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日常から非日常へ。  作者: 稲平 霜
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真相と行動

75話




私は小さな王国で生まれた。言動がキツイ母と言葉遣いが優しい父が私の唯一と言える大切な人だった。

私が5歳の頃。母は病によって倒れた。父は国を治めるのに忙しく悲しんでいる暇もないようだった。それから父と話す機会が無くなり、父は私に無関心になった。

そして、その5年後。私が10歳になった頃。私は未来を見れるようになった。その確信がついたのは父が国を治めている時、その先の未来が見え、私が見たものの通りになったからだ。しかし、無意識に未来を見さされることによって、私の体は疲弊し、衰弱していった。しかし、そんな事は父の耳には全く入っていなくて、国のことばかりやっていた。いつしか私はこの先の未来のために手紙を書き出した。誰かが見るかも分からないのに。私はそれでも書き続けた。衰弱する身体は段々と目まで見えなくなっていた。

そして、6年ほど経った頃、遂に私の身体は動かなくなった。よく6年まで生きれたと思っている。私は目を閉じその時を待ち、手紙を1枚、曖昧な視界の中書いた。そして、ようやく訪れたと思われた死の時は時間を止めた。私の脳は腐り始める。身体も全てが腐敗し、死んだと思ったその一瞬で私は時を操る。私の身体は今と同じような姿で、髪は黒く染まった女性の身体になっていた。そして、ようやく訪れる死の時、私の精神は身体から引き離された。私が書いた最後の1枚の手紙の内容を思い出す。それは使用人の手に渡る。

『今から1年後。ハルという女性が牢に捕まる。そこを助けて欲しい。そしたら分かる。』曖昧な手紙の内容は少なくとも使用人には理解出来ていたようだったと、私は未来を見た。


ハル。あなたの記憶はシルエットで私の記憶と似ているように作られてる。あなたは私であり、あなたでもある。あなたに全てを託す。ここで祈り続けているわ。

そうそう。私はお父様にあんな乱暴な扱いは受けた事なかったわ。私はそうなる未来を見ただけだから....。


いい?今から1ヶ月後経つと、この国になにかが起こる。その何かは分からない。反乱かもしれない。そんなことがあれば最初言った通り私のドレスにナイフを突き刺して真っ赤に染めてくれればいいから。頼みました。

エリスタの言葉を最後に私の視界は光を取り戻し、息ができるようになっていた。

「これで全て思い出したかな?」水面に浮かぶ少年は私に聞いてくる。私は自然と涙が出ていた。エリスタが実は自分だったこと。じゃあ、時折思い出していた両親はエリスタの、って私の...。???。こんがらがってきた。そして、私は全て託された。言われたことを成し遂げるだけ。私は決意の眼差しを少年に向けた。すると少年は爽やかな笑顔で飛び上がる。

「さよなら。また会える時を祈ってるよー!」その少年の声と共に私は現実に戻された。


それから時間が進み、王子のお世話は使用人の部屋で終わりを迎えた。後に迎えにやってきた馬車に乗った王子は真顔だった。


思い出していた王子が来た時の事は、私自身の事が気になって仕方なかった思い出がある。そして、思い出したのは今日が私がここに来た1ヶ月後ということだった。

私はエリスタに言われたことを思い出すと同時にベッドから跳ね起きた。白いドレスをとり、その中に枕をいれ、ベッドの下に密かに置いてあった赤い液体を白いドレスにかけた。ベッドも真っ赤に染まる。

そして、その突如窓に光が灯る。鳴り響く爆発音と人が連なるように声が次々と上がる。私は少し焦ったが、すぐに平静を取り戻し、窓を開けた。

「あとはここから脱出するだけ....。」私はそう呟いて窓のさんに足をかけた。動きにくかったドレスは面影もなく、私の元の装備を身につけていた。私の持っていた刀は新品同様に研がれている。思い返せばエールトから少ししか剣術を教えて貰えなかった事を残念に思う。全ての思いをこの城に置いてけぼりに、私は窓から飛び降りた。地面が迫り来る圧迫感と空気の切れる音が私を恐怖と共に不安を煽る。しかし、体制を立て直し、足を地面に向ける。目を閉じて衝撃が全身に走ることを確認した後、目を開けた。そして、上から声が聞こえる。

「エリスタ!こんな...。私が目を離したから....。」王様、改め父がそう言っているのが聞こえた。そして、次の瞬間私の部屋から紅蓮の光を見た。

「本当にエリスタ....。過去の私が言った通りになった...。」私がそう呟いてその場から去ろうとしたとき目の前に現れたのは私の見知る人物だった。

「結局最後まで名前は知らなかったけど、私の事をこの城に呼んだ張本人だったな。」私は使用人に向かってそう言った。

「そうでした。あなたを招いたのは私でしたね。」使用人は冷静に目を瞑って言った。

「私はこの1ヶ月間で全てを知った。あなたがここで止める気なら私はあなたを殺す。その覚悟が私にはあるんだ。」私は淡々と答えた。すると使用人はゆっくりと目を開く。

「別に何ともしませんし、ここが燃やされている時点で私の居場所はなくなりましたから。」淡々と答える使用人はどこか悲しさなどは感じられなかった。

どうでしたか?

面白かったのなら良かったです!

次回も読んでくれると嬉しいです!

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