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濃灰の艦隊  作者: 銀河乞食分隊
序章
2/73

演習

演習開始

 航海が示す海図台には、確かに新し海図と封筒が有った。

 封筒は中身を見なければいけないだろうな。


「先任、海図を広げどこか似た場所が無いか考えてくれ。私はこの手紙を見る」

「了解」



---------------------------

 手紙を見ている君たちへ。

 神だ。

 神と信じなければ、なんでもいい。君たちをこの世界に呼び込んだ存在だ。

 君たちにやって貰いたいのは,異世界から侵入してきた存在の排除。やり方は任せる。排除というのはこの世界から消し去って欲しいと言うことだ。


 侵入者は強大だが、今は勢力も装備も少ない。徐々に大きく強力になっていく。

 彼らは海洋性の存在であり、主に海岸を根城としている。君らの駆逐艦でもなんとかなる段階だ。

 先ほどブイを必ず取れと言ったが、ブイには様々な物が入っている。君たちには必要な物も多い。

 ブイは必ずしも拾う必要は無い。船を当てても良い。ただし効果や中身は減るがな。

 赤ブイは船の損傷や乗員の怪我をある程度治す。

 黄ブイは様々な物資が入っている。

 赤ブイ、黄ブイとも入っているのは目録だが、ぶつけた場合はその場で効果が発生する。

 白ブイは内緒だ。白ブイの中身は根拠地に転送される。勝手に移動するという事だ。気にするな。


 実戦演習の内容だが、成功条件は敵駆逐艦を4隻以上撃沈せよ。1隻ごとに点数が付く。

 練習であり、この段階での戦死は999回に含まれない。何回でもやり直しがきく。

 大甘だが、中身は再挑戦の場合でも保持される。つまり、やればやっただけ貯めることが出来る。

 さすがに、いつまでもと言う訳にはいかない。最大で20回とする。

 最大20回だが、場合によって増えることもある。それは後で分かるだろう。

 

 君たちには根拠地が必要だが、置いておいた海図に示してある。演習を終えたら必ず行け。そこしか君たちを補助してくれる場所は無い。

 世界からすれば君たちは戦友だが「謎の勢力」と言う事になっている。侵入者排除後まで君たちはこの世界と交流を持つことは出来ない。


 言い忘れたが、戦死回数は艦が沈むことで個人の戦死は含まれない。

 痛みや苦しみは現実からは相当軽減されているが、全く無いのでは無い。 


 また、時々不思議なことが起こるが神が関与しているとして諦めろ。受け入れろ。


 諸君の健闘を祈る。


 神。


--------------------------



 一方的に書かれた内容だが、我々は受け入れざるを得ないだろう。我々は生きている。幽霊というわけではないようだ。

 しかし、敵が強大になっていくという内容が気になる。駆逐艦1隻にどうしろと。

 まずは、敵駆逐艦4隻を沈めなければ始まらないか。


「航海。場所の推定は出来たか」

「はっ。おそらくヤップ島付近かと」

「ヤップ島?どこだ」

「南洋です。パラオ北東250海里くらいに位置します」

「パラオとマリアナの中間か」

「そうです。そして設定戦場がカロリン諸島となっています」

「なに?」

「ここをご覧ください」


 航海が指さしたのは、海図の隅だった。そこには成功条件が書かれていた。


----------------------------


1.敵駆逐艦4隻以上撃沈

2.制限時間は6時間

3.条件達成以前に戦闘海域から出ることは失敗となる

4.制限時間以内に成功しないと失敗となる

5.失敗は撃沈と同じ扱い


 補足事項として

1.敵駆逐艦は何隻撃沈しても良い

2.撃沈するほど点数が増える

3.味方はいない

4.ブイを拾うか拾わないかは任意。拾う方が良いと思うぞ

5.成功して初めて根拠地に入港できる

6.戦闘開始は指定海域に入った時点とする

7.成功した場合、新たな指示があるので従うように

8.撃沈されると999回から1回引かれるが、演習の場では引かれない


 大サービスで敵駆逐艦は貴艦と同程度だぞ。

 基本的に敵は寄ってくるからな。ただ逃げる奴もいるから追わないと失敗になることもある。

 今はこの内容しか記せないが、続けていけば解ることも増える。

 健闘を祈る。


----------------------------


「なんだろうな」

「いらつきますね」

「しかし、やらんと根拠地には入れそうに無いな」

「全くもって、許せません」

「航海、この海図だけだったか。2枚有ったように見えたが」

「もう一枚は戦闘海域を抜き出した物でした」

「海域だと」

「一辺50海里でカロリン諸島のイファリクトアトールとウリアイアトールが含まれています」

「その中でか。外には出れんのだな」

「艦長、砲術です」

「砲術長、なにか」

「砲弾が全て徹甲になっています。榴弾と対潜弾も混ぜていたのですが」


 どういうことだ?


『おお、済まんな。言うのを忘れておった。この艦はこの世界に来た時、新品になっておるよ。備品や食料、燃料まで含めてだ。初回の演習では徹甲弾しか必要ないのでな。徹甲弾だけにしておいたぞい。そう言えば羅針儀と時計がダメだったな。磁気もジャイロも時計もこの世界に修正しておく』


 サービス良すぎだろ。


『では、頑張ってくれ』


 去って行ったが、なんだかな。よく見れば塗装が真新しい。本当に新品なら35ノットの高速を発揮できるだろう。


「艦長。今後の行動指針を教えてください」

「通信か。機材はどうか」

「異常ないはずです。受信が一切ありませんので、正常かどうか判断できません」

「受信が無い?」

「電波を拾えません」

「どういうことだ?まさか交流を持つことが出来ないというのはこのなの事か?電探はどうか」

「発振はしていますが、対象物が無いので正常かどうか判断できません」

「まあ新品という事だ。正常として動こう」

「はあ」


 さあどうするか。とりあえず、船の性能を確かめねばなるまい。


「機関長、艦長だ。機関はどうか」

「機関です。凄く調子よさそうです。蒸気圧、蒸気温度とも規定まで上がりました。行けます」

「良し。これより全力運転に入る。覚悟しろ」

「お任せを。35ノット越えて見せます」

「頼む」


「全艦、艦長だ。これより全力運転に入る。各部の固縛を確認せよ」


 艦内では慌ただしいだろうな。

 やがて「固縛個確認完了」の報告が各部から上がる。良し行こう。


「航海。海図信じていいのかな」

「艦長。今更ですよ」

「そうだな」


「見張り員、身体確保は大丈夫か」

「「はっ、大丈夫です」」

「良し。操舵手、進路固定。直進する」

「機関、全身最微速」

「最微速ヨーソロ」


 微振動と共に徐々に動き出す。徐々に速力を上げていく。

 速力がおかしいな。35ノットだと?

 最後の頃はドック入りもかなわず、機関の能力低下や水線下にこびりついた牡蠣とフジツボのせいで30ノット程度しか出なかった。新品というかそれ以上か。


「機関、まだ行けるか」

「艦長、余裕です。後5ノット行けます」

「では38ノット行くぞ」

「38ノットですか。機関はまだ余裕があります。了解」


 その日、40ノットには届かなかったが、39ノットを記録した。機関長が言うには「機関はまだ行けそうだが限界が判らないのでそれ以上上げなかった」と言った。運動性もかなり良く以前の船体と全く別物とわかった。ひょっとしたら船体やスクリューなども図面通りの理想型になっているのかも知れない。


 

ヤップ島基地は日本軍と話が付いているという事で。島の北側で飛行場の有る方ではありません。

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