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第3話 火の神子

ここは皇帝の玉座の間、そこに必死の形相の紅琳が居た。


「兄上どうかお願いします、花南様を助けてください!」


紅琳は玉座に座る男にひれ伏した。


「紅琳それはどういう事だ。」

「私が兼ねてより匿っておりました少女が、衛兵に曲者として捕らえられてしまったのです。」

「私に隠れて匿っていたのか。」

「左様でございます。私めが全て勝手でしたことでございます、故にどんなご沙汰もお受けいたします、だからどうか花南様を……。」

「どうして紅琳はその娘に入れ込んでいるのだ?」

「それは……」

「顔を上げろ、紅琳。」


恐る恐る紅琳は顔を上げた。


「兄上、花南様は黄金の腕輪をお持ちでございます。」

「なんだと、それは真か?」

「真でございます。花南様はただの少女ではございません。」

「まさか本当に現れるとは……、」





私が牢に入れられてしばらく時間が経った、もう朝になっている。

自分がしんどいのは勿論だが、それ以上に紅琳が心配だった。


紅琳さんも私を匿っていた事がバレて酷い目に合わされてるかもしれない。


何も知らない未開の地で助けてくれたのは紅琳だった。その恩に自分は報いらなければならないのにこんなことになってしまうとは。

自分が情けなくてならない。


ぼーっとしていたら廊下の遠くの方からパタパタと足音をたてて近づいてくる音が聞こえた。何事かと身構えて居ると、現れたのは紅琳だった。


「花南様!!」

「紅琳さん!!よかった無事なんですね。」

「申し訳ありません、不測の事態を予測していなかった私の責任です、すぐここからお出しします。」


そう言って紅琳は鍵を取り出して、牢屋の鍵を開けた。


「ありがとうございます、また助けられてしまいましたね。」

「いいえ……。」


紅琳の表情が曇った。


「どうしたんですか??」

「本当はこうなる前に花南様を元の世界に返して差し上げたかった。」

「え??」


どういうことだろうか??


不思議に思ったが、紅琳はそのまま話を続けた。


「兄上がお呼びでございます。どうか謁見の間へ。」

「紅琳さんのお兄様にですか……??」

「参りましょう。」


紅琳に手を引かれて牢を出ると、そのまま目を見張るほど絢爛な作りである廊下を抜け、大広間にたどり着いた。

信じられないほど広く美しい部屋は、先程通ってきた廊下など比べ物にならないほど美しく、そして大勢の人がひれ伏していた、階段作りになっている所の上に玉座があり、優しそうな青年が座っていた。

紅琳は私を連れたまま広間を進むと、青年の前でひれ伏した。

私もそれに続いて頭を下げる。


「陛下連れて参りました。」


陛下?


耳を疑った、陛下というのは王様や皇帝などを刺す時に使う言葉である。自分はとんでもない所に来てしまったのではないかと、心無しか指が手が震えた。


「よく来てくれた、顔を上げてくれ。」


私が真っ青になっているであろう顔を上げると、青年は優しそうな笑みをうかべた。


あ、紅琳さんに似ている……。

ふとそう思った。


「私は現花炎国皇帝、花珀(かはく)と申す。先程は紅琳の客人だと知らずに申し訳無いことをした。」


やっぱり皇帝だったかぁ、てことは紅琳さんは皇帝陛下の妹……??


また肝が冷える思いをした。脳の処理が追いつかず一旦停止していると花珀が心配そうな眼差しで見つめてきた。私は慌てて笑顔を作った。


「大丈夫です、これくらい全然平気です!!」

「そなたの名は?」

「は、春好花南と申します!」

「花南か……。」


そう言うと花珀は佇まいを治して再び私に向き直ると真剣な眼差しで語り出した。


「実は花南、そなたに私から頼みたいことがあるのだ。」

「頼みですか?」


びっくりして紅琳の方を見ると彼女の顔は悲しそうに歪んでいた。


「我が国は現在、隣国の大国、麗水国(れいすいこく)と戦の最中にある。しかし思ったより戦が長引いていてな、麗水国を守護せし水の神の玄冥(げんめい)の加護が得られなくなり、我が花炎国では殆ど雨が降らなくなってしまった。そして現在は日照りの日々が続き多くの民が苦しんでいる。そして沢山の民が死んでいるのだ。」


難し過ぎて、よく分からなかったが、この国が危ないということは理解出来た。でもどうしてそんなことを私に話すのだろうか。


「なんとなくお話はわかりました、でもどうしてそれを私に??」


私がそう言うと、花珀はゆっくりと私の手首にある腕輪を指さした。


「そなたが選ばれし少女だからだ。」

「え?」

「花炎国の火の神子になってほしい。」

「え?え?」


神子?選ばれし?どういうこと?

やはり頭が追いつかなくて頭がフリーズした。しかし花珀はお構い無しに言葉を続ける。


「選ばれし少女が神子になり、神に祈りを捧げるとその国には平和が訪れるのだ。どうか頼む、この通りだ。」


そう言って花珀は頭を下げた。

皇帝に頭を下げさせることなんて出来ないと私は慌ててそれを止めた。


「そんなこと止めてください、でも私なんかに神子など私に務まるとは思えません。」

「その腕輪がそなたを導いたのだ。そなたは祝融に選ばれし神子なのだ、これはそなたにしか出来ないんだ。」

「そんなこと言われても……。」


その時ずっと黙っていた紅琳が大きな声を上げた。


「やはり遠くの世界からいらっしゃった花南様を巻き込む訳には参りません。元よりの計画通り私を麗水国の帝の妾として献上してください!」


その瞬間、花珀の目の色が変わった気がした。


「紅琳黙れ!」

「黙りませぬ!」


私自身も紅琳の発言は聞き捨てならなかった。

妾、と確かに今彼女は言った。妻ではなく妾として、政略的に一国の姫が好きでもない男に身を渡さなければならないと言うことだ。

私をこの世界に来てから助け続けてくれた、紅琳がそんな風になるなんて耐えられる筈がない。


「妾ってそんなの、」

「私は大丈夫です。女は男の政治の道具になるが運命(さだめ)どうか花南様を巻き込まないでください。」


「そんなのダメだよ!!」


気づいたら私は声を上げていた。そこに居た誰しもの視線がに注がれる。でも意を決してそのまま私は声を張り上げた。


「紅琳さんは私のことを助けてくれた、だから私も紅琳さんのことを助けます、私が神子になります!!」


花珀は深く頷くとそこにいた臣下達に向かって声を張り上げた。


「今よりこの方はこの花炎国を救う火の神子となられた!皆で命をかけ神子のことを守ること、よいな!」

『は!』


とそこに居た全員が私に向かって跪いた。

なんだかよく分からないがとても気まずい。

オロオロしている私の死角で、崩れ落ちて涙を流している紅琳に誰も気づくことはなかった

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