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濃灰の艦隊  作者: 銀河乞食分隊
序章
13/73

トラック島破壊作戦

 夕雲は出撃した。

 トラック島基地破壊のために。

 かつて日本海軍の重要拠点で在ったトラック島を攻撃するのには、思うところが無い訳ではない。しかし、既に敵の手に落ちているとなれば余計な感傷は不要だ。

 作戦は、以下である。


 主目標

 タンク群の8割破壊(20基以上)タンクは重油、ガソリン問わず。

 軽巡2隻、駆逐艦4隻の撃沈。

 

 主目標に対しては先に邪魔になる艦艇の撃沈を優先させるとした。艦艇の数を減らしてからタンク群への攻撃を行う。

 タンク群の攻撃は、砲弾節約の意味から特別陸戦隊を編制。上陸し爆薬で破壊するものとした。砲弾節約は艦艇を撃沈するのに必要な弾薬量の計算が出来ないためである。

 戦闘は、00:00にトラック周辺海域の敵艦を沈めることから始める。黎明時、太陽を背に北東水道より環礁内に突入。環礁内の敵艦と脅威となる砲台や機銃座を排除。

 内火艇2隻で春島のタンク群をまず破壊。その後、夏島タンク群を破壊するとした。内火艇指揮は水雷士と砲術士にそれぞれ任せる。水雷士と砲術士なのは爆薬を取り扱うからだ。

 上陸シャンりくの下士官には、戦闘全般の指揮を執って貰い、爆破自体は水雷士と砲術士が行う。

 幸い補充された人員の中に上陸シャンりくの下士官がいた。かの下士官に戦闘指揮を執って貰うことになる。

 作戦時間は24時間を設定。演習ではないので6時間という縛りは無くなっていたが、緊張を強いられる戦闘を人員不足気味の1隻で長時間続けるのは無理があり、最大24時間とした。もちろんそれ以前に目標を達成すれば直ちに離脱する。


 また戦闘海面であるが演習海面よりも広い一辺60海里となった、10海里の拡大がどう影響するのかはやってみないと判らない。


 今回初めての実戦である。艦艇用ポーション、人員用ポーションとも全量を持っていく。継戦能力の維持に必要であろう。



 00:00。作戦海面に突入する。

 まず、南東角から入った。その後外周を北へ、そして東へ向かい黎明時に北東水道から環礁内に侵入する。現地海軍が設置した機雷堰の位置情報は海図に記載されている。以前の通りであれば良いが。


 突入後2時間


「電探、方位30、距離18000に反応2、小型」

「砲術、砲撃だけでやる」

「砲術です。確認します艦長。1隻当たり照準に10発、撃沈に10斉射60発まで」

「そうだ、砲術。今回対地砲撃用に榴弾を各砲40発用意した。徹甲は何隻いるかわからん現状では、あまり使いたくない」

「電探射撃が精密なので可能ですが、考えてみると厳しいです」

「貴様なら出来る」

「ありがとうございます」 


 その後、2隻の駆逐艦を撃沈した。要した砲弾は90発。まずまずである。1門当たり300発の砲弾が弾火薬庫に用意されるが、各砲40発の榴弾があり、対艦用徹甲弾は260発である。

 1560発の徹甲弾と16本の魚雷で敵艦を撃沈しなければならない。敵艦の数が判らない中、節約はしないと。

 残り徹甲1470か。軽巡だと200発以上必要だからな。魚雷をどう使うかが鍵だろう。

 北上し駆逐艦1隻を撃沈。砲弾50発使用。1420発。

 北部海域で軽巡1隻と駆逐艦1隻に遭遇。相変わらず電探を装備していないのか、夜間遠距離砲戦で圧倒する。砲弾250発と魚雷2本使用。残1170発、14本。

 魚雷で始末するための接近したところ、大口径の機銃で撃たれた。電探アンテナの損傷があったので艦艇用ポーション弱1本使用。ポーションを使った。乗員2名が重症を負い人員用ポーション弱2本使用。

