永夜異変―――剣と弓と短剣と
またもや薬師が出現します。
涼side―――
俺は咲夜さんが復活した後、永遠亭を目指し飛んでいるが、その邪魔をしようと武装した兎が物凄い数で向かって来ている。
「邪魔だ!時符『リタルダンドタイム』!」
俺はスペルを発動させ、時が止まる寸前まで遅らせ、武装した兎に弾幕を降らせた。
「そして、時は戻り出す………」
どこぞのキャラの真似事をしながら時遅れを解除すると、兎達には一瞬で現れたように見えた弾幕が襲い掛かり、大半の兎を撃ち落とした。
「まだ残ってるじゃない………メイド秘技『殺人ドール』!」
次はまた一瞬でナイフが残った兎の周りに現れ、残った兎が針山状態になって落ちていく。
「よしっ!」
「さっさと行くわよ!」
俺達は兎を撃退し、兎がやってきた方へスピードを上げて飛んだ。
少年少女飛行中………
スピードを上げてから数分、俺達は永遠亭の前へと辿り着いていた。
「ここか?」
「見たいね。後………またお出迎えがあるみたいね。」
咲夜さんが言うと、永遠亭の扉がゆっくりと開き、俺にはとても見覚えがある姿が現れた。
「あら………今日は来客が多いわね………」
「そうなのか?ま、俺達が今日最後の来客だから気にするなよ。」
「その通りよ。さ、ここを通してくれないかしら?」
「それは無理な注文ね。どうしても、と言うなら………分かってるわよね?」
そこには、真剣な顔をした八意永琳が立っていた。
「さ、二人纏めてでもいいわよ?」
「なめられたもんだな………行きますよ、咲夜さん!」
「任せなさい、時符『プライベートスクウェア』!」
咲夜さんのスペルが発動し、時が凍りついた。
咲夜side―――
私は、時を止めた後、あの女を観察した。
(あの女………見た目は若いが、かなりの手練れ。まずは背中に持っている弓を取らせないのがいいか………?)
思考を巡らせ、女の背後にナイフを十数本投げ、時を動かした。
「甘いわね。」
そう、一瞬だった。一瞬で弓を取り、背後を見ずに全てのナイフを矢で撃ち落とした。
「嘘でしょう………!?」
「呆けている暇があるかしら?」
またも一瞬で間合いを詰められ、蹴りが鳩尾へと放たれたが、涼の剣がその攻撃を防いだ。
「そっちこそ甘いぜ!」
涼の姿がぶれ、あの女を剣が捉えたように思えた。
「危ないわね………二人して時間を操るんじゃないわよ………」
「「!!?」」
女はまた瞬間的に移動し、攻撃を回避しただけではなく、私の能力を言い当ててきた。
「あら、図星ね?まあ、まだ全く本気ではないから、全然大丈夫なんだけどね。」
「嘘………」
あんなに速い、いや、疾いのに、まだ本気ではない。そう言われて、私は柄にもなく膝をつき、涼も信じられないという顔をした。
「ふふっ………絶望したみたいね。今のあなた達、さっきの来客より無様よ。」
「…………」
「るっせぇ………」
「………情けないわね。さっきの来客は、あなた達と同じ人間なのに、諦めずに私に挑んで来たわ。」
「知るかよ………そいつは、なにか自信があったんだろ………」
「あなた、本当に駄目ね。………もういいわ、やられなさい。」
女が涼の頭へ蹴りを放とうとした瞬間、私は時を止め、足のすぐそばでナイフを構え、時を動かした。
動かした瞬間、甲高い音がなり、足とナイフが激突し、ナイフが何処かへと飛んで行った。
「まだ………終われないわよ………お嬢様の望みを叶えるまでは、終われないわよ!」
「ふふっ………そうね、そうこなくちゃ。さあ、本気の私の攻撃、受けてみなさい!」
女が言うとほぼ同時に、矢が空から大量に降ってくる。それを避けていると、次は女からの連射が、私の避ける方向に飛んでくる。
(時止めはもう使えそうにない………涼はもう駄目、なら、私の集中力が切れた時が最後………!)
既に私は五分以上避けつづけ、集中力は限界に達していた。
「はっ………はぁっ………!」
「………終わりよ。」
私が降って来る矢を避けた瞬間、女から放たれた矢が腕に刺さり、私は意識を手放した。
涼side―――
俺の目の前で、咲夜さんがやられ、呆然としていると、永琳が目の前までやってきて、話し掛けてきた。
「………あなたは十分強い。だけど、それを消してしまうほどに精神が弱い。もっと、強くなりなさい。あなたの主人を守る為にも、必要なことよ。」
そう言って、永琳は永遠亭へと入っていき、俺は外で立ち尽くしていた。
ぽつりぽつりと降ってきた雨が、俺を慰めるような気がした。
涼「うわぁ、もう最悪だ俺。」
作「基本的に涼君はこういうセンチメンタル的なことを担当します。そして、今回は短いけど中々の出来だと自負してみたり。」
涼「それは無いな。さ、次はどうなんだ?」
作「次話では、事後のお話です。そして、物語は動き出す………」
涼「次話もお楽しみに!」