ハルと王子
72話
長いこと道を進んでいるが、全く出口にはたどり着けない。やがて僕らは顔に力が入らなくなっていた。疲れだ。疲れが僕らから気力を奪っている。
「休むか?」僕がヤカナにそう聞くと首わ横に振った。
「大丈夫。」ヤカナは、そう言っていた。しかし、そうそうにここを出たい事で頭が一杯一杯だった。
「そうだ。上に行ってみるか。」僕は天井を見上げて天井を操り、階段を作り、上がる。そこには道化師の姿があった。
「いや。つい1ヶ月前は申し訳ございません....。お詫びといってはなんでしょう?なにか叶えて差し上げます....。さぁどうぞ?」道化師は仮面の下でどんな顔をしているか知らない。そんなことどうでもいい。今はこれだけでいい。僕は道化師の声に即答した。
「仲間を、仲間ともう一度一緒に旅がしたい!」僕は戦い以外では滅多に出さない声を道化師に向けて言い放った。
「わかりました...。では、ご案内...。どこで会えるかは、お楽しみですよ...。」道化師はそう言ってケタケタ笑いながら消えていった。そして、次の瞬間僕の身体は痛みに襲われる。それは近くにいたヤカナにも影響していた。
「手を...。」僕はそう言ってヤカナの手を掴んだ
あれから1ヶ月経った頃、私はベッドに寝込んで他国の10歳の王子のお世話の事を思い出していた。
「おいお前。今日は僕のためだけに働けよ!」生意気に言ってくるのは10歳の王子だった。身体はまだ未熟で、私が折ろうとすればすぐ折れそうな細い腕を露わにして私を指さしていた。
「ええ、いいわよー。」私は柔らかに答えた。こういう子供には優しく接していれば何とかなる。私はそう考えて優しく接していたが、王子はお構いなく城内を走り回り、私は振り回されていた。
「こっこまでおいでーー!」王子はそう言ってさらに走る。私は大人気ないと思ったけどここで鬼神の残力を少し解放した。すると、私は黒い稲妻と共に王子の目の前に一瞬で移動し、捕まえた。
「はい。捕まえたよ。」私はニッコリと笑って王子の顔を見ると王子は涙目になって。
「うわぁぁぁ!バケモノだぁぁ!」そう叫びながらまた逃げ出した。
「もう。じっとできないのか...。」私はそう呟いてまた走り出す。
この行動の繰り返しを数回やった後、ようやく王子は止まった。王子は壁にもたれて息を荒くしている。私はそんな王子の横に座る。
「おい、また僕を捕まえる気か...。」疲れ果てて言葉の最後の方では声が小さくなっていた。
「いや。あなたが逃げないなら追わないですわ。」私は丁寧な言葉使いにして言った。
「ふーん。」王子はあさっての方向を見て放つ。これが2日位続くのは憂鬱だと私はそう思った。
昼になると昼食を食べに食事場所まで歩いていった。王子は私の後を歩いている。
食事場所に着くと王子はムスッとした顔をしたまま私の前を行き、食事が用意されている机の椅子に座った。私も続けていつもの椅子に座った。今日の食事はなんだろうと見ようとすると、王子が叫んだ。
「肉だ!やった!あ....。んん...。」王子は喜んだ後私を見て小さい声を短く放ったあと、咳き込む真似をしていた。恥ずかしかったのだろうか?子供だから別にいいと思うのだが...。私はまるで聞こえていないかのようにステーキを食べだした。私はいつも通り紅茶を何杯もおかわりしていた。
「なぁ、お前は僕の事を子供だと思ってるのか.....?」王子はいじけたままそっぽ向いて聞いてきた。
「まだ、子供だと思っていますよ。」私は既に使い慣れた丁寧語で答えた。
「どこら辺が子供だと思うんだよ....。」王子はさらに私の答えが知りたいかのように聞いてきた。
「そういう所ですよ。」私は静かに言った。
「そういう所ってどういうことだよ。」王子は下を向いて聞いてくる。
「いじけちゃう所とかじゃないかな?でも、大丈夫。いずれ、あなたも大人になってかっこよくなって、素敵なお嬢様と結婚できますよ。」私はいじける王子を励ますように言い放った。王子は一瞬怯んみ、口を開く。
「そこまでは...。考えてない...。」王子はそっぽ向いて言い放った。違う方向を見ていても耳が赤くなっているのがわかった。王子にはこの話は早かったみたいだ。
沈黙が少し流れ、私は椅子から下りた。そして、自分の部屋に行こうとした。すると、王子は私のドレスの裾を片手で掴んできた。
「何?」私は少し足を引いてそう言った。すると王子は焦って手を離していた。そのまま王子は私の前を歩いて行った。
どうでしたか?
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