 この時点で赤ブイ1個、黄ブイ1個、白ブイ2個を回収。


「先任、軽巡が落とした赤ブイ、大きくないか」

「明らかに大きいですね。ひょっとしたらこれが普通で、演習は小さくしているのかもしれません」

「そう言う考えもあるか」

「私はそう考えます」

「正しい気がする」

「神のやることですから」

「考えたら負け、だな」


 ブイが多いので意外に回収時間が掛かる。そろそろ北東水道に向かわないと黎明時を逃してしまう。


「先任、予定変更だ。隅をたどらず北東水道に向かい環礁に突入する」

「了解しました」


 艦は無事環礁内に侵入した。機雷堰は、無いか以前の通りだったようだ。


「春島より小型艇多数」


 見張りより驚くべき報告が有った。


「小型艇。なんだ」

「小型艇。魚雷艇の模様」

「魚雷艇だ?」

「そうとしか思えません」

「そうか。砲術、機銃で迎撃せよ」

「砲術、了解」

「機関、両舷前進全速」

「面舵、進路三百五十」


 機銃指揮の砲術士は慌てた。上陸に備えて確認していたのだ。


「機銃員は配置に就け」


 なんだ、今の放送は。 

 そう言えば最近、砲戦の間は配置に就いていなかったので、配置に就けていなかったのだ。

 俺のミスだな。人には偉そうに言っておいて。まあ今は反省よりも迎撃だ。

 夕雲は片舷に一式三十三ミリ四連装機銃を1基、エリコンFFS機銃四連装を1基装備している。他にエリコンFFS機銃単装も装備しているが、単装の目視照準はよほど近くないと当たらないだろう。

 三十三ミリ機銃の威力は凄まじかった。次々と撃破していく。それでも近づく魚雷艇はいる。


 追いすがる魚雷艇だが速度差が少ない。なかなか近づけない間に機銃で撃破されていく。


「左舷三十三ミリ機銃、弾切れ」


 いかんな。アレは装弾数こそ銃辺り200発と多いが、次弾装填に5分くらい掛かる。右舷機銃を使うように向きを変えるべきか、どうするか。エリコンも撃っているようだが遠いだろう。牽制以外にはならんな。


「艦長。砲術。後部主砲の発砲許可を」


 仕方ないか。


「砲術、各砲10発までだ。榴弾を使え」

「榴弾了解」


 後部主砲の発砲許可を得た砲術は少しして撃ち始めた。

 じりじり近づいてくる魚雷艇の群れに突然大きい水柱が上がった。徹甲とは水柱の大きさが違うな。大きい。転覆する魚雷艇。次弾では吹き飛んだ。機銃とは威力が違うな。残り数隻となったところで砲声が止んだ。


「艦長。10発終わりました」

「わかった」

「こちら機銃。次弾装填完了。撃ちます」


 機銃掃射で残りの魚雷艇は壊滅した。何隻か撃ってきたが、回避に成功。

 まず春島を一周して、砲台や対空機銃の破壊だな。


「航空機、春島陰から接近」


 見張りからだ。電探は?


「砲術」

「迎撃開始します」


 電探は影で見えなかったのか? 

 速力を上げるか。艦砲射撃用に落としていたが回避出来ないではな。


「機関、前進第四戦速」

「先任、ここを頼む。俺は防空指揮所に上がる」

「了解。お気を付けて」

「おう」


 艦橋からハッチを開けて防空指揮所に上がった。外は暑い。ここにいる対空見張り員はもっと暑いよな。

 ハッチから出る頃には機銃が撃ち始めていた。近いのか。


「艦長。接近してくる機影は4機。2機は撃墜。2機は一度離れました」


 指さす方向を双眼鏡で見る。確かに2機だ。こちらへ向かってくるのか。


「新たな機影。低い」

「雷撃機なのか」

「4機、低いまま来ます」


 参ったな。ここで艦首を雷撃機に向けると春島に接近しすぎる。座礁はいやだぞ。それに対空砲が撃ってくるかもしれん。


「見張り員、機種はわかるか」

「識別表にはありません」

「またか。向こうの奴だな」

「アメリカでは無いようです。複葉機ですがソードフィッシュには見えません」

「運動性はどうだ。襲撃訓練で九七艦攻を見ただろう」

「ずっと鈍いです」

「なら問題ないな」

「はい!」


 6機の敵機は爆撃機が2機と雷撃機が4機だった。爆撃機はやはり複葉機で急降下爆撃機では無いのか?緩降下爆撃しかしてこない。雷撃機は高度100で接近してくる。速度も100ノット出ているのか?防空研修で受けた内容とはかなり違う。へぼい。B-25の方がよほど動くのでは無いか。

