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日常から非日常へ。  作者: 稲平 霜
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最善策の先

77話




先に攻撃したのはハルだ。ハルの容赦ない黒の斬撃は使用人には効いていなかった。

「素晴らしい。流石悪魔の力。私は本当に強くなった。」区切れ区切れに話す使用人にはまだ人格は残っているような気がした。

私を覆うように迫ってくるハエは回避力が高く、私の攻撃では到底殺せない。ハエなどは無視して使用人を叩こうにも、ハエが邪魔をする。普通の飛んでいるハエならともかく、使用人の操るハエは1匹ずつ魔力を持っていて魔力を目の前で放出されるとたちまち私の身体は穴だらけになるだろう。だから先にハエを潰すしか道はない。どちらにしろ八方塞がりな事は変わらくて、私の精神までも追い詰める。私の歯ぎしりする姿に使用人はにやけ顔を晒す。

「もういいや...。特攻してやる...。」私はそう呟いて全身を黒で覆い隠す。そして、ハエを無視して使用人へと斬りかかる瞬間。私の身体は胃を中心に球状に抉られる。突如の出来事で私は攻撃を喰らったことに意識が向かない。痛い感覚は未だなく、振り上げた刀を振り下ろすことにしか集中していなかったからだ。そして、私は刀を振り下ろす時気づいた。攻撃を受けたことに気づき、私の顔は歪み、その場に倒れそうになる。その一瞬の出来事は次の瞬間、何も無かったことになる。私はその現象が起きた瞬間にやけ顔が治まらなかった。

「私に託された力。」そう。私の託された力は全て。記憶も知識と全て引っ括めて託された。そして、もちろん予知の力も。予知の力は使うことによって使用者の動く力を失わせていく。しかし、エリスタは私に病気のない状態の予知能力を託してくれた。お陰で今まで日常生活でも使っていたように、扱える。さらに予知能力からエリスタは時を操る力も得ている。だから私は負けそうになっても何度もやり直せる。

「おかしい。何が起きたのか。不可解。」使用人はそう言ってもう一度私に攻撃を仕掛けてくる。私は目を大きく開く。世界が止まり、この後の結末を見る。私の身体は穴だらけになり、死ぬ未来が見える。私はその結末を変えるため、時間を少し戻し、自分の上手くいくような場所で時を動かす。その時には私は既に刀を構えて、振っていた。使用人は私の行動に驚きを一瞬見せ、多くのハエを私に寄越した。そこで私は時を止め、予知を見る。このまま無理に斬ることが可能の未来が見えた。しかし、斬った後、結末は私の左半身が抉れていた。

「斬れるチャンスはここしかない...。時を進める...!」私は覚悟を決め、刀を使用人の腰辺りに届けた。そこで黒い稲妻を連続で刀の峰に打ち付け、使用人を断ち切った。しかし、それと同時に私の左半身は穴だらけになった。これで使用人が死ぬのは確実。そう思って私が自分自身の身体の時を止め、出血を止めて回復魔法を唱えるとき、使用人はまるで何も無かったかのように起き上がった。


私は想定内というような顔をした。確かに今のはかなり最善策だった。しかし、倒せるとはあまり思っていなかった。私の弱い理由は楽観視している所と相手を強いと、錯覚しているとき私は弱くなるらしい。それはこの1ヶ月でようやく分かったことのひとつだ。そして、私は既にこの先の未来を見ている。その未来は1ヵ月前私の部屋に入ってきたカラスと同化する少年が私の元に現れる未来だ。そして、その時は一瞬で来た。

「どうもこんばんは?」夕暮れのような色に現れたのはカラスと同化する少年だったが、1ヶ月では到底成長できない位の背丈と声音となっていた。カラスの羽根は黒く大きく広がり、威圧感を出していた。

「お前は....。いつかの...。」私は傷を修復しながら言った。左半身がないため起き上がれない。

「やっぱり、王族の周辺には僕の嫌いなものばっかりだ...。」いつかの少年は使用人を見て言った。そして、次の瞬間使用人の周りに飛び交っていたハエは、ほとんど姿を消していた。そして、それと同時にいつかの少年は使用人の背後に移動していた。

「まだいける?コーズ。」いつかの少年は1人でそう言った。私の記憶が正しければコーズというのは少年のカラスだろう。コーズが反応するように羽根が揺れる。突如、いつかの少年はよろけた。

「脆い。弱い。私。強い。だから、負けない。壊す。」使用人は段々単語が増えてきていた。理性が無くなってきているのかもしれない。これが悪魔に魂を売った代償なのかもしれない。よく見ると使用人の背後からさらに多くのハエの群れが寄ってきているのが見えた。そして、そのハエの量は50坪の家を覆い隠せるほどの量だった。

「まずい...。」私がそう呟いた瞬間ハエの群れは君臨する者を中央に円状に避けていく。その中央には私たちを見下すように飛んできていた。

「醜い人間は私が葬って殺らんとな。さぁ、お前もわしの糧となれ。」そう言ってハエの群れの中にいる者は手の平を使用人に向けた。そして、次の瞬間使用人は地面ごと消えてなくなった。上空から地面に降りてきて口を開くのはハエの群れの中にいた者だ。

「ゼルゼブ。ハエを操る王とでも言っておこうか。」ゼルゼブと名乗る者は人ではない。悪魔に近しい存在である事だけが魔力量でわかった。

「さぁ、私が直々に葬ってやろう。人間。」ゼルゼブはそう言って手の平を私たちに向けて来た。

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