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モノクロの世界で、愛を語る  作者: 一色 サラ


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01

 朝代あさしろ陽菜ひなは指定された店に入った。相変わらず、駅まで迎えにも来てくれず。チェーン店の『スモール バックス』に呼び出された。

 カウンターでカフェラテを受け取り、相手の様子を見ながら席に腰をかける。相手が何かを言うのを待った。が、陽菜に気づいていないのか、何も言って来ない。こっちを見ることもなく、ただスマホを触っている。

「ねえ、健介けんすけ、話って何?」

健介が頭を上げて、陽菜の方を見た。驚いている様子もないので、来ていたことにすでに気づいていたのだろうか。

「ああ、もう来たんだ。」

もうって何?と言いたくなった。それを抑えるために鼻から息を吸い込んで、頭の中に空気を送り込んだ。

「で、話って何?」

出た言葉がそれほど、思っていたのとあまり変わらなかった。

「何怒ってんの?」

 話があるのなら、早く言ってほしいという気持ちが焦ってしまっている。

「別に怒ってないけど、仕事帰りで疲れてるんだからしょうがないでしょう」

「そうなんだ…。で、さあ…」

 歯切れの悪い。

「何?」

「好きな人にできたんだよね。」

 平日の夜8時、cafeの一角のテーブルで、向かいに座っている河野こうの健介が口角を上げて言った。

 陽菜は呆れた気分で健介の目を凝視する。何を言っているのだろうこの男はと呆れた気持ちが溢れてくる。別れたいのなら、はっきり言えばいい。

 仕事終わりの疲れた状態で、陽菜はここにやって来た。プライベートな時間で、頭を使うことなどしたくない。ほしい答えが聞けない状況に、疲労が蓄積してくる。

 今も大学に通って、学生気分の抜けない健介の悪気のないの態度に呆れ以外の言葉が生まれてこない。別れを切り出さないのであれば、この関係が自然消滅すればいいと陽菜は思っていた。だから、ここ1年ほど、ほとんど陽菜から連絡をすることはなかった。なのに、健介は、月に1、2度は連絡をしてきた。

 で、今日だ。『大事な話があるから、会えないか』と連絡がきた。やっと別れの言葉を切り出してくれるうだと思っていたのに、何かが違っていた。

 健介と高校2年の時から付き合い始めて5年が過ぎようとしていた。陽菜は短大を卒業してアパレル系の出版社に就職した。社会人なって2年目になる。22歳なっても大学生のままの健介とはすれ違い気味なのは分かっていた。

 頑なに笑顔を崩さず。陽菜の返答を待っている健介。

「だから何が言いたの?」

 白けた気持ちで、陽菜は言った。改めて、やっぱり好きだった気持ちは終わっているんだなと感じてしまった。

 仕事が帰りに時間を作ってほしいと呼び出してきのは健介だ。だったら、はっきり言ってほしい。

 疲れ切った仕事帰りに、何も食べず健介と対峙して、呼び出されて、ただカフェラテを一杯を飲んでいる。この状況に違和感を感じてしまった。だんだんお腹が空いていくのを感じてしまう。

 やっぱり社会人と学生の立場では何かが違う気がしてきた。男性の礼儀として、レストランなどに連れて行ってほしかった。関係が終わっていても、礼儀としてやってほしかった。

「だから、陽菜はどう思う?」

 陽菜は、どうしても健介を睨むしかなかった。違う女性の存在をちらつかせくることに無神経さを感じる。それに、別れを切り出したいのであれば、どこかで謝罪というか申し訳いという気持ちが少しでも健介にあると思っていた。それが微塵もないことに、陽菜は怒りより不愉快さの方が増してきた。

 本当に別れたいのなら、はっきり言ってほしい。振られたくはないけど、《《別れたい》》という言葉を陽菜からは言わない。どことなく健介の思惑通りになってしまうような気がして嫌だった。


 目の前でもじもじと、陽菜が何かを言うのを待っている。呆れと虚しさで、的確な言葉が生まれてこない。

「どうも思わないけど....」

 声がこもっていく。それに、どうしても適当な言葉しか口からに出てこない。

「でも、何かあるでしょう。別れたくないとか、浮気は許さないとかあるでしょう」

「何それ…」

 健介との関係が冷めきいるので、終わらせたいことは分かっている。だから、《《別れたい》》のなら、はっきり『『別れたい』』と言ってほしいのだ。言わないなら、何もせずに自然消滅してほしかった。なんで、わざわざ、会って別れることを宣言しないといけないのだろう。そして、遠回しに、なんで陽菜に別れを告げさせようとするのだろう。

「はっきり、言えば」

「だから…僕が陽菜以外の女の子に告白したことどう思う?」

まだ、話を長引かせようとする。どうしたいのか分からなくなってきた。別れたくないの別れたくないのか、よく分からないことを言われているようで、だんだん頭が混乱してきた。学生気分な健介の態度に腹が立ってくる。

 ただ、話を長引かせてまで、この場所に居たくなかった。

「別れたいってこと? 」

 虚しさと怒りが混ざったよう気持ちが声に籠った。

「陽菜が言うなら、別れよう」

「別れたいなんて、私は一言も言ってないけど」

「でも、僕と別れたいでしょう」

 やっぱり健介は自ら別れを告げたくなかっただけだったんだ。陽菜は思い過ごしだったらいいのにと思っていた。陽菜に別れを言わせようとする健介に、呆れた気持ちが全身に感じる。健介の言葉は責任感のない言い訳にしか聞こえなくなってきた。ここにはもう居たくない。陽菜はコートを着てた。

 「分かった。じゃあ、元気でね」

 椅子から立ち上がって席を鞄を肩にかけて、テーブルから離れて行った。健介は引き留められることもなく、追いかけてくることもなかった。そのまま店を出た。呆気なく、終わってしまった。

 12月に入って、寒空を見上げて、白い息が広がった。コートのポケットに入れているスマホの音が聞こえてきた。画面を開くと、健介から『ねえ、僕らって別れたんだよね』と文字が表示された。既読もせず、健介のアカウントも削除した。 

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