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冒険王ー世界最強の称号ー  作者: 龍崎 明
一章 盾の誓い
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32.〈盾の誓い〉

 冒険者ギルド、王都東区支部。


共闘申請(パーティ・エントリー)ですね。では、こちらの羊皮紙に共闘名(パーティネーム)代表(リーダー)仲間(メンバー)を記入の上、皆様のギルドカードとともにお持ちください」

「わかりました!」


 受付嬢の説明に快活な返事をして走り去る黒髪の少年ガラ。


 彼の行方にはギルドに併設された酒場の一角に陣取る二人の姿があった。

 女と見紛う圧倒的な美貌が特徴的な白い兎人ギョクトと目元を隠す艶黒の長髪と両手に包み込む無色透明な球体水晶が妖しさを醸し出す女占術師ギーネだ。


 ギーネの勧誘に成功したガラたちは、早速とばかりに共闘申請のためにギルドを訪れていた。


 冒険者が徒党(パーティ)で活動することをギルドは何ら遮らない。それはガラとギョクトが、ギーネ捜索中の合間に依頼を熟していたことからも事実である。

 しかし、ギルドには共闘申請制度が存在していた。この制度によるメリットは、ギルド側からすれば当然、管理をし易くすることにある。対して、冒険者側のメリットは、共闘等級(パーティランク)の認定にある。


 共闘等級。個々人の闘級とは別にギルドが徒党の連携等を加味して認定するランクだ。当然、徒党での活動に限り、そのランクに応じた依頼を受けることができる。それが個人闘級を超えたランクであってもである。上のランクであるほど、当然、その報酬は跳ね上がる。冒険者とて人の子だ。金がなければ、生きていくことはできず、また、武具や道具の充実を図れば幾らあっても足りないのだ。富や名声を求める俗人にしろ、ひたすらに強さを追い求める夢追い人にしろ、高額報酬はメリットなのだ。


 また、共闘申請を利用しない限り、ギルドは徒党の連携力を考慮しない。これは冒険者の生存率を向上させるためでもある。当然だが即席の徒党に連携は期待できないのだ。互いの呼吸を知ることも、信頼を培うことも、強みを活かした(パターン)を組み立てることも、長い時間が必要である。そして、その時間を証明するのが共闘申請でもあるのだ。


 なお、現代では少ない事案だが、施行当初は報酬独占や徒党内殺人などの諸問題解決のための施策の一つであった。


 さて、そんな共闘申請のための羊皮紙を持って、ガラがギョクトたちの陣取るテーブル席に腰掛ける。


「それじゃ代表はどうする?」

「お前だろ」


 ガラが口火を切ると、ギョクトが即答。ギーネはそれに同意するように頷いている。


「良いのか?」

「良いも何も、俺は代表なんて面倒なことはやりたかねぇよ」

「私は、そういうのは苦手だから」


 ガラの確認に、似たり寄ったりな回答をする二人。それもそうか、と納得してガラは羊皮紙の代表欄に自身の名前を記入した。続けて、仲間欄もギョクトとギーネの名前で埋める。


「共闘名か」


 ガラは羽ペンを一度、置いた。


「俺には聞くなよ」

「〈灰色のニャンコ〉とか……」


 ギョクトは放棄し、ギーネは女性らしい案を出す。ガラはそれを聞いているのかいないのか、目を閉じ腕を組んだ。


 共闘名は重要な要素である。有名となった際に広がる名前は、シンプルで覚えやすいものが良い。指名依頼が舞い込む可能性がグンと上がる。間違って覚えられれば、ギルドとしてもそのような冒険者の徒党は存在しないと依頼主に伝えざるをえなくなるのだ。

 また、共闘名が広がれば、噂が立つ。多くの人々が噂すればするほどに、活躍とその名に由来したイメージが形成される。イメージは、こうであってほしいという願いである。それは確かに魔力に働き掛けるのだ。強い願いではない。だから、実感するほどの変化は殆どない。それでも強くなりたいと思う多くの冒険者が、このジンクスのような話を信じて強い印象を受ける共闘名を考える。


「俺は、『冒険王』になるんだ。だったら、やっぱり彼の共闘名に寄せるべきだよな」


「好きにしろよ」

「……ニャンコ、ダメ?」

「そこ拘るのか、お前……」

「……冗談。ガラの思った通りで良い。あなたが代表で、あなたが一番、純粋に冒険者だから」


「ありがとう、ギーネ。ギョクトも。それじゃ俺たちは、『冒険王』の〈剣の誓い〉を真似て〈盾の誓い〉だ」

「なるほどな。良いんじゃねぇか」

「うん、良い。私たちはそれぞれに誓ってることがあるから」


 悩むガラの結論に、ギョクトは呆気なく、ギーネは真剣に了承した。

 二人の了承を得て、ガラは羊皮紙の共闘名を記入する。


「じゃ、あとは全員分のギルドカードと一緒に提出だ」


 そう言ってガラが席を立てば、ギョクトとギーネが自分のギルドカードを取り出してガラに渡した。


 ガラは受付に向かい、共闘申請は滞りなく行われた。三人のギルドカードには新たに、共闘名〈盾の誓い〉と共闘等級Dの文字が刻まれていた。D級であるのは、ガラたち全員が今までの活動で個人闘級をDとしていたからである。


 ガラがテーブルに戻れば、既に注文したのか料理の数々が並んでいた。


 麦酒の入ったジョッキを握り、ガラは徐に口を開く。


「そんじゃ、誓いを改めて口に出してみようぜ」

「まぁ、良いが」「わかった」


「俺は皆を護れるようになるんだ」

「俺は理不尽に抗う力を得る」

「私は運命を覆せるようになる」


「〈盾の誓い〉結成を祝して、乾杯!」

「「乾杯!」」

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