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奪憶異変―――改変されし暴風―――永遠亭より

私は永遠亭で預かっている三人とうどんげを部屋で寝かせ、てゐに兎に指示を出すように言い、そのまま私の部屋へ向かっていた。目的は、昔に使うのを止めた、月の道具を取りに行くためだ。


「月の道具なんて………もう使わないと思っていたのだけどね………」


今回は、それほど警戒しなければならない。なぜなら、記憶を奪ったのは、四季映姫以外はその者に親しい者の姿をしていた。ここから考え出されるのは、自分や他人の記憶を奪え、更に使用できるのではないかと私は推測した。そうであるなら、かなり厄介である。


そうこう考えている内に、既に部屋までたどり着き、月の道具………私が月にいた頃に使っていた弓を取り出した。


「………私達を受け入れてくれた幻想郷を潰させはしない………!」


そう言った時だった。


「お師匠様!大変です!」


「どうしたの!?」


てゐがもの凄い勢いで私の部屋に入って来たので、私は柄にも合わず大声を出してしまった。


「さっき、兎達から連絡があって、ここにもの凄い数の妖怪が迫ってるらしいです!」


「何ですって!?」


もうここを嗅ぎ付けたのか!?早過ぎる………!


「チッ………!てゐ!人里へ向かって慧音と妹紅を連れて来なさい!迅速かつ隠密に!」


「了解!」


てゐが今まで見たことが無いくらい素早く行動する。やはり、ここに長く住んでいたというキャリアがある。やる時はやる奴だ。


「さて、私は………敵を食い止めますか。」


私が部屋を出ると、そこには真剣な顔をした姫様が立っていた。


「姫様………」


「永琳、私も連れて行きなさい。いくら私や永琳が不死だと言っても、護り切るのは一人では無理よ。」


「………分かりました。姫様、行きますよ!」


「ええ、私達に喧嘩を売ったのを後悔させるわよ!」








少女移動中………








「壮観ね………」


「本当。ま、たかが烏合の衆。私達の相手じゃないわ。」


私達の目の前には、数百匹の大小様々な妖怪達がこちらに向かっているのが見えた。


「さあ、行くわよ永琳!」


「分かりました!」


私は弓を構え、姫様は豪華に飾られた一本の枝―――蓬莱の玉の枝―――を取り出し、逆手に構えて妖怪に近付いていった。


「多けりゃいいってもんじゃないわよ!」


蓬莱の玉の枝を持った姫様は迫り来る妖怪をすれ違い様に首を撥ねる。永遠と須臾を操り、妖怪達の時間を長く、姫様の時間を短くしている為、妖怪達にとっては、気付けば、死んでいた様に思えるのだろう。


