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5話 処刑

 あの後、すぐに体育館に向かった。場所自体は一切変わっていなかったから、すぐに着くことができたが、内装が少し変わっていた。


 壁付近に所々謎の機械が置いてある。使用用途はよく分からないが、少なくとも、前までは無かった。というか……外からの見た目に対して、内側のほうが広い気がする。


(この場所には空間系の祝福によって、拡張結界が張られている。それの影響だろうな)


 オフィリアがそう教えてくれる。そんな事もできるのか。てっきり、炎を出したりするだけの物かと思っていたのだが……


(祝福には、大まかに分けると3つの分類がある。戦闘、支援、そして概念。この結界は支援系の中の、空間操作に該当している)


 オフィリアが説明してくれる。なるほど。ちなみに、俺の祝福はどこに該当して……


「やっと来たか。このクソゴミが」


 俺が質問しようとしたタイミングで、そう声をかけられる。廉也のやつだ。明らかに殺気立っていて、今にも殴りかかっていそうな雰囲気がある。


「今すぐにでもブッ殺してやる。」

「おいおい、お前に出来るのか? さっき何も反撃出来ずに、一発もらっていたのに?」

「あ? ラッキーパンチ程度で調子乗んなよ。お前なんか俺が本気を出せば一息で……」

「お前らそこまで! 授業始めるからさっさと来い!」

 

 ステージ前にいた担任が、こちらに向かって叫んでくる。どうやらもう授業が始まる時間になってしまったらしい。


「チッ、すぐにでも殺してやるから待っとけよ」


 そう言って廉也は離れていった。ここで、ボコしても良かったが、それだとあまり意味が無い。なるべく大勢に見せつけた上で倒さなければ、俺の立場が改善されない。よし、俺も行くか。


 


「えーこれから授業を始める。知っての通りだが、この授業は祝福を使った試合形式の物だ。まぁ普段からやってるから問題ないだろう。もちろん、支援系の奴は不参加だ。観戦しててくれ。戦闘を見るのも一種の勉強だ。実践でサポートする時に役に立つからな」


 どうやら授業が始まるらしく、担任がそう言った。クラスメイトたちは静かに整列していて、俺もその中に並んでいる。その中に霜月もいて……て、何でずっとこっちを見てるんだ?


 何やらこちらを不安げに見ている。どうしたのだろうか。もしかして、さっきの件で嫌われたのだろうか。確かにやり過ぎた気もするが……


「それじゃあ、準備してくれ。武器はそこにあるから好きなものを選んでいい。ただ、普段携帯しているものは使うな。これは平等性を加味するためだ」


 そう言いながら、担任は空間から大量の武器を取り出してきた。そんな事もでき……いや、っていうか前にオフィリアやってたよな。


(そうだな。で、お前は何を選ぶ? やはり剣か? 初心者にも使いやすいだろうしな。 まぁ、弓などの遠距離武器でもいいが、お前の場合は祝福が再生だからな。 近接のほうが合っているだろう)


 オフィリアのテンションが、なにやら高い気がする。お前、武器とか集めるのが趣味だったりするのか? 集めたいと言っていた物も武器だったよな?


(……武器を見るのが好きなのは否定はしないが、あれが欲しいのは別の理由だ。教える気はない。)


 前も言っていたが、自分に都合の悪い事はスルーするよなこいつは。それで、俺はどの武器にするか。


 今、床には大量の武器が落ちている。剣、槍、オフィリアが言っていたように弓などもあるな。どうしようか……


 他の生徒達は一部を除いて、もう選び始めている。選んでいない生徒は支援系なんだろう。そういえば、霜月は何を選んでいるんだろうか。


 そう思い、霜月の方を見てみる。武器を色々とじっと見ていて、どうやら少し悩んでいるらしい。


 霜月はある程度、悩んだあと、何かを見つけたようで、一つの武器を手に取った。あれは刀か? やはり剣よりは刀のほうが使い慣れているだろう。


(ほぉ、珍しい物を選んだな。この世界であまり刀は流通していないからな)


 そうなのか? それはいったいどうして……


(そんなことはいいからさっさと選べ。周りはどうやらもう終わったらしいぞ?)


 慌てて周りを見てみると、いつの間にかクラスメイトは武器選びを終えて、準備運動をし始めていた。いくら何でも武器を選ぶのが速い気がする。


(こいつらは常日頃から、似たような事をしているのだろう。そもそも前も言ったが、ここ自体がそういう場所なんだよ。だからお前もさっさと選べ)


 そう言われて俺は悩む。そもそも、元の世界ではただの一般人だ。鍛錬で剣には触れたがあまり向いていそうでは無かった。だから、どれを選べばいいのか全く分からない。


(なら勘で選べ。お前の祝福は再生だからな。ならば、不良に啖呵を切った時と同じように、死ぬ気で行って何も問題はない。それに、この空間には空間拡張と同じように、生存補助もかかっている。)


 なるほどな。じゃあ……


 俺は目についた物を選ぶ。槍だ。なんとなくこれがいいと思っただけだが、なぜだか手にあっている気がする。


(槍か……いいんじゃないか? では、お前も準備してこい)


