表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険王ー世界最強の称号ー  作者: 龍崎 明
序章 始まりの冒険
6/40

5.報告

 ガラたちが町に戻ると、子どもの親が直ぐに飛び出してきた。


 子どもを抱き締め、その生存に滂沱の涙を流す。


 子どもの存在をしっかりと確かめた後は、ガラに対する感謝の嵐だ。


 それは、周囲で様子を窺っていた衛兵が制止するまで続くほどだった。


 ガラも悪い気はしないものの少しお疲れ気味だ。


 さて、その衛兵だが、ガラに用があった。


 先に逃げてきた子どもたちから大凡の事情を把握しているものの、事態の詳細は分かっていない。事態の当事者であるガラに些細を聴取する必要があった。


 衛兵詰所の一角。


 ガラと衛兵が備え付けの机を挟んで椅子に座っている。


「では、ゴブリンが三匹いた、と」

「はい、子どもの安全を優先して、証拠になるような物はありませんが」

「あぁ、別に信じていないわけではない。そもそも、もう一人の当事者である子どもに聞けば、はっきりすることだ。しかし、あの森に魔獣が出たのか……」


 ガラが事情を粗方、話し終えたところで衛兵が考え込むように俯いた。


「あの、帰っていいですか?もう全てお話ししましたが」

「ん?あ、あぁ、大丈夫だ。次いでにギルドに報告しておいてくれ。君は冒険者だろう?」

「はい、わかりました。それじゃあ、失礼します」

「うむ、子どもたちを助けてくれたことに改めて感謝する」


 律儀に深々と頭を下げる衛兵に苦笑を返しながら、ガラは衛兵詰所を後にした。




 ……




 冒険者ギルド。


「何?森にゴブリンが出た?」

「あぁ、三匹出たぞ」


 受付カウンターにて、ガラは職員の男に先ほどの事態を報告していた。


「もう、衛兵の方には説明した後だ。子どもがいたから、証拠品は無いけどな」

「子ども優先か、正しい判断だな。まぁ、証拠品があれば、講習免除もできたんだがな」

「何!?マジかよ!てか、それで良いのかよ!」

「良くねぇぞ、不正だ。そもそも講習は戦闘能力以外にも、野外での生存能力や探索能力も問われるんだ。ただ、証拠品があれば、幾らでも誤魔化しが効くんだよ」

「チッ、じゃあな、おっさん。確かに報告したからな。忘れんじゃねぇぞ」

「おう、分かってらぁ」


 職員の男が揶揄ったのだと判断して、ガラは舌打ち一つ。振り向くことなく、宿に帰っていった。


 職員の男一人となったギルドは伽藍として淋しげだ。


「あぁ、ゴブリンが三匹ねぇ。あの野郎、間に合わなかったか」


 気が抜けたように独りぼやく。


「メンドーだなぁ。一度、湧いちまえば閉じられないってのによぉ。出来ちまったってことだよなぁ、ハァ」


 ー迷宮がヨォ


 男の呟きが虚しくギルドの壁に染み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