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冒険王ー世界最強の称号ー  作者: 龍崎 明
一章 盾の誓い
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19.推薦

 Eランク昇格に浮かれた翌日。ガラが目を覚ましたのは、旅の疲れもあってか昼過ぎのことだった。


 身支度を整え、宿の女将に笑われながら昼食を摂った。


 さて、冒険だ、と勇む心があったが、ガラには先ずしなければならないことがあった。


 仲間を見つけることだ。


 冒険者の本分たる迷宮探索には危険が付き纏う。膨大な魔力によって変質した環境は、強大な魔獣たちにとっての楽園であり、人類にとっては生存の困難な地獄だ。


 だからこそ、冒険者たちは徒党(パーティ)を組む。


 迷宮では戦力がいくらあっても足りず、必要な技能は膨大である。万能性を有する者など、一部の大才を有する天稟に恵まれた連中だけだ。多くの場合、徒党内での役割(ロール)は専門化される。


 高い膂力や魔力で魔獣を斃す冒険者の花形、攻手アタッカー


 魔獣の敵意を一身に集め仲間を守る防壁、守手タンク


 魔獣から受けた傷や毒を治療し戦線を維持する縁の下の力持ち、癒手ヒーラー


 索敵や罠の発見を担う探索の要、導手スカウト


 最低でもこの四つの役割を担えるように徒党を組むことが、迷宮探索の定石とされていた。他にも、その他一切の雑事を引き受け、仲間を迷宮探索に集中させる助手サポーターなど細かい役割はあるが今は関係のない話題だ。


 ガラは盾使いであり本人の志もあってか、守手を自認している。攻手も担えなくはないが、高位の魔獣と当たれば攻撃力は不足するだろう。癒手を担うには技術がない。せいぜいカーボネックで学んだ薬草知識くらいだ。導手についても同様だ、役立つのはカーボネックで学んだ森歩きくらいなものである。


 諸々の不足をガラは自覚していた。そもそも冒険王とて、徒党は組んでいたのだ。自らが冒険王を超えていると驕るほどガラは愚かではない。直近でもハントに負けたこともあるのだから。


 というわけで、ガラが目指すべきは冒険者ギルドである。


 結局、仲間を探すには同業者でなければならない。それにギルドであれば、徒党を組むためのサポートも行っているのだ。

 冒険に出ようと出まいと、冒険者の行き先は変わらなかった。




 ……




 冒険者ギルド。


 昼過ぎのギルド内は閑散としている。多くの冒険者は朝方に依頼を受け、冒険に出払っているからだ。


 こんな時間にやって来るのは、暇を持て余した休暇中の冒険者か、受付嬢を口説きに来た三流冒険者か、ギルドの顧客である依頼者か、ガラのような寝坊助冒険者くらいである。


 扉の軋む音がギルド内に来客を告げる。


 客は当然、ガラであるが、その姿を見た受付嬢の一人が立ち上がり会釈した。ガラを含め、屯する冒険者たちの間に怪訝な様子が浮かぶ。


 おっかなびっくりとガラは無言の圧を放つその受付嬢のカウンターに足を運んだ。

 仔細な容姿を確認すれば、昨日に応対してもらった人物だ。手紙の件で何かあったのか、という思考がガラに過ぎった。


「ガラ様、昨日のお手紙は貴方様の推薦状としての側面が御座いました」

「え?」

「よって、当ギルドはガラ様の大成を願って信頼するC級冒険者パーティ『放蕩一座』への加入を推奨し、そのサポートを行う準備があります。どうなさいますか?」

「え、えっと、お願いします。……(マジかよ、おっさん)」

「了解致しました。それでは、先方との調整もありますので、二日後にギルドをお訪ね下さい」


 ガラの戸惑いを置き去りに、受付嬢の言葉はスラスラと清流の如く流れていく。




 ……




 二日後。昨日を町歩きに費やしたガラは気力充分で新たな出会いの場へと訪れた。


 ギルドに入ればすぐにまた、あの受付嬢に応対されて一室に案内される。


 受付嬢のノックに通りの良い男声が応える。


 入室すれば目に入るのは、大柄な狼人の立ち姿だ。シルクハット片手にステッキをその腕にぶら下げている。冒険者というより気さくな紳士のような風貌だが、黒服スーツの裾は昆虫の羽のような広がりで道化の衣装であることを示す。


「お初にお目に掛かる、ガラ君。『放蕩一座』座長ロウラクだ」


 そう言って人好きのする笑みを浮かべる男は、ガラがこの町を訪れた初めに見た大道芸の司会であった。


「え?あ、いや、よろしくお願いします、ガラです」


 登場したのが芸人であったことに動揺しつつも、ガラは挨拶を返して握手する。


「一先ずは良好なようで何よりです。それでは御両人お座り下さい。手続きに移らせていただきます」

「あぁ、よろしく頼むよ」「よろしくお願いします」


 受付嬢がスルリと言葉を差し込めば、冒険者の両名は反発せずに向かい合って席に着いた。受付嬢はどちら側にも座らず、間にある机の片側に立つ。ちょうど三角形を描くカタチだ。


「では改めまして、E級冒険者ガラ様とC級冒険者パーティ『放蕩一座』リーダー、ロウラク様の面談を始めます。まず、当件は冒険者ギルド、ライオネル支部、支部長の推薦状に基づき、ソーンウォール支部がガラ様の冒険者パーティ加入をサポートする事案であります。――」


 事務的な遣り取りと、いくつかの確認の末、ガラの『放蕩一座』加入は割とあっさりと決まることとなった。

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