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冒険王ー世界最強の称号ー  作者: 龍崎 明
一章 盾の誓い
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34.絡み酒

 D級指定迷宮『小鬼の洞穴』は、ギルドから新人育成の場として厳正に管理されている。そのため、迷宮主の討伐について〈盾の誓い〉は禁止を言い渡されていた。ただし、それと同時に迷宮主の状況を確認する依頼を受けている。

 それは、新人育成の場としての安全と報酬を担保するための常設依頼であるとともに、魔獣災害の予防策でもある。


 先の事件にて疑われた魔群暴走スタンピード魔軍侵攻コンクエスト。その内、ゴブリンたちが引き起こすのは魔軍侵攻だ。


 冒険者の徒党が役割ロールをそれぞれ持つように、人類の社会に階級があるように、魔獣の中にも群れてそれぞれが能力によって役職クラスに分かれる種は存在する。

 それは特にゴブリンのような脆弱ながら知恵の働く魔獣に見られる特徴であった。役職は、肉弾戦を得意とする戦士ファイターや魔術を行使する妖術師ソーサラーなど様々あるが、ギルドが警戒するのは統率者ルーラーと総称される役職だ。


 警戒度の低い順に挙げれば、酋長チーフロード大王オーバーロードの三つに区分されている。この内、魔軍侵攻を引き起こすのは王級からだ。酋長も統率するだけの知能はあるが、個体としての戦闘力は平均を逸脱しないところに留まる。そのため、群れの規模が小さく魔軍侵攻の必要性がない。


 さて、〈盾の誓い〉の一行は順調に最奥まで辿り着いた。


 その目に確認する迷宮主の姿は、ギルドより伝達された通りのもの。


 緑色の肌をした醜悪な小鬼が鳥の羽で飾った被り物と衣服を身に纏っている。手にするのは石刃を嵌め込んだ木の棒だ。槍というよりは杖に見える。それは酋長の特徴だった。

 魔獣の装備は、イメージに影響を受けた魔力の産物であり、彼らの体の一部である。そのため、役職ごとに決まった姿をしているのだ。


 ちなみに、取り巻きが四匹いる。


「酋長を確認、で良いのか?」

「そうだな。道中に危険度の高い役職持ちもいなかった。異常はないんだろ」


 ガラの確認に、ギョクトが頷いた。ギーネは水晶を覗き込んでいる。


「ギーネ?」

「予知にも異常はない。帰ろう、リーダー」

「わかった。ありがとう、ギーネ」


 ガラの感謝に、ギーネは頷くことで応えた。


 一行は警戒を緩めることなく、来た道を戻り進む。手馴れたか運が良かったか行きよりも短い時間にて無事に迷宮を出たのだった。




 ……




 冒険者ギルド、王都東区支部。


「はい、依頼達成となります。こちらが今回の報酬です。お受け取りください」

「ありがとうございます」


 受付嬢と遣り取りするのは、迷宮から帰還したガラ一人。ギョクトとギーネはギルド併設の酒場にいた。

 これは冒険者の暗黙の了解である。多くの場合、彼らのギルド利用の時間帯は重なるものだ。ただでさえ、受付に列を成すのに、徒党の全員で並べばそれは長ったらしくなって苛立ちを助長するのだ。仕事終わりの昂りも合わされば、刃傷沙汰に発展するのも珍しくない。それを防止するという建前の元、さっさと酒を飲みたい呑兵衛どもがリーダーに面倒事を押し付けたのが始まりとされる。


 ガラも絡まれてはかなわない。報酬の支払いは用事の終了を一見して周囲に知らせるのだ。報酬の入った小袋を掴んでそそくさと酒場の方に向かった。


「えぇ、良いじゃん!お姉さんが奢ったげるからさ〜!」


 仲間が確保した席に近づけば、そんな言葉を響かせるスレンダーな美人がいた。


「やめろ、変態。内のリーダーも来た、諦めろ」

「おう!こんな美人二人を侍らせたヤロウのツラを拝んでやろうじゃないかぁ〜!」


 ギョクトの拒絶に屈することもなく、女は振り向いた。


「おうおう、君だなぁ〜?え、カワイイじゃん!どう?お姉さんと夜を共にしない?」

「は、え?」


 難癖の類の言葉を予想して構えていたガラは、女の意外な台詞に間の抜けた言動を晒した。


「やめて」

「わぁ!嫉妬、ねぇ嫉妬?大丈夫!お姉さんは三人同時でも構わないわ!」


 代わりとばかりにギーネの端的な拒絶の言葉。女はやはりそれには屈しなかった。

 なんとか思考を取り戻したガラが言葉を挟む。


「えっと、誰ですか?」

「よくぞ聞いてくれました!エスアム大森林はメンクラ氏族バイナーの娘シャルセ様とはアタシのことだー!」


 大仰に名乗りを上げたシャルセの容姿は、金髪碧眼。森の氏族の名乗りとくれば、その種族は自ずと知れる。


「霊人族、ですか」

「そうそう、みんな大好き森の妖精(エルフ)の末裔!不老長寿に眉目秀麗、聡明叡智な森の賢人!それがアタシの種族で〜す!」

「うるさい」「ただの酔っ払い」


 ギョクトとギーネがばっさりと切り捨てた。


「まぁまぁまぁ、君も座りたまえ!ここで出会ったのも何かの縁だ!お姉さんが奢ったげよぉ!」

「はぁ、そうですか」


 挫けることなく図々しく、ガラに着席を促しながらシャルセはまだまだ居座るつもりだ。ガラは結局、彼女のノリについていけず受身の様子。


「マスター!いつもの四人前!」

「俺はマスターじゃねぇよ!?」


 そして、勝手に注文を投げるシャルセ。酒場の店員も困惑気味だ。それでも常連なのは確からしく、いそいそと何やら作り始めた。

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