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冒険王ー世界最強の称号ー  作者: 龍崎 明
一章 盾の誓い
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21.アルシオン王国、王都カロメット

 ガラガラと車輪を回す馬車が一つ。愉快な音楽を響かせながら、草原の街道を進んでいた。


 ガラが『放蕩一座』に加入して季節が変わる程度の時が過ぎた。


 その間、ガラは面々に稽古をつけてもらっていた。そこで知ったのが、中堅以上の冒険者の必須技能、魔術だ。


 魔術は魔力を用いた技術の総称で、大別すると二つの技術が存在する。


 一つ。直感的な行使を可能とする主に戦士職が用いる魔闘術アーツ


 一つ。理論的に行使される魔法使いが用いる神秘術ルーン


 一般的にイメージされる魔術、例えば、火球を放つモノ、風刃で刻むモノなどは神秘術に分類される。そのため、魔術は敷居の高い技術というのが世間の認識だ。


 しかし、冒険者という職業は、自身の魔力を高めることのできる仕事だ。それを利用しないことは宝の持ち腐れでしかない。


 そのために、古くは達人たちが無意識のうちに発現させてきた技の数々を、意識的に再現することを試みた。それが魔闘術の始まりである。


 ガラがモーザ・ドゥーグ戦で使用した【魔咆ウォークライ】も魔闘術だ。


 雄叫びに魔力を乗せることで、対象の精神に挑発的な影響を与える守手タンクの必須魔術だ。


 ロウラクたち獣人の多くは魔闘術を得意とする。


 ガラの師として申し分なかった。


 ここ数ヶ月で、ガラの実力はメキメキと上がっていた。


 さて、そんな一行の次なる目的地は、ガラの生まれ故郷カーボネックが所属するアルシオン王国の首都。


 王都カロメット。


 ちょうど一行の行く先に象徴的な白亜の城が見えてくる。


「ん?」


 ロウラクの耳がピクリと動く。


「どうした、座長?」


 それに目敏く気づいたゴンズの問い掛けに、何でもないと返しながらその視線は街道を逸れた一点を窺っている。


「気のせいか?」


 しばらく経っても変化はない。ロウラクは自身の感覚が外れたのだと結論付けた。




 ……




 王都カロメット。


 アルシオン王国のほぼ中央に位置するその首都は、百万都市と呼ばれるほどの経済規模を有している。


 その要因は、国土の流通の要となる立地もあるが、大小合わせて幾多の迷宮を近傍に抱えていることが最たるものだろう。


 迷宮は資源の宝庫である。膨大な魔力によって変質した種々様々な資源が、富と人を集める誘因なのだ。


 迷宮は冒険者を呼び、冒険者が手に入れる迷宮資源は商人を呼ぶ。人が集まれば集落となり、やがて大都市となるその典型例である。


 そして、この王都こそ名高き世界的英雄『冒険王』の始まりの地。それにあやかり、ここから冒険者を志す若者が後を絶たぬ観光地でもあることが拍車を掛ける。


 雑踏に溢れる人々は半ば無秩序に歩いている。王都の住民だけではなく、外様の来訪者も多くいる中で暗黙の了解が機能するはずもない。大通りなどの主要な道路には、交通整理を担う衛兵の姿が見受けられる。


 遅々として進まぬ馬車の中。一行の中で唯一の田舎者であるガラが仕切りに視線を彷徨わせる。


「ウザい」

「そう言うなよ、ギョクト。俺は都に来たのは初めてなんだ」

「だからって落ち着きが無さ過ぎる。ギルドでもその調子だと舐められるぞ」


 痺れを切らした罵倒の言葉に、ガラは怒りを見せずに釈明する。そこにはどことなしか喜色も滲んでいた。後に続くギョクトの台詞が曲がりなりにも心配の類であることが、もはや隠し通せぬニヤけ面を生み出した。


「ウザい」


 始まりと同じ台詞を吐き捨ててギョクトはそっぽを向いて目を閉じた。


「「クスクス」」「ワハハ!」


 その一部始終の傍観者は声を揃えて笑い上げた。


 ここ数ヶ月で変わったのは実力ばかりではない。人間関係にも良好な進展があったのだ。




 ……




 大小合わせて幾多の迷宮を周囲に抱え大都市たるカロメットは、利便性のために都市の四方に冒険者ギルドの支部が配置されている。


 ガラたちはカロメットの東門から入り、そのまま東区のギルドを訪れた。


 顔見せは冒険者の暗黙の了解である。しなくとも罰則はないが、ギルド側が不測の事態に対応する上で滞在する戦力を把握できていることは望ましいことだからだ。冒険王の活躍以後、冒険者は善良であることを期待され、ギルド側もそのように対応するため査定にも響く。そもそも、不測の事態の解決は評価の高い案件だ。そのような機会を逃す愚者に大成は期待できないだろう。


「おう!『放蕩一座』じゃねぇか!」

「調子はどうだ!?」

「一曲歌ってくれや!」


 もう何度となく『放蕩一座』は興行の旅程にこの都市を含んでいる。ギルドに屯する顔見知りの冒険者たちが騒々しく出迎えた。


「やぁやぁ、皆さんお元気そうで何よりでございます!今年もまた無事にやって参りました!我らが『放蕩一座』、誠心誠意の芸を披露したくはありますが!我らもヒトの子なれば、旅の疲れは逃れ得ぬもの、ここは辛抱しては下さいませんか?明日、いつもの広場にて最高の時間を提供させていただきますれば!」


 ロウラクが大仰な台詞で挨拶を返す。それに答える冒険者たちは皆、笑顔で応諾した。


「やれやれ、何の騒ぎかと思えば、そうかもうそんな時期か。いや、ちょうど良かった、ロウラク」


 そう言ってギルドの二階から降りて来たのは眼鏡の似合う緑髪の優男だった。

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