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冒険王ー世界最強の称号ー  作者: 龍崎 明
一章 盾の誓い
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23.不吉な予言

 カロメット迷宮群、猛獣の森。


 翌日、ギルドからの指名依頼を受けた『放蕩一座』の一行の姿は、カロメット迷宮群の一つ、B級迷宮『猛獣の森』にあった。


 この迷宮は、ライオネルでガラが攻略した新生迷宮『猟犬の森』と同じく領域型だ。特殊な環境はなく、森に慣れた者ならばその行動に支障はない。それでもその危険度指定がBである由来は、その名の通りその地に棲息する鳥獣系の魔獣たちがいずれも強大であるからであった。


 小国の軍隊を凌駕する一糸乱れぬ連携で格上さえも狩り殺す魔狼、アーミーウルフ。冒険者の死体から装備を剥ぎ取り、冒険者の戦闘を観察して、それを真似する魔猿、リハーサルモンキー。森の王とも恐れられ、身の丈は四つん這いであっても人間の三倍はあるとされる巨獣、ギガントグリズリー。などなど種々様々な魔獣たちが、森の覇権を求め争い合っており、たとえ、ギルドの危険度指定で下級とされる種であったとしても、この森では侮り難い歴戦の猛者と化している。


 一時の安息を得ることすら出来ず、東方の島国を発祥とする戦士の心構えとして知られる『常在戦場』の精神を鍛えた冒険者でなければ、即時の撤退か、一瞬の隙を突かれての全滅もあり得るカロメット屈指の迷宮だ。


「こら、気を散らすな」

「!……すまん、ゴンズ。どうにも気になってるんだ」


 しかし、そんな迷宮の中でガラはどこか気もそぞろになってしまっていた。


 その理由は、『猛獣の森』での入口での出来事に遡る。




 ……




 猛獣の森、冒険者ギルド管理入口。


 領域型である猛獣の森は、外周部の何処からでも侵入することは可能だ。ただ、整備された道に沿った場所を入口として冒険者ギルドはそれを管理していた。冒険者たちの無謀な挑戦を抑止し、探索中の冒険者を把握し、それに伴う異常に早急に対処するためである。


 また、迷宮の入口というのは、一定の集落ができる立地だ。気に聡い商人たちが準備不足の冒険者を相手に露店を開いていることが多くある。そして、管理の届かぬ場所でもあるため、非合法な商売を展開するには都合の良い立地でもある。

 冒険者のサポートを信条とするギルドとしては、法外な商人たちを取り締まることは重要な業務であり、各国としても悪徳商人をのさばらせることは経済的に好ましいところではない。よって、多くの迷宮口集落は、その所在国の支援と委託を受けたギルドによって管理されているのだ。


 特に理由のない『放蕩一座』の一行も王都から続く道に沿って進み、この集落へと足を踏み入れた。


 そして、ある女に出会った。


 それは上背のある女だった。艶のある黒髪は、前は目元まで覆い隠し後は腰まで垂れていて、妖しさと怪しさを醸し出す。嫋やかな細身は白皙の肌をして、僅かな露出もない喪服のような衣服で身を包み込んでいるが、胸は豊かにその衣服を押し上げていた。両手に包み込む無色透明な球体水晶が彼女の生業を言外に教えてくれる。


「待って……」


 接触は女の方からだった。消え入りそうな小声で、猛獣の森への門前で『放蕩一座』を呼び止めた。


「どうされましたか、お嬢さん?」


 パーティのリーダーとして、ロウラクが応答する。


「行ってはいけない。何かを犠牲にしなければ、誰も生き残ることはできない」

「なるほど。お見受けしたところ、貴女は占術師だ。その予言、心に留め置きましょう。ですが、我らもギルドから依頼を受けた身です。行かないという選択はありません」

「そう……ごめんなさい」


 女は、引き留めたことか不吉な予言を残したことか、謝罪をして去っていった。


 占術師とは、主に運命を掌る魔術の使い手のことを云う。過去を知り、未来を垣間見て、可能性の分岐路を選択することのできる神に最も近いとも言われる魔術だ。国によっては、巫女か聖女か、宗教的、政治的に重要な立場であることも多い。


 しかし、その実態は予測でしかないとされる。生物は、歩くだけでも進行方向の状況を知覚し、時間経過による状況変化を演算し、細かに進行の軌跡を修正している。そして、これはほとんど無意識化で行われる予測である。占術は、この能力を強化する魔術でしかなく、余程の才能がなければ、外れることも少なくない。


「売名か?雰囲気もあって良い線いってるかもな」

「俺は、真剣な様子に見えたよ」


 吐き捨てるギョクトに、ガラがやんわりと嗜める。


「どちらにせよ。警戒を怠るな。依頼内容のこともあるのだからな」


 ロウラクの言葉に、一行は素直に頷いた。




 ……




「確かに、気にはなる。わざわざ入口で待ち構えていた彼女には仲間がいた様子もない。占術での稼ぎ場としては迷宮集落は適さないことを思えば、彼女は明確な理由があってあの場にいたことになる。それこそ、自身の予言が怖いくらいに当たり、それを放置する後味の悪さに強迫されて、とかな」


 真剣に考えるロウラクに、ギョクトが失笑する。


「考え過ぎだぜ、座長。占いなんてのは、当たるも八卦、当たらぬも八卦だ。どうせ、変わったことをして名を売りたい見習い占術師の戯言だろうよ」

「それなら良いのだがな」


 一行は、改めて警戒を厳にしながら迷宮を進んでいく。

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