけ縮む、その瞬間に私は翔けた。


「時符『プライベートスクウェア』」


時を止め、おびただしい量のナイフを涼に向けて設置し、駄目押しで更に抜けて来るであろうコースに弾幕を設置する。


「そして、時は動き出す―――」


「ガアァァアァァァッ!!」


フラタニティを振り、前方に設置したナイフを薙ぎ払うと、私に向かって特攻を仕掛けて来た。しかし、私が既に設置していた弾幕が発動する。


「―――『発動』。」


真下からのレーザーが涼走る涼に向かうが、信じられない反射神経で横にズレて避ける。が、


「『第二波、発動』。」


今度はズレた先に全方位から弾幕が高速で飛んで来るが、涼はそれを身を屈めながら避け、また特攻してきた。


「くっ………!?」


「アァ゛アァァアッ!幻倣『殺人マリオネット』ッ!」


「!!」


一瞬。一瞬で私の回りに大量の剣型弾幕が展開される。これは、私のスペルカードの模倣………!


「けど、甘いのよ!こうやるのよ!」


連続で飛来する剣型弾幕を避けつつ、私はスペルカードを取り出す。


「本家を………受け取りなさい!幻符『殺人ドール』!」


時がまた止まり、私に向かっていた剣型弾幕と、涼の動きが停止する。私はその間に涼の回りに何重にもナイフを投げ、涼の姿がナイフで見えなくなった頃―――


「そして、時は動き出す………」


時間を解放した。


「ウ゛ァアァァア゛ァッ!!」


涼の叫ぶ声と、肉を切り裂く音が血だらけの地下室に木霊する。そして、涼の声が止まり、ナイフも消え去ると、そこには、執事服はボロボロになり、傷だらけで、今にも倒れそうな涼の姿があった。


「涼っ………!」


「ウ……咲夜………サん………一、回………俺を………ッ!!」


涼は頭を抱えながら、最後だと思われるスペルカードを発動させた。


「ウアァァァァッ!!禁倣『ファイブ・オブ・アカインド』ッ!」


私の目の前には、涼の姿が五つ見える。しかし、涼の能力は『一度見たものをある程度模倣し、工夫して使用する程度の能力』のはずだ。なのに………


「何で、強化されてるのよ………っ!!」


これは、妹様のスペルカード、『フォーオブアカインド』の模倣のはず。しかし、目の前にある五つの涼は、全てが弾幕を放って来るから、逃げ場が無いに等しい。


「くっ………どうなっているのよ………!」


一瞬だけ。そのことに気を逸らした瞬間だった。


「あ、ヤバ―――」


私の右腕に、弾幕が突き刺さる。すぐに来るであろう痛みに備え、気を張るが、痛みが来ない。


「まさか………?」


それどころか、突き刺さったはずの弾幕は右腕をすり抜けている。そこで、すぐに分かった。


「本物以外は、幻影ね。」


私は霊力を解放し、その余波で全ての幻影を消滅させる。残るは、本物の涼だけだ。


「終わりよ、涼!『ミスディレクション』!」


私が放った弾幕は、涼の意識を一撃で刈り取っていった。

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