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日常から非日常へ。  作者: 稲平 霜
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紅の雪

71話




振り下ろされる拳を僕は力なくくらおうとした。その時僕の前に現れたのはヤカナだった。

「邪魔者扱いはごめんだから...!」ヤカナはそう言って涙を流して僕に向かって言った。ヤカナの飛び散る涙が僕の顔や衣服に染み込む。後に僕の視界に入ったのは真っ赤な鮮血が僕の足元を浸していく。床に叩きつけられたヤカナはピクリとも動かず、最後に僕に言葉を放った時に見せた顔のまま倒れている。僕は倒れたヤカナを見ることが出来ない。僕が立ち尽くしていると男がゆっくりとまた拳を振り上げる。僕はその一瞬で息を大きく吐く。次の瞬間。大男は割れるような音を立てて倒れた。

「これでいい....。さ....むい...。」僕はそう呟いて倒れた。


草原ではなく雪原が僕の周りに果てしなく広がる。そこに1人の声が響く。

「久しぶり。」「久しぶりね。」その声は心の篭っていない声だった。そして、その声の持ち主はすぐにわかった。ヒョウカとヒョウリだ。そして、僕は2人の力を解放しただけ。あの男の身体の芯まで凍らし、石の床に倒れて割れて死んだだけだ。

「また殺した。」「また殺したのね。」虚ろな目を僕に向けてそう発言してくる。意思はないはずなのに。今更そんな言葉は聞かない。そんな事よりも死んでしまったヤカナの事が辛い。自然と溢れる涙はすぐに氷の雫となって地面に落ちて崩れる。降る雪が真っ赤に染まっていく。自ずと地面までも真っ赤に染まり出す。

「だめだ。ここから出たくない。ここから出たら必然的にヤカナの遺体を見なければならなくなる。」僕はその場に塞ぎ込んだ。

「そうやって逃げるつもり?」「そうやって逃げるつもりなの?」リョウカとリョウリはキツイ言葉を次々と浴びせてくる。これは僕が思った事を言ってるだけだと、そう言い聞かせてもさらに自分を追い詰めるだけ。段々と心が蝕まれていく。怒りに恨みに悲しみに苦しみが僕を殺しにかかってくる。痛い。苦しい。辛い。悲しい。僕の感情は豊かすぎる。死んでしまえ。こんな力も、なければ僕は死ねてたはずなのに。僕がそう自問自答しているとヒョウカとヒョウリの声が聞こえた。

「そんなことは無いよ。」「そんなこと考えちゃダメ。」先程までの虚ろな目の声ではなく。心を感じ取れた。目に映る赤い雪が僕を絶望に突き落とす。しかし、その反面ヒョウカとヒョウリの目に映る光によって打ち消される。

「そうだった....。僕は1度出来た仲間も1度殺したんだ。もう失ったって動じる訳にはいかないだろ...。」僕は目から溢れ出る水滴を拭い、立った。そうだ。後悔なんてしている暇なんかない。僕には3人の仲間がいるのだから...。

僕はそう、自分に言い聞かせた。



目を覚ますとそこには氷漬けになり砕けている大男とヤカナだ。しかし、少し不思議なところがあった。ヤカナの周りに飛び散っていた血が綺麗さっぱりなく無くなっている事だ。しかし、その謎はすぐに解明された。

「助かったみたいで良かったよ...。」力なく放たれたその声は正真正銘のヤカナだった。

「あれ?死んでない...?」僕は呆気に取られて聞いた。

「いやいや、魔族のハーフがそう簡単に死ぬわけないよ...。」掠れた声でヤカナはそう答えた。確かにヤカナは血を扱う攻撃をするし、それで治療もできるから血の収集もできる可能性もないわけないよな。僕は安堵のため息を吐きながらその場に座った。

「無事で良かった。ありがとう。ヤカナ。」僕は笑顔でそう言い放った。

「え、今...。いや、こちらこそ。レイド。」ヤカナはそう言って、僕の顔をじっと笑いながら見つめてきた。僕はそれにつられて自ずと笑顔に変わった。


「さて、ここからどう出るか、考えるか。」僕がそう言うと動けるほどに回復したヤカナが座って聞いていた。

「道を辿るとしても道が塞がれてたら...?」ヤカナは道を指さして言った。僕はその言葉に笑う。

「僕は実は戦った相手の能力を使うことができる。」僕は1ヶ月経ってようやくヤカナに自分の力を打ち明けた。すると、ヤカナはあまり驚いた顔をせず口を開いた。

「確かに初めはただ強いやつって認識だったけど、魔王討伐の紋様が出る人は普通じゃないって薄々分かってたから。」ヤカナは何食わぬ顔でそう言った。僕はその顔を見て口を開く。

「だから、ずっと壁を操っていたらいつの間にか外に出れるっていう強引な策だが?どうだ?やるか?」僕はヤカナの方を向いてそう言った。

「そうね。壁が操れる敵を戦ったのね。じゃあ、その策は試して見る価値はある。」ヤカナはそう言って立ち上がった。そして続けてヤカナは口を開く。

「じゃあ、私は役に立ちそうもないから着いて行くだけにするね。」ヤカナは満面の笑みでそう言葉を放った。別にいいけど。僕は少しいじけた顔をして、壁を操り、道を作り出した。

「行くぞ。」僕はその一言を放った。

どうでしたか?

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次回も読んでくれると嬉しいです!

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