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日常から非日常へ。  作者: 稲平 霜
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過去の記憶の雲

80話




ここは俺の心の中だ。オロベインに止められた所までしか覚えていない。俺にここで何をしろと言うんだ。心の中だから死のうにも死ねない。外で栄養を与えられない事を願う。そうすれば俺は死ねる。そんな事を俺は懲りずにずっと考えている。


突如視界がフラッシュバックし、 目を開くとそこにはかつて自分が住んでいた町。ニノモだった。

「おーい!今日も手合わせしようぜー!」

なんでここにいるんだ俺は。

「おーい!聞いてんのか!?」

俺に何を見せたいんだ。

「おい!」1人の少年の声で俺は我に返る。

「おい!さっきから呼んでるだろ!ラフ!」この声は聞き覚えがある。恐る恐る少年の顔を見るとそこには少年の姿のヴァイルだった。俺の身体を少し触ってみると、小さくなっているのがわかった。

「おい!いい加減にしろ!」ヴァイルはそう言って俺の頬を引っぱたいた。俺は叩かれた頬を押さえて。

「何だよ!今考え事してたのに!」俺がそう言うとヴァイルは遠くに走っていき。

「ぼーっとしてるからだよ!ほらやり返してみろよー!」ヴァイルはそう僕に言ってきた。俺は柄にもなくムキになってヴァイルを追うように走って行った。


また生きているヴァイルに会えると思っていなかった。走りながら俺は涙を流す。今まで堪えていた分溢れ出す涙を拭い走って乾かした。

「待てー!」俺は口角を上げ、そう言ってさらに加速する。

「はぁ....はぁ....はぁ....!わっ...!」ヴァイルは息を切らして走った後、石に躓いて転んだ。奇跡的にもそこは草原で怪我など無かった。そのまま仰向けに寝転ぶヴァイルを見て、俺も隣に寝転がった。

「今日は、はぁ.... 。これで、はぁ...。勘弁しといてやるよ...。」ヴァイルは隣に寝転がっている俺に向けて言い放った。

「既に、はぁ...はぁ...。んぐ...。満身創痍じゃないか...。」俺はヴァイルへ息切れを起こした話し方で言葉を放った。


息が整い、空に浮かぶ太陽を見つめる。

「お前さ。大人になったら何になるんだ?」ヴァイルが柄にもなくそんな事を聞いてきた。

「俺は...。」俺は言葉に詰まる。しかし、すぐ言葉は出てきた。

「俺は冒険者になりたい。」

「カッカッカッ!なんだそりゃ!勇者にでも憧れてんのか?」ヴァイルは俺の言葉に笑い、言葉を放った。

「お前こそ何するんだ?」俺は冷静にそう聞いた。

「聞いて驚けよ?オレも冒険者なんだ!」ヴァイルはそう言って笑う。未来の事を話せるこんな幸せな時が続けばいい。そう思っていても俺は知っている。この後、ヴァイルは死ぬ。だから辛い。

「どうしたんだよ。黙り込んで!」ヴァイルは黙り込む俺に言葉を放ち笑う。

「いや、なんでもない。」俺はそう言って太陽が雲に隠れると同時に起き上がった。

「なんだよ。もう帰るのか?」ヴァイルは起き上がった俺に言ってきた。俺は手を肩辺りまで上げて振った。

「じゃあ、またな!」俺は元気よくそう言った。するとヴァイルは無邪気に笑ってまた寝転がった。


なぜ昔の記憶の中にいるんだ。ここでできることなんてないのに。でも実際ヴァイルと話して気が紛れた。これが妖精王オロベインの力というのなら少しは感謝しないとな。こんな俺まで救おうとしてくれるのだから。

「お、帰ったかラフ。」俺が自然と帰ってきた家には父が魔法書を開いた。帰ってきた俺にはおかえりの言葉を放った。

「ただいま?」俺がそう言ってドアを閉めると父が言葉を放つ。

「なんで疑問なんだ?ここはラフの家だぞー!」父は元気よく笑いながら言葉を返してくれる。俺はその言葉にほほ笑みかける。


「何してる?」俺は父の読んでいる魔法書を覗く。それと同時に父は魔法書を持ち上げる。

「父さんはまだラフに魔法を覚えさせたくない。」それから本を奪い取ろうとしても父は断固として渡してはくれなかった。


「最近どうだ?冒険者に近づいているのか?」父はくつろぐ俺に唐突に聞いてきた。

「そうだな。割と良くなってきている気がするよ。」俺は目を瞑って自慢げに答える。身体が子供だからか子供のような威張り方をしてしまう俺は少し恥ずかしくなった。

「そうか。いつかラフがこの町から出ていくとなると寂しくなるなー。」父は腕を組んで頷きながら話していた。

「そんなすぐじゃないんだから平気だって。」俺がそう言うと、父が恐ろしく気持ち悪い素早い動きで俺に寄ってくる。

「悲しい事言うなよ!ドライだなー!」父はそう言って俺の足を掴む。俺は呆れた顔をしてそっぽ向いた。


ここにいることによって段々子供に戻っている気がする。早くここから抜け出さないと。俺がそう考えているとどこからともなく声が聞こえる。

「それでいいのか?一度助けられなかった友人を助けたくはないのか?」その声は一瞬で消えた。

わかった。そうなんだな。俺がここに来た理由はヴァイルが死ぬのを防ぐ事なんだ。

俺はそう考えて家を出た。外は既に夕暮れだった。

どうでしたか?

面白かったのならよかったです!

次回も読んでくれると嬉しいです!

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