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日常から非日常へ。  作者: 稲平 霜
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豹変

70話




ミノタウロスのような男はニッコリと笑って私を見ているだけで危害は加えてきそうではなかった。男は笑っているが、ガタイのみで威圧感を感じた。私は打撲した部分を回復魔法で治す。血を使いすぎると疲労が溜まりやすいし、貧血になってしまうから時には魔法も使うようにしている。

私は身体を治した後、後ろに立つ男に声をかけることにした。

「あの、私が元いた道知らない?」私は微笑を浮かべて聞いた。私の声を聞いて男はニッコリと笑って頷いた。すると男は私が挟まっていた壁を次々に壊しだした。壁は決して柔らかい訳では無い。にも関わらず男はまるで森の木々を掻き分けるように容易く壊していく。あの大男に蹴られて無事なだけで私は幸運だったと思った。

それにしても、どうして私はあの大男に蹴られたの?さっきの鎖の女の声に反応しただけで、この大男は意思が無いのではないだろうか。私がそう考えながら男が壊し進んでいく道を歩く。

しばらく進むこと道が開通した音がした。男はニッコリ笑ってその場に突っ立っている。私の方を向きながら。

私はその場から全く動かない男が奇妙で仕方がなかった。私は男の横を通ってレイドを探しに行こうとすると、男は私の目の前に手を出した。

「なに...?」私が恐る恐る男の方を振り向きながら聞いた。すると、先程までの笑い顔とは打って変わって怒りを感じる顔に豹変していた。そして、男は口を開く。

「お礼がないぞ。お礼くれ。そのためにここまでやった。お礼くれ。」男はそう言って私の身体を掴もうとしていた。私は咄嗟に避ける。

「お礼?って例えばなに?」私は構えて聞いた。男は細い目を大きく開く。

「もう、我慢できない。お礼...。お礼を渡せぇぇぇ!!」男は叫んで気づけば男の拳は私の身体はミシミシと骨にヒビが入る音と同時に吹き飛んだ。

「......あっ!」私は痛みに耐えるために放つ声ではなく、痛みに耐えきれずに出た声だった。私は壁に張り付くような状態で、壁にヒビをいかせた。私はその一瞬で呼吸が出来なくなる。それと同時に嗚咽が放たれる。そして、私が首を動かして、男の方を向こうとすると、既に男は私の目の前にいて拳を構えていた。私は壁から動く事が出来ない。骨が折れる損傷はすぐには治せないからだ。そして、男の拳が私に当たる瞬間、ぎゅっと目を閉じた。衝撃音と共に私の死は訪れたと思った瞬間目の前にはレイドの背中があった。そして、男の拳は腕の関節あたりから下が無くなっていた。

「危なかった....。」レイドはそう言って1度だけ息を吐いた。



僕は紙一重でヤカナが潰されるのを防いだ。ヤカナが死ななかったという安堵と共に、恐怖心までもが刺激された。僕がここまで一瞬で来れたのは他でもないゴツタの能力があったからだ。僕が寝転んでいる時に衝撃が幾つもあり、その場にヤカナがいることを信じて、壁を操って進んでいたのだ。そんな時により一層大きな揺れがあり、僕はギリギリ通れる道を作り、進む速度を早めてそこに丁度ヤカナが殴られそうになっているところに出れたのだ。

「あ、りがと....。」ヤカナはか細い声で背後から放ってきた。

「ヤカナ。お前は回復に専念してくれ。ここは僕に任せてくれ。」僕はそう言って血をダラダラ流す大男の前で止まり、腰辺りを黒い刀で斬った。すると、大男は口を大きく開け。

「クレヨォォォォォォォオ!」そう叫んだ。その事により、男の怒りの矛先が僕に向けられたのが確信出来た。僕はその場から走り、足場がボロボロの道を走り、逃げる。男は突進するように僕を追ってくる。思惑通りだと思って振り返った瞬間。鎖が僕の足を取った。走っていた勢いによって遠く飛ばされる。そのまま壁に壁にぶつかった。その場に男が突進してくる。僕はすぐ立ち上がり、ゴツタの力を解放し、床から壁を幾つも盛り上がらせた。しかし、男の勢いは落ちず、僕に向かってくる。僕はこの状況に笑い口を開いた。

「力比べと行こうか...!」僕はそう叫んでグランドの力を解放し、男の身体を左手で一瞬抑え、右拳で男の頭を殴った。すると男は僕の左側の壁へと飛んで行く。

「お、おレイを....。」男は壁にぶつかる前に足で勢いを殺し、言葉を放っていた。男の背中から溢れ出る蒸気が発熱していることを意味している。

「僕の勝ちだ。」僕は口角を上げて言った。男は僕の言葉を聞いてから一気に雰囲気が変わった気がした。次の瞬間。この部屋が熱くなるのがわかった。僕の顎から汗が床へ滴り落ちた瞬間僕は壁に叩き付けられていた。痛みが全く来ない。そして、攻撃をくらったことに気づいた瞬間痛みが襲ってくる。

「あぁぁぁあ....!」僕の苦痛の声と同時に真っ赤な鮮血が口から吐かれる。一撃くらっただけでもこの威力。僕の身体全身から血が溢れる。直撃したからだ。僕は潰された身体を魔王討伐の紋様の力を解放し、再生力を増幅させ、その一瞬で僕の身体は修復された。男は僕を睨んでもう一度拳を振り上げた。

どうでしたか?

面白かったのなら良かったです!

次回も読んでくれると嬉しいです!

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