 あぁ。そうさせてもらう。そうして、俺はクラスメイトが準備運動している場所に向かった。







「お前ら準備運動終了しろ。今から試合始めるぞ」


 15分ほど経っただろうか。普通に準備運動をしていたら、担任がそう言ってクラスメイトを集めだした。

俺もとりあえず向かっていく。


「全員集まったな? じゃあ今から始めるぞ。試合するやつ各々決めろ」

「先生ーその前に少しいいですかー?」

「ん? 廉也何だ?」

「試合始める前に、こいつ殺してもいいですかー? 他の奴もしたいらしいですし……同時にしていいすか?」

「……まぁいいだろう。奏翔、こっちにこい」


 廉也がニヤニヤそう言って、担任も許可を出す。ついに始める気か。というか、複数かよ。サシで戦う気だったのだが、相手はそうもいかないらしい。これでは試合というより、集団リンチだな。そう思いつつも、俺が向かって行こうとすると……


「先生! 私も試合に参加していいですか!」


 霜月が突然、そんなことを言ってきた。助けてくれるつもりなんだろう。だが……


「駄目だ」

「何故ですか!? 多対一はどう考えても不公平です!」

「でも、お前は強すぎるからな。パワーバランスが合わなくなるだろ? 黙って見てろ」


 担任に一蹴される霜月。まぁ、そりゃそうだろう。こいつらは俺の事をよく思っていないだろうかな、なるべく見せしめにしたいんだろうから、霜月は邪魔でしかない。


「霜月大丈夫だ。そいつの言う通り黙って見ててくれ」


 俺はそう言いながら、前に出る。


「いや、でも……うん。分かった。無理はしないでね?」

「あぁ。……先生、試合するのは構わないが、その前に一つ質問いいか? この場ではどのくらいの怪我なら何とかなる?」

「そうだな……腕の切断ぐらいなら何とかなるだろう。結界だけではそのぐらいだ」

「分かった」


 一応担任に確認しておく。万が一死なれたら困る。


「おいおい、いいのか? 助けがいらなくて。お前一人だと本当に死ぬぞ?」


 廉也は他の奴と笑っている。他に生徒は6人か、てっきり戦闘系の祝福持ち全員でかかってくるかと思っていたんだが……はっ。怖気ついたか?


「お前ごときに心配される筋合いはねぇよ。御託はいいからさっさとかかってこい」

「はっ。その減らず口を永久に開けなくしてやるよ」

「では、始めるぞ。どちらかが戦闘不能になったら試合終了だ。あ、あと万が一の事故には気をつけてくれ。何かあってもこちらで責任はとれないからな。」


 担任は笑っている。こいつは本当に人格破綻者だな。少なくとも、元の世界の担任は優しかったんだが。


 槍を無言で構える。構え方なんて知らないから雰囲気だけだけどな。さてと……相手はどう来るかな。持っている武器は全員が剣。アンバランスもあったものじゃないな。


 そして、見るからに余裕そうだが、さっきそうやって俺に殴られたのをもう忘れたのか?


「では、始め!」


 担任がそう言い、俺の初戦闘が始まった。


 始まった瞬間、二人が両サイドに向かって走り、他の五人が突っ込んでくる。回り込もうとしてくるあたり、一応のコンビネーションはあるらしい。


(おい、気をつけろ。来てるぞ)

「死ね!」


 飛びかかって来たやつの攻撃を、横に飛んで回避する。が、すぐさま、他の奴の追撃。俺はバックステップで距離をとる。


「極炎!」


 次は目の前に来た廉也が、剣に炎を纏いながら突っ込んでくる。目の前に炎を引きずる剣先が迫り、正面から受ければ終わりだと、本能が告げていた。でも、直線的だ。速いが……読める。


 踏み込まず、半歩だけ後退。刹那、槍を水平に払った。火花が散る。廉也の剣を叩き上げた感触が、手に残った。重い。だが、バランスを崩したのは向こうだ。


「なっ!」


 驚愕の声と同時に、背後から気配。左右に散った二人が、挟み撃ちに来ている。だけど、悪いなバレてんだよ。


 槍の石突きを地面に突き、体を軸に回転。円を描くように薙いだ一撃が、右側の剣を弾き、左の腹部を強烈に打つ。衝撃は十分だったらしく、相手は息を詰まらせて倒れた。まずは一人。


 そして、前へ踏み込む。槍は突く武器だ。そう、頭が理解するより先に、身体が動いた。


 廉也の胸元へ、一直線。


「くっ……!」


 剣で逸らされるが、完全ではない。槍先が肩をかすめ、炎が霧散する。血が流れて、廉也が引いた。


 周囲が一瞬静まった。次の瞬間、残った全員が距離を取る。これは効いたな。


 構えは相変わらず我流。だが、悪くない。少なくとも、これでさっきまでの「狩られる側」ではなくなった。


 俺は槍を軽く回し、息を整える。……これならいけそうだ。


「……次は、こっちから行くからな」


 初戦闘は、まだ終わっていない。だがもう恐れはなかった。


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