表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

6 証拠



殺人のために人を殺す。そんな殺人鬼の存在を忌み嫌った女性刑事、ヒストレード。彼女は、殺人鬼逮捕のため尽力したが、思うような結果は得られなかった。それでも、根気強く殺人鬼を追う彼女に、殺人鬼を見たという女性のことが耳に入る。


マーラ。男爵家の末っ子で、殺人鬼に姉を殺された被害者だった。


初めてマーラから殺人鬼の特徴を聞いたとき、ヒストレードはこれで殺人鬼を逮捕できると思った。しかし、ことはそう簡単に運ばず、殺人鬼は見つからなかった。


我慢の限界だったのだろう、マーラも独自に殺人鬼を追い始めたことを知って、ヒストレードはマーラと情報を共有することを提案した。

民間人が殺人鬼を追うことをよく思っていなかったが、殺人鬼をすぐに捕まえられない自分がマーラを止めることはできないと思い、せめて協力をすることにした。


それから、マーラとは数度の手紙のやり取りがあり、最後の手紙では閉鎖的な村に入ることができたという報告と、しばらく連絡はとれないということが書かれていた。


その村に、直感的に何かを思ったヒストレードは、その村の隣町を拠点に捜査を始めることにした。

そして、3日。特に手掛かりがないまま日が過ぎていたが、マーラが入った村の者と接触することができた。それだけでなく、その村人は殺人鬼の姿絵に反応をしていた。


彼女は何かを知っている。



「どんなことでもいい。知っていることがあるなら、教えてくれるかね?」

「・・・もしも、この絵姿にそっくりな人がいたら、刑事さんはどうしますか?」


 その質問に、もちろん逮捕すると、言ってしまいたかった。しかし、顔がそっくりというだけでは証拠として弱く、すぐに逮捕するということはできない。

 最低限の証拠。例えば、殺人鬼を見たマーラに顔を確認してもらい、その者が殺人鬼だと証言してもらうことができなければ、身柄を拘束することはできない。


「その人物を調べる。」

「・・・やっぱり、そうですよね。」


 殺人鬼を野放しにするのか!と怒鳴られることも予測したが、ヒストレードの予想と違い、村人は刑事の職業に多少理解があるようだった。


「それで、似たような人物を知っているのかね?」

「・・・はい。」


 小さい声だったが、はっきりと肯定する村人。ヒストレードの胸には、表現できないほどの喜びにあふれた。それは、殺人鬼の顔がわれた時の比ではない。


 やっと、やっと捕まえることができる。


 すぐに捕まえることができないのは、少し前に確認したのでわかっているが、それでも逮捕すべき対象を確認することができたのは、とてつもない達成感だった。


「その人物は、君と同じ村人かね?」

「そうです。数か月前に、どこからかやってきて、村の一員になりました。この姿絵のように、整った顔立ちをしていて、金の髪に青い瞳をもっていました。・・・とても気さくな人で、すぐに村に溶け込みました。」

「・・・」


 ヒストレードの脳裏に、マーラの証言が浮かぶ。

 第一容疑者と考えていた、姉と交流を持つ、いつも一人でいる気さくな男。殺人鬼は、やはりその男だったのだろうか?


「その男を調べたい。村に入ることは可能かね?」

「・・・刑事さんが身分を明かせば、入ることは可能だと思います。」

「入ることは可能・・・何か、懸念することでもあるのかね?」

「・・・彼は、村に必要な人です。なので、彼を調べに来たことが知れれば、村人は彼を逃がすでしょう。」

「なるほど。では、この姿絵は出さないことにしよう。」

「・・・刑事さん。」

「他にも何か?」

「いえ、ただ。・・・刑事さんが探すべき証拠・・・とは、どのようなものでしょうか?」


 殺人鬼は、間違いなく殺人鬼であることを隠している。なら、殺人鬼につながる証拠など持ち歩いていないだろう。犯行に使った凶器などがあれば、決定的な証拠ともいえる。しかし、まずない。


「犯行現場を押さえるのが、一番手っ取り早いが・・・いや、なんでもない。証拠を探すことは難しいであろうが、殺人鬼の口から殺人鬼しか知りえない証言を引き出したりなど、方法はいくらでもある。心配は無用だ。」

「そうですか・・・」


 その時、少しだけ村人は微笑んだが、ヒストレードはそれを見逃した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