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S-77 「言うな、ゼク。それは私も反省している」

挿絵(By みてみん)

黒の監視団の幹部たち(左から、ゼク、ミセイラ、スノゥシャ、ヨークス、ビヴォール)

バイレスリーヴ/地下/拠点ウーガ・ダール【視点:世界(観測者)】


 二日後の深夜。


 都市の喧騒から隔絶されたバイレスリーヴの地下深く。諜報ギルド、《黒き監視団スカル・ズーヴ》の新たなアジト。


 常闇の神、デヒメルの石像が見下ろす円卓には、この組織がこの地方一帯に根を張った各拠点の長である《常闇の影》たちが集結し、張り詰めた糸のような厳かな雰囲気が漂っていた。


 円卓の主席に着き、デヒメル像に静かな視線を送っているのは、常闇の影の一人であり、バイレスリーヴ都市拠点を任されるダークエルフ、ディナリエル。


 彼女は、長きにわたりこのギルドに所属し、影からバイレスリーヴを支え続けてきた。


 平和な時代が続いた現在、その活動を「表の仕事(衛士長官・医師)」に割いてきたが、近年の緊迫した情勢を受け、組織力の抜本的な強化を図ろうとしている。そんな彼女こそが、今回の幹部会議《美しき夕部》の発起人だ。


 そして、その後ろには、都市拠点で唯一の執行者である《常闇の手》、ルガルフが控えている。


 ディナリエルの対面に堂々と座るのは、全身を暗緑色の硬質な鱗に覆われたリザードマン。

《潜伏の毒棘、ゼク・ヴェン》。


 彼はバイレスリーヴの中で、西岸との唯一陸路が繋がっている通行の要所《巨大海門》の東岸関所を含む、南西方拠点を統べる常闇の影だ。


 彼の様なリザードマンは、この人知の平原では非常に珍しい存在だ。街中で見かけることはほとんど無く、闘技場の剣闘士や野盗、奴隷労働者として稀に姿をみるくらいだ。


 彼等リザードマンの多くは、ライカンスロープやエルフが棲む帝国北東の大樹海の、更に北に広がる不毛の地《黄泉砂漠》に棲んでいる。


 ゼクの後ろに控えるのは、南西拠点の《常闇の手》筆頭。目深に被ったローブから覗く顔半分が、赤黒い痣に覆われた不気味な魔術師、《醜女ミセイラ》。


 ゼクの右隣に座るのは、中央拠点の改修を行っているドワーフ。《闇鍛冶、ビヴォール》。


 彼はバイレスリーヴの、最も帝都に近い南東地方を監視する常闇の影だ。


 かつては都市拠点において、ディナリエルの下で《常闇の手》として任務に従事していた。しかし、10年前に南東拠点が置かれている村で起こった「ある惨事」により、その地域を担当していた常闇の影とその拠点が壊滅したため、彼が代わりとして常闇の影に昇進し、拠点を持たず根無し草のように当該地域を担当している。


 なお彼は、ドワーフであること以外に、突然変異型の《吸血種》でもあり、陽の光に弱い事から、日中の行動は制限されている。


 そのビヴォールの向かいに座るのは、青白いきめ細かな鱗の肌をした、上半身が人間の女性、下半身が大蛇の姿をしたナーガ。《白鱗の祈祷師、スノゥシャ・アルワハル》。


 彼女はギルドで最も広範囲を管轄する中央・北東拠点を統べる常闇の影。彼女の様なナーガは、《人知の平原》ではリザードマンと比較して更に希少な存在で、占い師として僅かにいる程度。種族として、星の動きから未来を予測する「星読み」に長けている。


 その多くは「概念の彼方」との境界である、黄泉砂漠に棲んでいる。スノゥシャ・アルワハルの背後に控えるのは、ボサボサの髪に、白目が見えないような小さな目をした、背丈が異様に高く手足が長い男。中央・北東拠点の《常闇の手》の筆頭、《怪人ヨークス》だ。


 以上、全ての拠点の常闇の影と、常闇の手の筆頭が集結した。他と比較し、最も豪奢な装飾が施された空席の一つを除き、全ての円卓の椅子は埋まった。


「組織の金……酒に消える……」


 ゼク・ヴェンは、新たな拠点の内装がビヴォールに手がけられたことを察し、低く物々しい声でディナリエルに異議を申し立てた。その声は、湿った岩が擦れ合うような響きを持つ。


「言うな、ゼク。それは私も反省している」


 ディナリエルは分の悪いその話題を早期に終わらせる。


「1、2、3……4つ目の星が、お嬢の軌道に入ったようじゃ。過去、闇に落とした星より、今宵の輝きは永続する運命か?それとも次の巡りで潰えるか?」


 スノウシャはルガルフに続き、部屋の隅に控える新参のイルに視線を移し、留めた。その蛇の瞳が、細められる。


「………ヴュールだ。彼女は」


 その言葉に、空気が凍りついた。ゼクとミセイラ、スノウシャとヨークスは、彼女に向かって今にも襲いかからんと言う程に殺気立った。鱗が逆立ち、魔力が膨れ上がる。


「ビヴォール!」


 ディナリエルは彼を睨みつけ、場を制する。


「皆が言いたいことは分かる。彼女については、もちろん後で説明する。だが、もっと優先して行うべきこと、そして皆に伝え、判断を仰がなければいけないことがある」


 ディナリエルの言葉は、その場しのぎではない、長年この組織を牽引してきた者としての、一種の迫力を秘めていた。それを感じ取った皆は、渋々ながらも、それぞれの殺気を収め、彼女に向き直った。


 イルは大げさに胸をなで下ろし、小さく「良かった」と呟いた。


「まずは……皆にも伝わっているとおり、我々が忠誠を誓っていたエドワルド様が死去し、その息子であるオリアン・ワードベック様が新たな元首となられた。今日ここで、忠誠の儀を執り行う」

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