 結局、機銃だけで全機撃墜した。しかし、防空指揮所に出て良かった。敵をこの目で見たのだ。



 夕雲は敵機の襲撃から逃れ、艦砲射撃をすべく再び春島の周回に入った。敵の雷撃機と爆撃機がアレなら機銃だけで十分だろう。

 砲台との撃ち合いはやはり分が悪い。艦艇用ポーション弱1本使用でようやく春島の砲台と機銃座の壊滅に成功した。


「陸戦隊はどうか」

「内火艇を降ろしています」

「そうか。どうもこんな場所で停船しているのはケツがむず痒い」

「確かに」


 内火艇2隻が特別陸戦隊を乗せて桟橋に向かっていった。


「よし、機関始動。夏島に向かうぞ」


 目標は春島と夏島にしか無い。他の島は無視したいが飛行場があるので見てみないとなと思い、進路を変更した。


「砲術、榴弾の残りは」

「各砲宛て15発です」

「砲台との撃ち合いはやはり使うな」

「本当です」

「飛行場の破壊は無理か」

「残念ながら」

「では機銃での迎撃しか手は無いな」

「はい」


 夏島には数機の機影が見えたので、三十三ミリ機銃で掃射を命じた。後は冬島と秋島か。同じように機銃で掃射をした。砲台はさすがに主砲で吹き飛ばす。しかし敵の動きが鈍い。鈍すぎる。まさか無人なのか。


「8時、艦影。距離8000。月曜島陰からです」

「電探。230度、距離8000、反応小さい」


 夏島タンク群を破壊しようと向かう途中、見張りと電探から報告が有った。 

 駆逐艦か?


「砲術」

「追尾中です」

「撃ちます」


 ほう、初弾命中とはな。


「全門斉射」


 3斉射で敵艦は沈んだ。轟沈だ。ブイは拾おうにも内火艇は春島だ。カッターでは引っ張りきれない。此所に置いておいて余裕があれば拾おう。無ければぶつければいい。


「艦長。タンク群破壊成功とのことです」


 通信が報告してきた。春島の方からは黒煙と爆発音が聞こえている。拾いに行くか。

 内火艇を収容した。


「艦長、質問よろしいでしょうか」

「なにか、水雷士」

「はっ、夏島タンク群を破壊するのでしたら内火艇2隻を収容することなく、爆薬を降ろしていただければ良かったのではと」

「実はな、時間が押してきた。今何時だ」

「13:35です」

「内火艇で上陸、爆破作業。合計で3時間掛かった。もう一度やれば17:00になるだろう」

「確かに」

「少し時間がな。思ったようにはいかないものだ」

「では夏島上陸は中止ですか」

「砲撃で片を付ける」

「了解です。では、特別陸戦隊解散します」

「ご苦労だった」

「ありがとうございます」


 水雷士は集合している陸戦隊のところに行き説明をしている。解散したな。

 夏島タンク群を破壊し、砲台も破壊する。もう榴弾は残っていない。徹甲も600発程度まで減った。

 先ほどのブイは回収せずにぶつけた。

 春島タンク群は14基全て破壊したという。夏島タンク群は目視だが8基はやっただろう。十分な戦果だ。駆逐艦も4隻撃沈した。

 後は軽巡1隻だ。どこに居るのだろう。


 軽巡はトラック環礁から出ていくらもしないうちに邂逅した。もう薄暮時間だが、こちらは西日に向かって航行している。敵は西日を背に受けこちらに向かっている。こちらが明らかに不利だ。見張り員も見ずらそうにしている。


