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日常から非日常へ。  作者: 稲平 霜
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怯える

73話




王子の行動は照れていたりする時の人の行動と読み取れた。私は前を歩く王子を抜かし、部屋に戻った。

部屋に戻ると部屋の中央に紙が落ちていた。恐らくエリスタからの手紙だろうと私が紙を拾った瞬間。ドアが勢いよく開かれた。

「どうよ!王子様のお世話は!」ドアの前にいたのはエールトで元気よく私の役目について聞いてきた。

「今少し休みたい気分なのに...。」私がそう呟くとエールトはとぼけた顔をして口を開く。

「なんか言ったか?」エールトの言葉の圧力により、私は口を噤んだ。

「ところで王子様のお世話しなくていいのか?さっき庭園で遊んでたけど?」エールトはベッドに座る私に向けて言い放った。すると私は放心状態から復帰し、焦り出す。

「そうだった。」顔面が蒼白化する私を見て、エールトは笑い出す。

「早く行きなよ!」エールトは私に喝を入れるように言い放った。その言葉と同時に私は駆け出す。今日は私走ってばっかだな...。脳裏にそんな思いが過ぎりながら庭園へ向かった。


庭園にはバリサイという茎には棘がある花が植えてある。万一にも王子に怪我があれば私は怒られるだろう。そんな事がないようにと、祈りながら庭園に来ると、腕から血を流している王子がいた。

「痛いよ...。ズビッ....。」王子は座って小さく言


葉を放ち、鼻を啜っていた。私はそんな王子にゆっくり近づいた。

「大丈夫?」私がそう言うと王子は顔を逸らす。そんな王子を見て私は回復魔法を念じてみようと試みる。当たり前ながら、今まで魔法を使ったことの無い私が回復魔法など操れるわけもなかった。そんな事をしていると王子の顔から1粒の雫がわたしの手に落ちてきた。その瞬間、わたしの脳内になにかが流れ込む。


「パパでちゅよー。」子供をあやす男性の声が聞こえる。

「やめてください。みっともない。」そこに聞こえたのは男性の嫁と思われる女性からの男性へのキツイ言葉。

「別にいいじゃないか。」男性は流そうとしているが、嫁は流させようとしない。

「仮にもあなたは一国の王でしょう?」嫁はそう言い放った。

「....。わかった。慎むよ。」男性は嫁に打ち負けてしょんぼりする。

「ほら、エリスタも笑っていますよ。」最後にエリスタの名前を男性の嫁に優しく呼ばれて消える。

そして、次の瞬間また声が聞こえた。

「私の魔法を指し上げます.....。」そこ言葉が聞こえた瞬間風が吹き荒れる。

「あれ?痛くない。」王子はそう言って立ち上がる。私は一瞬の不可思議な状況に困惑を隠せなかった。しかし、素直に喜ぶ王子を見て今は考えない事にした。

「ありがとな...。」王子は途端に冷静になり私にそう言ってきた。いじける姿がなんだか愛らしく感じてくる。私が王子の顔をじっと見てにやけていると王子はムスッとして。

「なんだよ...。」王子はそう言って早足で私から離れて行った。


とりあえず王子に怪我がない状態になったから怒られずに済みそうだ。私が一息つこうとするとそこにエールトが歩いてきた。

「どうだった?」エールトは片手を少し挙げて言った。

「何とか無事だった。」私は気を抜いてつい丁寧語を疎かにしてしまった。しかし、その事にエールトは特に気にもしていない様子で話す。

「そうかそうか!そういえば、部屋で拾ったけどこの紙なに?」エールトはそう言って紙を私に見せて聞く。私は慌てて身体のあちこちを触る。案の定、エールトが部屋に入ってきた後、ドレスのどこかに挟んだはずだった。しかし、現に今その隠したと思われる紙はエールトの手によってヒラヒラさせられていた。私はエールトに近づいて紙をとった。すると紙には何も書いておらず、白紙の紙だった。

「何書こうとしてた?」エールトは世間話でも始めたようだった。

「日記でも書こうかやってみようと思っても全然わからなくて...。」私が頭を押えながら言うとエールトは頷きながら。

「いい。感心感心。でもいいのか?また王子様見失ってるけど?」エールトは透かした顔で言ったかと思うとまた笑う。私はため息を着いてまた駆け出した。今日は本当に走る事が多い。 と駆けた瞬間に王子を見つけた。

しかし、王子の様子が変だった。

「誰だよお前!」王子の視線の先は私からは壁があり、ちょうど死角だった。しかし、何やら叫んでいるようで私はすぐに駆けた。しかし、そこには誰もいなかった。

「何があったの?」私がそう聞くと王子はガタガタ震えて口を開いた。

「魔王だ...。魔王が僕を襲ってくる....。嫌だ。嫌だ嫌だァァ!」王子はそう叫んで逃げるように走ろうとする。そこで私は王子の肩を掴んで止めた。そして、すぐ様抱いた。パニックになる場合は人の肌が落ち着くらしいと知っていたからだ。どこで知ったか、私はその事さえも覚えていなかった。でも、今はこれで何とかなるとそう思い込み、やり過ごすしかなかった。

私の胸の中で王子は小刻みに震え、なにかをボソボソ言っている。私はその度に強く抱きしめた。

どうでしたか?

面白かったのなら良かったです!

次回も読んでくれると嬉しいです!

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