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冒険王ー世界最強の称号ー  作者: 龍崎 明
一章 盾の誓い
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35.変態種族

「どうしたどうしたぁ!アタシの奢りだ!遠慮はするなぁ!」


 机の上に並ぶ酒とツマミに手をつけようとしない〈盾の誓い〉の面々に、シャルセと名乗った女はどこまでも陽気に笑い掛ける。


「只より怖いものはねぇんだよ。あんた、何が目的だ?」


 顔を顰めて苦々しく問い掛けるのはギョクト。ガラとギーネはことの成り行きを見守る構えである。


「ぶー、そんな警戒しなくたって良いじゃん!ナンパよ、ナ・ン・パ。アタシを君たちの徒党パーティに入れて欲しいなって♪」


「チッ、変態種族パーティ・クラッシャーを入れるわけねぇだろ。帰れ!」


「ひっどーい!変態種族じゃないですぅ!そっちがむっつりなんですぅ!」


 どこまでが本気で冗談なのかシャルセの軽い言葉に、ギョクトは罵倒を返したものの、自己主張の激しい自称、森の賢人がめげることはなかった。


 霊人族は、森の妖精の末裔を自称するほどに森に寄り添い暮らす獣人支族だ。不老長寿、眉目秀麗、聡明叡智と称される少数種族であることは確かなのだが、その実態は未だ解明されてはいない。賢しらに語る者曰く、不老長寿であるが故に時の流れの異なる彼らは、浮世離れしたその美貌も手伝って、世を儚む者ばかり。高い知性が余計な軋轢を避けるために、森に引き篭もることを選択させるのだと。

 そして、そんな現状にあって森の外に出る霊人族は、好奇心旺盛な若者である。閉鎖的な森林生活からの解放感も手伝ってか、色々と奔放な者ばかり。市井の間では霊人族が変態種族であるのは周知の事実。

 さらに、冒険者の界隈では、痴情のもつれをもって徒党を爆発四散させるパーティ・クラッシャーとして知られていた。


 霊人族の当人たちは、森の外でのことである。旅の恥はかき捨てとばかりにその悪名汚名に気にした素振りは皆無であった。


「埒が明かねぇ。ガラ!お前がリーダーだろうが、きっぱり断れ」

「えぇ、しっかり働くから仲間に入れてよぉ。アタシ、霊人族だし、射手(シューター)として優秀よ♪」


 変態の説得を諦めギョクトはガラへと対応を押し付けた。シャルセはやはり軽い口調で、しかしながらしっかりと自身の有用性をアピールした。


 勢いのあるシャルセに引き気味だったガラは、ギョクトに名指しされてようやく頭が回り始める。


 射手は、遠距離攻撃を可能とする役割ロールを指す。弓矢、投擲、神秘術などの手段をもって、空を飛ぶ魔獣や距離をとる魔獣に対処することを目的とする。手段によってその効果は牽制からとどめの強撃まで様々であるが、共通する欠点が存在する。

 それは、矢弾切れである。接近戦を主とする役割であれば、装備の破損や疲労を除きその戦力が著しく低下することはない。しかし、射手は、弓矢の矢、投擲用の物品、神秘術の魔力など、目に見える有限性がある。魔力は魔闘術でも消費するものの、消費量は神秘術の方が明らかに多くなっている。考えなしに動けば、射手は早々に役立たずとなり、矢弾の補充で金食い虫となる役割なのだ。新人冒険者が目指してはいけない役割である。対空手段は必要だが、それを考えなければいけないのは新人を脱却した一端冒険者だ。


 さて、しかしながら何事にも例外は存在する。霊人族の射手というのは、その例外の代表例だろう。彼らの得物は、森林生活で磨かれた狩猟の武器、弓矢である。しかし、その矢弾は魔力である。そして、霊人族の魔力量は人類の中でも最高クラスだ。低位の魔獣相手であれば、矢弾切れの心配はなく、高位の魔獣が相手であれば、報酬との釣り合いがとれる。

 それを可能とするのが、彼らの魔術【枝葉の矢(エルフィンボウ)】。森の木々の枝葉から矢弾を生み出すこの魔術は、現物を利用する故に魔力消費を抑えることに成功している。木々のない環境であっても、彼らは特殊な矢筒で解決する。生きた木で作成されたその矢筒に魔力を流せば、何処でも【枝葉の矢】は行使できるのだ。


 霊人族を仲間とできた冒険者パーティはその意味では幸運である。彼らの性質に目を瞑ることができればという但し書きが必要ではあるとしても。


「射手か。確かに必要なんだよなぁ……」

「そうでしょ、そうでしょ!『冒険王』だって仲間に入れていた優秀な種族なのよ〜!」

「馬鹿言え!『冒険王』の仲間だったのは霊人族の異端児『剣聖』だろうが!一緒くたにしてんじゃねぇよ!」

「あら、アタシは剣術もかじってるわよ?森の賢人に相応しい華麗なる刺突剣(レイピア)術、試してみる?」


 ガラの呟きに押せ押せとアピールするシャルセ。結局、口を挟んだギョクトに、彼女は挑発的に言葉を返した。


「ほう、良いぜ?俺に一撃でも入れられたら、俺は反対しねぇ」

「それじゃダメじゃない!リーダーくん、アタシが勝てたら仲間に入れてくれるよね?」


 挑発にのったように見えて少し狡賢く立ち回ったギョクトだが、能天気そうなシャルセは目敏く気づいてガラから言質をとろうとした。


「ギーネはどう思う?」

「悪人ではないよ」

「なるほど、じゃあ、まぁその条件でやろうか」


 我関せずと三杯ほど呑んでいたギーネに問い掛けたガラ。ギーネの肯定とも否定ともとれる返答に何を納得したのか、シャルセの仲間入りを賭けた決闘を了承するのだった。

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