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日常から非日常へ。  作者: 稲平 霜
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熱い力

58話




今現在私は汗水垂らしながら修行をさされています。そう。修行するように言ってきたのは他でもない女王アクアルです。女王アクアルの修行内容は足踏みをずっとしたまま弓の標準を合わせ、連続で当てることをやっている。クリアしなければご飯も用意されないというスパルダだった。

「そんなのではまだまだですよ。まだまだそんなのでは海底の奥義は渡せません。」女王アクアルはそう言って手を叩く。最初会ってときと打って変わって性格が全然違った。私は、海底の国で奥義を体得するために頑張っている。ふと、上を見上げると外の光は見えなかった。過酷な修行に私は意識を失いかける。そして、私が倒れた先には水の塊が私を支えていた。

「もう、体が...。」私は水の塊に支えられて呟いた。そこにハマグリ焼きが届く。

「どうぞ。お食べなさい。食べたらまた修行をしましょう。」女王アクアルはそう言って私の元を去ろうとした。私はそこで女王アクアルを引き止めた。

「あの、奥義の力見た事ないのでやる気があまり出ないです。」私が手を挙げてそう言うと、女王アクアルがニコリと笑みを浮かべ、半透明の弓を手元に水から生成した。

「ではいきますよ。」女王アクアルはそう言って弓を引き絞る。元の姿に戻ろうとする弓から水の矢が空に飛ぶ。そして、しばらくして矢の到着地点から無数の水柱が逆さに尖る。さらに時間が経つと水は解放されて消えた。

「わかりました!全力でやります!」私は奥義を見て興奮し、目を輝かせて言った。すると女王アクアルは微笑んで次こそ去っていった。


そういえば外の連絡も断っている。外の地上の状況も知りたい。そんな願望も叶えられない海底王国に既に少し嫌気が差していた。そんな事をハマグリを食べる事によってぶつけていた。ハマグリは塩焼きであっさりとして食べやすい。ただ、ハマグリだけをずっと食べるとしたなら、なんだかそれは健康に悪いと思う。地上に出るのは奥義を体得してからがいい。だから、私はこの1週間で体得して見せる。私はそう決意し、ハマグリの殻を捨て弓を持った。


修行は過酷なものだった。弓を引き、矢を飛ばすだけ。ただ、動きながら水に打たれながらも約5cmの的を正確に射抜くものだった。射撃精密を上げるための集中力と何度も矢を撃つ筋力と精神力。もし、体を止めてしまえば女王アクアルから怒鳴り声に近いものをぶつけられる。


私は放ち続けた。腕が軋む。腕が痛む。弓が軋む。弓の弦が痛む。的が割れる。復元される。永久に浮かぶ的を射抜く。幾千とも思われるような同じ事を何度も何度も続ける。痛みを堪え、奥義を手に入れるために。汗が滴り落ちる。そこに女王アクアルが来る。

「無理しなくて良いですよ。」女王アクアルはそう言って私を見る。でも私は話を聞かず弓を弾き続ける。汗なんか流れていない。痛みなんてない。時間もない。力なんてない。強靭な心なんてない。この水なんて無くなればいい。汗なんてなくなればいい。燃やせ。全部。私を狂気に満ちた感情が支配する。熱い。熱い。熱い。汗が滴り落ちる。汗が地面に落ちて蒸発する。的が焼ける。弓が焦げ出した。

「待ちなさい!それ以上続ける事は私が許しません!」女王アクアルがそう叫んだ。私の耳にはその声は雑音が舞うようにしか聞こえず、私の矢を撃ち続ける。

「あれ?何これ?熱...い....?目が熱い?違う全身が熱くて、痛い。」私は自然と涙が溢れる。それと同時に呟いていた。口から目から鼻から血が吹き出る。弓を見ると真っ黒に染まってしまっていた。 私はそのままその場に顔面から倒れた。


痛い。痛いよ。

「誰?」私は真っ暗な空間で1人そう呼びかけた。すると小さな子供が蹲っていた。その子供は私に近づいて言葉を放つ。

「お前のせいだ。」子供の発言は憎悪に満ちていた。その子供は私の足を持ち、離れない。

「なんです.....か?」私は少し気圧されながらも言葉を放った。

「お前は俺の命を奪った。どうしてくれる。」子供かと思われた人はいつの間にか2m位の大きさの男になっていた。

「私は、何も...。」私がそう言うと男は私の首を掴む。

「俺の骨を返せ。」男の声は低く、怖気付く位の力強さだった。

「もしかして、ドラゴンの骨?」私がそう口にした瞬間熱い突風が私を襲う。

「そうだ。お前にずっと使われてきた俺はお前が大嫌いだ。」男の姿は話すど同時に巨大なドラゴンの姿となった。

「でも、私は助かってた。毎日手入れもしてた。それなのにどうして?」私が泣きそうにそう言うとドラゴンは鼻をピクピクさせて、口を開く。

「確かに手入れもしていて心地がよかった。だが、俺は不満が溜まっていた。ずっと力を全力で使えない。つまらない日々が永遠と続くと思うと、お前を呪いたくなる。そんな日々だった。」ドラゴンは私の周囲を動き回りながら言った。

「だから、今。疲れきった私を乗っ取ろうとしたのですか?」私はドラゴンを背にそう聞いた。

どうでしたか?

面白かったなら良かったです!

次回も読んでくれると嬉しいです!

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