終結の矢
63話
「わかりました。では、致仕方ないでしょう。」女王アクアルはそう言って手を上にあげる。すると、女王アクアルの周囲に水の塊が集まり出す。そして、女王アクアルはその集まった水柱の頂上に、到達する。
「一撃で終わらせてあげます。海底の治安を維持するために...!」女王アクアルはそう言って水柱から高速の水弾が次々と飛んでくる。私はその全てを蒸発させながら水柱に近づく。
「体が...。熱い....!すぐ終わらせないと....!」私がそう呟く。体から溢れ出る蒸気に視界が塞がれる。腕の焦げが、さらに広がる。だから走った。そして、水柱に到達した時には私は既に全身が焦げてしまっていた。動けば壊れそうでその場から動けなくなっていた。そんな時、声が聞こえた。
「お前が望むのなら俺がお前の体を使ってやる。」ソリドスだ。ソリドスの声が私の脳を刺激する。この精神体の中でまだ生きているソリドスに私は託すことにした。
「お願い!助けて!」私がそう叫んだ瞬間。女王アクアルの困惑の顔。そして、私を覆う焦げが全てひび割れて消えてなくなる。そのまま私は意識を保ったままソリドスとの相談で動く体になった。
「さぁ、私と戦え!」体を動かすのはソリドスの役割のため、ソリドスの口調が少し移った。
「罪人から離れなさい!」女王アクアルはそう言って特大の水弾を飛ばしてくる。私の体は飛んでくる水弾に飛んで向かい、手から火種を弓の形に象った弓を生成し、その弓から火矢を放った。その火矢は水弾を蒸発させて打ち消した。ここで私は勝てると確信してしまった。私は地に足を着き、その場から女王アクアルと同じように火柱を起こす。それと同時に水柱と火柱は打ち消し合い、消えた。
「どうして罪人の味方をするのです...?」女王アクアルは疑問をぶつけてきた。私は笑みを見せて答える。
「それは、感情に任せただけなので分かりません。でも、それでも、私は、今まで単に生きてきたドラゴンを見放す訳には行きません!」わたしがそう叫ぶと同時に女王アクアルは叫ぶ。
「理解出来ません....!判決を下しましょう!死刑です!」女王アクアルはそう言って私の真上に今までの水より、黒く濁った水弾を生成した後、落としてきた。私は咄嗟に弓を取り出し、火矢を撃つが、火矢は落ちてくる水弾に消火される。すると、私の体は勝手に横に動く。
「ソリドス、ありがとう!」私は目に見えないソリドスにお礼を言ったあと、すぐに女王アクアルの方へ向く。すると、既に次の水弾が飛んできていた。避けようと、後ろを振り向くと全方位からの水弾。私はソリドスのできる最大の火力を出す。
「ああああああぁぁぁぁぁぁあ!」私の叫び声は喉が千切れる位の声量で、火力も先程までのものではなかった。しかし、水弾は衰えず向かってくる。私はもう一度火力を上げようとする。すると、私の全身を支配していた炎は一瞬にして消える。水弾の隙間から見える女王アクアルの泣きそうな顔と同時に余裕の顔を私は見た。その一瞬で私は地面に1本だけ突き刺さっているボロボロの矢を見つけた。私は必死にその矢を持つ。それと同時に流れる脳内の映像。母の言葉。手を握ってくれた思い出。父との弓の訓練。頭を撫でて貰った思い出。その思い出の矢を私は小指側に矢の先端で構え、女王アクアルに向かって投げた。そして、大型の水弾は私の体を潰した。
流れる思い出。傷だらけの矢を私の手に置いて握る母の手。
「強く....。生きなさい....。」母の声が脳裏に過ぎる。
「よくやったな!もっと頑張るんだぞ!」そうやって荒々しく撫でてくれる父の手。消え行く両親の声を私は追いかける。それでも追いつけない。私の足は砕け、宙に浮く。そこに私の手を引く人が現れる。
「死ぬな!お前がいてくれなきゃ困る!」その声には聞き覚えがあった。
「ソリ...ドス...?」私がそう呟いた瞬間。体が火照る。私の周りに炎が立ち上り、私にハッキリとした意識を持たせた。視界に次々と飛んでくる火の粉に目を瞑る。そして、次の瞬間。世界は晴れた。
「ぐぅ...な、何が....!」女王アクアルの苦しみの声を初めて聞いた。女王アクアルを見ると、私の投げたボロボロの矢が首元に突き刺さっていた。
「私が、殺しちゃったんですか?」私が膝を着いてそう言う。すると、隣からソリドスの声がした。
「あれは俺がやった。やるしか無かった。」ソリドスの容姿は私と同じ位の背丈の人間になっていた。
「第一位女王の私を倒す事は....!全ての....海底人を敵に回す事と他ならない!」女王アクアルの悪足掻きのような声に私は一瞬気圧される。続けて女王アクアルが叫ぶ。
「罪人!逃げられないからな!ずっと!死んでも追い続けてやる!この....!」血泡を吹き出しながら叫ぶ女王アクアルの首が切れて、そのまま、首だけが足元に転がってきた。その背後に1人、立っていた。
「どうもこんにちは?ですかね?ありがとうございます!お陰で第二位女王である、この私が王の座に着くことが出来ます。では、これで。っと、そうだった。この魔法は術者が死んでも解けないでした。では、解放しますね?」第二位女王と名乗る人は指を鳴らした。
どうでした?
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