「電探、艦橋。本艦正面、距離1万7000」 


 電探が有る。夕日など関係ない。


「速力推定30ノット」


 30ノットか。こちらも30ノットだ。1万7000など、あっという間だな。


「砲術、最初から全力射撃でいい」

「良いのですか」

「構わん。あいつをやり次第、離脱する」

「了解しました」


「水雷、機会を作るから8本行け」

「良いのですか」

「残しても仕方ないからな」

「必ず当てます」

「頼む」


 そこからは早かった。敵艦の頭を押さえてまず一撃。転舵した敵と同航戦とし、魚雷を発射。主砲は急斉射30回と撃ちまくった。


時間じかーん


 水雷科の計時係が声を上げた。わくわくする瞬間である。

 敵の艦腹に水柱が上がった。1本だが、1万での発射だ。8本中1本。十分な命中率だ。敵は徐々に傾斜を増し、横転した。

 さあ、ブイを拾ってさっさと離脱だ。

 このブイも大きかった。本番はやはり違うのだろう。


 砲弾も残り少なく、電探で敵を回避しながら離脱した。


 ヤップ島に帰ると、何時のようにに曳船任せでドック入りする。

 我々は、まず開封室だと例によって向かう。開封室に入ると机の上に封筒が。


  神より


 またか。今度はなんだ?電話で済ませることは出来ないのか。


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 無事、本番が成功したようだな。

 まずは、ご苦労。


 さて、ブイが大きいのはわかったと思う。それが中型ブイだ。本番では巡洋艦のブイは中型。駆逐艦は今までと同じ大きさだ。

 ブイの大きさは四種類ある。駆逐艦の小型、巡洋艦の中型、戦艦の大型。空母の大型。潜水艦は小型から中型まである。あと、ブイにラインが入っているが、艦の大きさでラインの本数は違う。頑張って集めるように。

 中身も若干だが豪華というか増えている。

 数は1隻1個だ。


 さて、ブイは理解して貰うとして、問題が起こった。

 侵入者のやり方が変化した。

 今までは、沿岸部を占拠して拠点をつくり制圧範囲を上げようとしていたのだが、この星の軍隊の頑強な抵抗を受け上手くいかないのか、拙いものを持ち込んできた。


 ダンジョン生成器だ。意味がわからないと思うが、ヤップ島の拠点と演習海面を合わせたようなものを創り出す。そしてそれは、1カ所のダンジョン生成器で複数創り出すことが出来る。このダンジョンが完成すると、1年間で昭和16年当時の連合艦隊規模の艦隊を作り出すことが出来るようになる。

 何故この様に言うかと言うと、君たちにダンジョンの制圧をお願いしたい。

 この星の勢力はダンジョンに入ることが出来ない。入ることが出来るのは君たちだけだ。


 まだダンジョン生成器は活動を始めたばかりで、敵は今と変わらないくらいの強さだ。しかし、やがて驚異の兵器を作るようになる。

 不幸中の幸いと言うとなんだが、この世界には1個しか持ち込めていない。他は阻止した。


 君たちにお願いしたいのは、君たちしか頼れないからだ。

 是非お願いしたい。


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 勝手なことを。

 何故こうコロコロ変わるのか?

 皆を見ても不思議そうな顔をしている。


「なあ、艦長」


「なんでしょうか。中佐」


「うむ。神からの手紙は全て見た。此所までの経過も学んだ。そして、それなりに考えたのだが、まだ決まっていないのでは無いか」


「何が決まっていないのでしょう」


「我々の最終目標は決まっているが、そこまでの過程がだ」


「過程ですか」


「そう。今までも神の都合なのかいろいろ変わったね」


「そうですね」


「ひょっとしたら、侵入者と神の間で何か有るのでは無いか」


「当然有ると思いますが」


「争いとか交渉とかは有るだろうね。それは、想像できる」


「では、何が」


「考えたくないが、我々を見て調整していないかという事だ」


「調整ですか?」


「そうだ。これまで我々が極端に不利になったことは有るか」


「そう言えば無いですね」


「そして、今回の敵を見て思った。何故同じ艦型なのかという事だ」


「それは」


「考えないようにしていたとか、意識から外れていたな」


「確かに」


「私が考えるに着地点は決まっているのかも知れない」


「着地点ですか?」


「侵入者を排除できるかどうかだが、私は最終決戦までいけると考える。そして勝つと」


「勝つつもりではいますが。考えすぎでは」


「そうかな。今まで敢えて考えないようにしていたとか」


 そう言われれば、上手く言えないが深く考え無いようにしていたような気がする。


 それからも皆で話し合った。


  





次回、8月13日05:00 予約済み

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