終結の錆びた剣
57話
どうでもいいと口にするだけで力が湧く気がする。苦しい。そんな感情すら自暴自棄に吐き捨てる。
「やってやるよ。」俺はそう言って全身が輝く。そして、次の瞬間ボルソの目の前に移動する。まるで目では追えない速さにボルソはニヤリと微笑む。
「いいじゃないか!」ボルソはそう言って俺の眼前に火球を生成し、ぶつけてきた。火球は火花を散らしながら弾けた火球は俺の皮膚を焦がした。
「.....ッ!」俺は痛みに耐えきれず後ろに怯み下がる。しかし、それと同時に光を焦げた皮膚に宿す。そして、次の瞬間皮膚の焦げは消えていた。
「いい!いいぞ!」ボルソは興奮した様子で水剣を地面の水から生成する。
「自然そのもののから生成した物は強固だ!お前は死ぬだろう!」ボルソは続けてそう言い放ち、無数の水剣を飛ばしてくる。俺は剣を構え、水剣を一つ一つ斬り捌こうとした。しかし、水剣は壊れる様子はなく、俺の剣が、腕が悲鳴を上げているのがわかった。水剣は捌けず足に突き刺さる。
「水の強度じゃないな。」俺がそう言うとボルソが口を開く。
「そうだろうそうだろう!自然の力は強い!最強だ!」ボルソは興奮冷めやらぬ状態で話す。俺はその間傷ついた足に光を集め、治していた。
「勝てる。」俺は不意にそう言った。なんの根拠もない俺の発言は無意識に自分の胸に火を灯す。そんな時背中から腹にかけて痛みが走る。
「ゴフッ....。」俺は空気と共に赤い液体を口から吐き出す。そして、後ろから声がする。
「忘れてんなよ。」その声はヴァイルだった。剣が腹から突き出ている。俺が剣を抜こうとしてもヴァイルは物凄い力で離そうとしない。そこにボルソの声が響く。
「我の戦いに水を差すな雑魚。」そう言ったボルソにヴァイルが俺の脇腹を断ち切りながら。
「うるせぇな!オレは負けらんねぇんだよ!」そう怒号をぶつける。それと同時に俺の腹の半分が割れる。俺はその一瞬でその傷に光を宿す。疲れる。魔力を消費しすぎている。出来れば次の攻撃で決めたいところだ。
「なら、よい。お前が我に勝てたらそいつは譲ってやろう。」ボルソは傲慢な態度で言った。そして、その言葉を聞いたヴァイルは。
「ハッ!お前がオレに勝てるわけねぇだろ。」牙を剥き出しにしてそう言った。その会話が終わると同時に地面に振動が走る。俺の前でヴァイルの無数の錆び付いた剣が地面に突き刺さる。ヴァイルはその錆び付いた剣を両手に持ち、ボルソの攻撃を全て錆び付いた剣の崩壊を代償に消滅させていた。それと同時に地面に錆びついた剣が現れる。それと打って変わってボルソは余裕の表情で風槍と水剣、火球を撃っているだけだ。
俺は少しの間。ボルソとヴァイルの戦いを見た後、少し離れた場所にいるナアラに目を向けた。
「な、なんですか?」ナアラは作り笑顔を俺に見せる。俺は躊躇なくナアラに近づく。
「お前は俺に何をするつもりだったんだ?俺をアンデッドにして操るつもりだったのなら残念だったな。俺は死なないからな。」俺はそう言って剣をナアラの首筋に当てる。俺は完全に追い詰めた。そう思った最中。体に傷が付けられ、すぐに回復した。
「なにがしたい。」俺がそう言うとナアラは満面の笑みで声を出す。
「あっはっはっはっは!あんたはもうおしまいよ!」キンキンした声でナアラは笑い、言った。次の瞬間、体全身が枯渇する様に痛む。視界が、唇が、肌が、乾く。
「な、んだ?」俺がそう疑問を言うと、ナアラは頬を赤らめて。
「あなたも下僕になればいい!」そう言って俺のおでこを人差し指で押される。俺は力なく、その場に倒れる。意識が....。海に沈むように遠のく意識。俺はそのまま落ちていった。
霧が俺を包んでいる。俺は霧を掻き分けれるはずもなく闇雲に進む。そして、聞こえる金属を打つ音。俺はその音に連れられて走り出す。そして、そこに居たのは。
「人生上で2度ここに来る人は中々いないんだけどな!」タンコの声を聞くと同時に俺はもう一度逆戻りしたのだと思い知らされる。
「なぁ、1度さ、ここを出たんだ。どうしてまた戻ってきたんだ?俺は。」俺は冷静に聞いた。すると、タンコは俺の腰を軽く叩く。
「うちが打った剣に魔力を注ぎ込んだか!?」タンコはニッコリと笑いながら言った。俺は頷き。
「確かに、魔力は使った。」俺がそう言うとタンコは微笑を浮かべ。
「うちが打った剣と君の魔力が上手く適合して、何とかここに戻って来れたんだろう。今ここにいるのは一時的なものだ。すぐに戻れるだろう。」タンコは俺の肩に手を置いてそう言った。 続けてタンコが思い出したように言葉を放つ。
「そうだ!このバンダナ持って帰ってくれよ!これも縁だからな!」タンコはバンダナを外しながら言ってきた。俺は素直にバンダナを受け取った。それと同時に視界が歪む。
着いた場所は薄暗く、屍がいたる所に転がっていた。どうしたってどうしようもない気がする。
突如目の前にナアラが現れる。
「あなたはわたしの下僕になるの。さぁ働きなさい。」ナアラがそう言った瞬間俺の膝は爆発でも起こしたかのようにズレ落ちていく。膝まづくことが強制される。体の自由が効かず嘆く。膝まづいている俺にナアラが近づき、俺の顔面を蹴った。痛みなどないと思った瞬間痛みが走る。俺の苦痛の顔を見てナアラは笑う。そんな時、タンコから貰ったバンダナが光出した。
「何よそれ。」ナアラがそういった突如バンダナから光が放出される。それと同時に辺りに転がり落ちている屍が消滅する。そして、それは俺とて例外ではない。俺の場合は死んでいない。だからまた元の世界に戻れるというわけだ。
「ざまぁみろ。」滅多に使わない言葉を俺はナアラに笑顔で言い放った。
世界は晴れ、目の前には完全無力化となったナアラが地面に手を着いていた。
「もう油断しない。そして、もう二度とお前の様な人間が現れないように、一撃で終わらしてやる。」俺はそう言ってナアラから少し離れた場所で剣を向けた。
「な、何よ!何がいけないわけ?一度死んだ人に、希望を与えただけなのに!」ナアラはそう叫ぶ。
「善行でやっていたとしても俺は命を奪われかけた。ならもうダメだ。お前はこの世界の誰よりも悪人だよ。」俺は足を前に出す。それと同時にナアラは後ろに下がる。その姿を見て、俺は剣にバンダナを巻き付けた。そして、一瞬でナアラの近くに移動し、剣を下に突き出した。するとナアラの口けら目から血泡が溢れだす。言葉は出ていなかったが、憎しみを向けられているのがわかった。そして、しばらくするとナアラはタンコのバンダナと共に灰になって消えた。
俺は戦いが終わったあとヴァイルの使っていた錆びた剣を研いでもう一度その場に刺した。
「もし、お前が生きてたら一緒にいて欲しかったな。.....じゃあな。」俺はそう言って手を振り、町ではないどこかへ歩いていった。
どうでしたか?
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