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冒険王ー世界最強の称号ー  作者: 龍崎 明
序章 始まりの冒険
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6.依頼失敗

 ライオネル近郊の森林奥地。


 一人の男が途方に暮れていた。


「あちゃあ、依頼(クエスト)失敗か。旦那にどやされちまうぜ、まったくよぉ〜」


 おちゃらけた様子で独り言ちるその男は、ライオネル唯一のCランク冒険者。


 名を、ハント。


 ライオネル出身で、生活のために冒険者となった変わり者。ただし、彼には天賦の才があり、その実力は確かである。


 まぁ、向上心というモノに欠ける人格なため、ライオネルから飛び出ることはしなかった不世出の天才。辺境の町の異常事態(イレギュラー)程度なら片手間に片付けることのできる知られざる英雄。


 だというのに、ハントの請け負った依頼は失敗に終わった。


「まさか、こんな田舎にC級の魔獣が出るとはなぁ。しかも群れるタイプだし。流石に厳しいわ」


 ハントとてCランク冒険者だ。単体のC級魔獣であれば、互角以上に渡り合うことができる。だが、確認されている全ての魔獣に指定されたランクは、単体での脅威度を表したものであり、群れる場合の脅威度は一つ二つ上昇する。


 ハントは天才ではあるが、平穏な辺境に引き篭もっているため、格上との戦闘経験などほとんどない。さらに、相手にしたことのある群れの規模とて、せいぜいが四、五匹程度。


 今回、現れたC級魔獣は二桁に余裕で届くほどの群れを形成していた。


 つまり、ハントにとって未知の領域。安全マージンをとっての戦闘は守勢に回らざるをえず、蓋を開けてみれば多少の苦戦をする程度であったが群れのボスであるC級魔獣には逃げられたカタチとなる。


「はぁ、帰るか……。迷宮が出来ちまったんだ。報告しねぇとどうにもなんねぇ」


 ハントのぼやきは止まることなく、トボトボと町に引き返していった。




 ……




 それは長毛な犬の姿をしていた。しかし、その大きさは仔牛ほどもある。


 辺境の町ライオネルを静かに騒がせるC級魔獣だ。


 彼の半生は苦難の連続だ。


 生まれた迷宮は、生存競争激しく同族たちは瞬く間に数を減らした。


 自身の種族の弱さを知った彼は、故郷を捨て放浪の旅に出た。人類からはぐれ魔獣と呼ばれる生き方だ。


 豊富な魔力に満ちた迷宮を離れれば、飢えに苛まれた。


 人類の管理する牧場を襲い、敢え無く冒険者に追い払われた。


 人類の危険性を知り、憎悪を抱えた。


 やがて、辺境に辿り着く。


 ある日のこと、人の子が森に一人でいるのを見つけた。


 憎悪と食欲に押され飛び掛かるも、得た物は男の片腕。


 子どもを庇った男の物だ。


 男の威圧に負け、逃げ出した。


 男の気配が消えた後も、魔獣は用心深く森奥から出て来なかった。


 やがて、自身の魔力に影響を受けた野犬たちが同族となった。


 群れの長となり、その生存を守るため動き始めた。


 だが、その動きを察知した人類が刺客を差し向けてきた。


 刺客は強く、群れの幾らかを犠牲にして逃げざるを得なかった。


 悔しさと哀しみと憎しみと、ごちゃ混ぜになった感情のままに駆け抜けた。


 そして、彼は苦難の半生の中で唯一の幸運を見つけた。


 不活性状態の魔力特異点。


 彼の強い感情が、引金となった。


 迷宮の誕生である。

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