「永琳、後ろ!」


「言われずとも分かっていますよ。」


そういうと同時に、私は矢を真後ろに向かって突き出す。すると、私を後ろから襲おうとした一匹の狼型の妖怪が息絶えた。


「それにしても、数が多いわね………やっぱり頭を叩く?」


「私もそれに賛成です。姫様、私が行きますので、ここの足止めをお願い出来ますか?」


「愚問ね。さ、行きなさい!」


私は、姫様の指示があった直後、ある程度の速さで妖怪達の隙間を縫って飛びはじめた。しかし、大量の妖怪達は、直ぐに私を包囲するように動き始めた。


「チッ………どきなさいよ!」


「なら私達の出番だな。」

「全くだ。」


私が叫んだ瞬間、包囲した妖怪達の半分が焔に焼かれ、半分が妖力と霊力が混じった弾幕により消え去った。


「お前らに手を貸すのは正直あんまりいい気はしないが、幻想郷の為だ、協力すてやるよ。」


「妹紅!………何時も世話になっているからな。ここで恩を返さなければいつ返すというんだ?」


そこには、私がてゐに呼んで来させた、妹紅と慧音がいた。


「二人とも、助かったわ。」


「で、お前は頭を叩くんだろ?なら、私達が道を空けてやる。」


「私達はその後、護りに入る。存分にやってこい。」


「………分かったわ。ありがとう、二人とも。」


「はっ、感謝してる位ならさっさとぶっ飛ばしてこい!」


「行くぞ!」


妹紅と慧音が、同時に大量の弾幕を放ち、私の進む道が出来上がった。


「行け!」


「ええ!」


私は最高速度でその道を進んで行った。とてつもない、嫌な予感をしながら………








少女飛行中………








私が、開いた道を飛んでいくと、不意に大量にあった妖怪の気配が無くなり、一つの大きな気配だけが感じられた。多分、頭だろう。


そう思って、気配がした方向へ三十秒程飛んだ時、私は頭を見つけた。


「へぇ………貴女だったわけね。ここへ妖怪をけしかけたのは。」


「何故私と決め付けるんですか?他にもいるじゃないですか。」


「けしかけてない妖怪が殺気を漏らすとでも?」


「………まあ、ばれたものは仕方ないです。私は、あの方の手伝いをするだけ………」


「そう………なら、覚悟することね。大丈夫、後で拷問に掛けるから生かしはするわ。」


「あやややや。それはご勘弁願いたいですねぇ!」


里に一番近い天狗―――射命丸文が、歪んだ笑みを浮かべながら浮かんでいた。


「さあ、楽しませてくださいよ!」


「お前に楽しむ暇などないわ。一方的に嬲ってあげるわ。」

文は最初から物凄いスピードで私に近付き、扇子で切り裂こうとするが、私はその扇子を受け流し、がら空きになった横腹に霊力を込めた掌底を叩き付けた。


「ぐふっ………流石は永遠亭の薬師、強いですねぇ。」


「お前と生きている年数が違いすぎる。それも分からなかったのか?」


「いえいえ、まだ想定内だということですよ!」


次の瞬間、文から禍禍しい妖力が発され、私は危険を感じてその場を離れた。


「とりあえず、肉片になってくださいねぇっ!暴風『アヤカシカマイタチ』!」


先程まで私がいた場所に、無数の妖力のこもった鎌鼬か襲う。あのままあそこにいれば、間違いなく肉片になっていた。


「へぇ、避けますか。」


「妖力だだ漏れよ。そんなものじゃ当たるわけないわ。」


そう一言忠告してから、私は文へと即座に近付く。さあ、反撃よ。


「まあ、吹き飛びなさい?薬撃『ニトログリセリン』。」


強力すぎる爆薬を、文の腹に思い切り叩き付ける。私は結界を張っているから大丈夫であろうが、文は大ダメージを受けたはずだ。


「がはっ………まだ………まだ………!」


「いい加減堕ちなさい。」


まだ意識があるとは思わなかった為、少し驚きながら、直ぐさま真後ろに回り、首筋に手刀を放ち、意識を刈り取った。


「………さあ、拷問の準備ね。」


妖怪達は、頭がやられたと知ると、一目散に逃げ出し、永遠亭の危機は免れた。


「本当、頭がいないと何も出来ないのね………ん?」


文の頭が淡く発光し、すぐに収まった。何だったのだろうか………
















「………っ、こ、ここは………」


「お目覚めかしら?」


文が意識を取り戻した為、直ぐさま問いただす事にした。


「永琳さん、これは………」


「お前に話す権利は無いわ。私の言うことだけに答えなさい。」


「ッ!」


殺気を込めて言うと、文は顔を恐怖に染めて首を上下に振った。


「お前の言っていた、あの人、とは誰だ?」


「あの人?そんな事言ったこ………!!!」


いきなり、文の様子が急変し、痙攣を起こしたように震え出した。


「あ………ああ………!これ………私、が………!?」


「文!?どうしたの?」


「嘘だ………嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁ!!」


文は頭を振って暴れ始め、辺りにあった薬品を何個も割ってしまう。


「チッ………仕方ない!」


暴れる文を、また手刀で意識を刈り取り、今の行動について考えた。


「今のは………本当に錯乱していたわね………」


今のは、本当に何だったのだろうか………まさか………!


「いけない………!妹紅!そこにいる!?」


「ああ、どうした?」


「すぐに霊夢達をここに連れ戻して!最悪のパターンよ………!」


「っ!分かった!」


妹紅に話すと、私も連れ戻す為に動き始めた。お願い、間に合え………!


「『記憶を操る程度の能力』なんて、強すぎる………!」

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