夢を書き起こしていく①【読切】
実話です。
・・・・・・ここはどこだろうか。僕は喫茶店の前に立っている。
看板はボヤけて読めない。いや、きっと何も書かれてなどないのだろう。
夢に細かい設定などいらないから。
何を思い出したのか、僕は歩き出す。
まっすぐ喫茶店を見据え、ドアを開ける。ベルの音など聞こえない。
中を覗く。・・・店内はアニメショップだった。
所狭しとモノ、モノ、モノ。人も多い。
誰か有名人でもいるのか、はたまた人気のグッズでも入荷したのか。ごった返して、暑苦しい。
・・・・・・本当によくわからん世界だ。
しかし、喫茶店の要素もあった。
僕から見て右にはバーカウンターらしきもの。左にポツリと椅子とテーブルが一つずつ。
そこには、女の人が座っていた。人混みから目を背けるように、窓の外を眺めている。
容姿はボヤけて、もはやのっぺらぼうと遜色ない。でも、不思議と恐怖は微塵も感じなかった。
僕はなんの躊躇もなく、女の人の膝の上に座った。
女の人も何一つ文句を言わない。
女の人が食べていたのか、テーブルの上のお菓子を貪りながら、ボーッとする。
窓の外はの風景はどこかノスタルジック。思い出す努力すら億劫でしようとしなかったが。
しばらく眺めていると、トイレに行きたくなった。
そういえばまだ何も飲んでないのになと思いながらも、生理的欲求に抗う理由はない。
トイレの場所を考えながら立ち上がろうとすると、女の人が呟いた。
『トイレはあっちね』
・・・・・・いや、なんで思考読めんの?つーか、あっちってどっち?
しかしそれでも言わんとしてることがわかってしまうのが、夢である。
そして僕は人混みに飛び込んでいった。
かき分けて進む。肉の圧を四方から受けながらも、進む。
カウンター越しの店員が実は蝋人形で、店内の熱気でちょっと溶け出してても、特に突っ込まず進む。
やがて、トイレの前に着いた。目印なんかはないが、なぜかわかる。
ドアを開けるためにノブを握ろうとすると、・・・・・・自動ドアだった。
ノブの役割はなんなのだろうか。しかし、僕はさも当然だったかのように歩き出す。
中はトイレではなく、大衆浴場だった。・・・・・・と見せかけてトイレだった。
本来シャワーが設置してあるはずの場所が、トイレだ。人はまばらにいる。
僕は用を足そうと、一つの便器の前に立つが・・・・・・低い!
便器が低いのだ!
しゃがんでも、あいつのポジションが上にくるぐらい低い!これは誰のためのトイレなのだろうか。
しかし、我慢するのがちょっと辛いぐらいまできていた。用を足せないことはないだろう。
・・・・・・しかし出さない。
僕は立ち上がって、他の便器を探すことにしたようだ。しかし、便器はどこも埋まっていた。
僕がさっきまでキープしていた欠陥便器もいつの間にか他の人が用を足している。
というか、振り向いたらいつの間にかトイレの中央に大浴場ができていた。おじさんが人目もはばからず、全裸で入浴している。
僕は何事もなくそれを受け止め、次なる便器を求めて旅をする。
真ん中の凹を避けつつ、空き便器はないか捜索を続けると、妙な光景を目にした。
周りの人が一斉にしゃがみだし、そのまま用を足し始めたのだ。
お風呂場で用を足すことは何の罪にも問われないのだという確固たる自信をみなぎらせて。
・・・・・・当てつけかと思った。
まるで僕が間違ってるみたいじゃあないか。
トイレはトイレでする、当たり前じゃないか。
しかし、辛かった。目の前でスッキリされるというのはたまらなく不快だ。
自分の苦しみを無尽蔵に増幅させる。
僕は迷っていた。割と本気で。
このまま用を足すべきか、便器を探すべきか。
決断に目を閉じた瞬間、
・・・・・・夢から覚めた。
多分目が覚めてなかったら、十数年ぶりにお漏らししてたと思います(笑)
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