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冒険王ー世界最強の称号ー  作者: 龍崎 明
一章 盾の誓い
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20.『放蕩一座』

 C級冒険者パーティ『放蕩一座』。


 座長ロウラクを筆頭に、全て獣人族で構成されていた兼業冒険者パーティだ。


 本業は旅芸人の一座であり、基本的に迷宮攻略はせず、旅の道中のはぐれ魔獣の討伐、或いは興行失敗の路銀稼ぎとして冒険稼業を行ってきた。


 その経歴を聞けば侮る者もいようが、彼らは弱者ではない。

 人間に比較して強靭な肉体を有する獣人族であり、その能力を遺憾無く発揮してアクロバティックな大道芸も行う芸達者だ。


 その技術は体術として昇華され、極めて強力な戦闘能力となる。


 噂の域を出ないが、メンバー全員がエト獣王国出身のため、祖国の密偵との話もある。




 ……




 ギルドでの手続きの後、ガラはロウラクに連れられて『放蕩一座』が逗留する宿に向かった。


「帰ったぞ!」


 宿に入るなり、ロウラクは声を張って帰還を告げる。宿の従業員たちは慣れた様子で苦笑し、特に文句は出ない。


 そして、併設された食堂の方からバタバタと駆けてくる足音があった。


「「お帰り、座長!」」


 満面の笑みで現れたのは、二人の鳥人だ。子どもと見紛う小柄ながら多くの鳥人はこれで成人している。


「新入りは?」「新人は?」


 それぞれ微妙に異なる言い回しで尋ねるのは、ガラのことだ。


「「お?おお、お?君だね!」」


 ロウラクが答える前に、その後ろに姿を見つけ無遠慮に迫る二人の鳥人。ガラは圧の強さに引き気味だ。


「盾だ」「黒いな」「男の子だ」「少年だ」「趣味は?」「好物は?」「特技は?」「夢は?」


 次々と紡がれる言葉に、返答を待つ様子はない。彼らなりの挨拶だ。


「こらこら、ガラ君が困っているぞ。二人ともまずは自己紹介しなさい」

「「はーい、座長」」


 ロウラクの仲裁に、鳥人二人は手を挙げて応えると、ガラと適切な距離をとった。


「「僕らは双子の鳥人、『放蕩一座』の音響担当!」」

「僕が兄のレンレン!」「僕が姉のレイレイ!」

「「む?僕が上でしょ?ちゃんとしてよ!」」


 名乗るまではよかったが、どちらが長子かで揉める様は子どもの如く。その背後からヌッと大柄な男が現れる。


「またか、お前ら。いい加減にしないか」


 そう言って双子の襟首を掴んで引っ張り上げるのは、こめかみから角を生やした牛人だった。


「おう、お前が新入りか。俺は裏方担当のゴンズだ」

「ガラだ。よろしく頼む」


「さぁ、立ち話もなんだ。最後の一人も待ってるだろうから、食堂に入ろう」


 ガラとゴンズの短い遣り取りを確認して、ロウラクが移動を促す。それを受けて、ゴンズが双子を抱えたまま歩き出す。ガラは一度ロウラクを振り返り、笑みを返されたのを見てゴンズに続いた。


 食堂に入れば、自然と目に留まる美貌の姿。ガラがソーンウォール初日に見物した兎人の舞姫だ。ただし、その格好は踊り子衣装ではなく、動き易いよう考えられた拳法着だ。


「お前が新入り?広場で俺に見惚れてた奴じゃねぇか」

「何だ、ギョクトのファンか。良かったじゃねぇか。まぁ、コイツは男だがな」

「え、男?舞姫って紹介もあったしてっきり女かと」


 ガラの顔を見た瞬間に兎人ギョクトが口を開く。その表情は苦みばしったものだった。

 続いたゴンズの軽い暴露に、ガラが軽く驚いた。


「舞姫ってのは、魔女なんかと同じ慣用表現だ。一座の看板踊り子のことを男女問わずそう言うのさ。さぁ、座った座った。今日はガラ君の歓迎会だ。お代は経費で落とすから存分に楽しんでくれたまえ!」

「よっ!流石は座長、太っ腹!」「「わーい!座長サイコー!」」


 軽い解説をしてロウラクが着座を促した。奢りを宣言すれば、ゴンズと双子が喝采を飛ばす。流石は旅芸人の一座ということか。やることなすこと仰々しくも騒々しくも楽しげだ。


「けっ、俺は部屋に戻るぞ」


 一人、空気を読まずにギョクトが席を立つ。苦笑しながらもメンバーがそれを止める様子はない。ガラもわざわざ藪を叩くようなタチではない。


「仕方ない奴だ。さぁ、まずは乾杯といこうじゃないか!器を持て!」

「おうよ!」「「待ってました!」」


 ロウラクの音頭に調子良く続く三人。それに遅れてガラも器を手に取った。


「新たな出会いを祝し、一座の更なる躍進を願って!乾杯!」

「「「「乾杯!」」」」


 ほぼ同時に五人の喉が鳴る。ロウラクとゴンズは器を干して、すぐさま次を手酌し出した。双子は軽く飲んで器を置くと、料理の数々に舌鼓を打っていた。


 ガラは一瞬、呆気に取られ、双子に混ざって美味しい料理を味わった。


 さて、親睦も深まったかと思われる時が過ぎ、ガラの目線が時折、上階に向かった。部屋に戻ったギョクトを思ってのことである。


「ふっ、気にするな、ガラ君。ギョクトはあの容姿だ。初対面の相手は基本的に警戒する癖があるだけだ。普通に接していれば、そのうち打ち解けられるとも」


「そうですか。ありがとうございます」


 ガラの様子に気づいたロウラクが落ち着いた声で諭せば、ガラも幾分か落ち着いた。


 そこへ酔った男が絡んでくる。


「よぉ、ガラぁ呑んでっかぁ。遠慮せずにじゃんじゃん呑めよぉ〜」

「ゴンズさん、飲んでるぞ」

「あぁ、さん付けはやめてくれぇ。尻がむずむずすらぁ。さぁ、若いんだからもっと食えぇ!ははは!」


 脈絡のない酔っ払いは、上機嫌にガラの背を叩く。


 その騒々しさに、ガラの僅かな憂いも吹き飛んでいった。

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